表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したらただの〇〇のようだ  作者: しゅーげつ
8/10

第七話

通貨単位……『Gゴールド』だわなぁ……

宿屋……『INN』だわなぁ……


最初に出くわすモンスター……


『Suraimu』だわなああああ!

綴りは知らんが、確かに英語圏だわこりゃ。




「うーん……何を書いてるのかサッパリ解らないよ」


洋画(吹き替え版)で良く見るホワイのポーズを決める勇者。

『ナ』のポーズで硬直するオレ。


……どうすりゃいいんだ!!

もう何も思い浮かばん!!



「デブッ(覚醒」


悟りを開いた仏陀……ではなく文字通りブッタの遊び人が、

瞑目してスッと壁を指さす。


「なにこいつ~なんかもう息するだけでウザいんだけど~」


「……なんだ?何かあるのか?」


遊び人の挙動に違和感を感じたであろう女戦士が、

切れ長の目を細めて壁に映るオレの影を見つめる。



………………

…………


……



「勇者……これ……似てないか?

 若干先が曲がってはいるが……」


そ、そう!!!多分それだ!!!



「え……っと、何だろ……大根?」


ちげえ!!!!!


手!いや、手じゃない!!柄だよ柄!!!



俺はクイックイッと両手をすぼめて主張する。


「……解った!! マンドラゴラだ!!」



バカ!!!!

腹へってんのか!?!?


つか食えなくなってんじゃねえか!!!

いや食い物じゃねえんだよ!!!



あ!?

文字に見せる為に折り腰になってっから駄目なのか!



こう!こうだ!!


俺は下半身をピンッと、床に付くほどに伸ばして

思いっきり背伸びして長く見せる。




軟体なのか気体なのかゲルなのかは分からないが、

思ったより伸びる身体で少しでも似せる。


「……これは」


勇者が壁とオレを交互に見直して言った。



「剣……?」



それだ!!さすが勇者!!



オレは勢いよく小さな突起でサムズアップして、

すかさず隣の、オレの白骨がある牢屋を指さした。


『オレのしかばねの下を調べるんだ!!』


キシャーという声にしかならなかったが、

やっとオレの思いが通じたような気がした。



「向こうの部屋に何かあるという事なのか?勇者」


オレはポール牧ばりに鳴らない指で2回グッドを示して、

肯定の意を表した。



「デブッ(賢者」


何かもうお前にすらも汚い後光が射して見えるよ。


「よくわかんないけど~じゃあとっとと見にいって帰ろう~」


お前はブレないなハム女。



「そうだね……じゃあ行ってみようか」


クルっと踵を返す勇者を見やった刹那、

オレは勢いよく魂型モンスターから抜け出す。


ありがとよ――誰も見て居ないのにかっこよく呟いたオレは

そのままのノリで牢屋を隔てる壁に突っ込んだ!!



ところまでは良かった!!



***



「特に何も無いな……勇者」


「うーん……白骨があるだけだよね」


「だから言ったじゃ~ん」


取り返した松明を手に隣に戻り捜索する一行。

それを眺めるオレ。



そう。



壁にめり込んで頭だけ出してるだけのオレの魂は、

最早何も伝える事も出来ずに、


ただ目の前の『ドリフ盆回り』を見続けるしかなかった。



……幽霊なら壁抜け出来ると思うじゃん!?

なんで引っかかるかね!



「勇者……剣があったなら最初に来た時に気づくだろう」


「そうだよねぇ……」


「はい!何もないってことで終了~とっとと帰ろう!」



待――


って……本当にベッドの下に剣があるのか??


そもそもサイモーンの一方的な昔語りを聞いただけで、

オレ自身、本当に剣があるのかどうかを……確認していない!?



無いのかこれ??


だったら今までのオレの苦労はなんだったんだって話になるだるあ!!



どうする!!どうすりゃいいんだサイモーン!!

ルービス!!


誰か何とかしてくれええええええええええ!!





ジャラジャラジャラジャラー

ジャラジャラー

ジャララー


フィーバーが来たような軽快な金の音がドップラー効果のように響き渡る――

次の瞬間オレは、大量の金貨が宙を舞うのをスローモーションのように眺めていた。



緩やかに振り向く三人の視線の先には――ドヤ顔のピエロ。



「デブッ(ゴールドシャワー!」



ザ・ワールド 時は動き出す。


なアレで次第に加速する風景と同化するかの如く

女戦士の『正拳づき』が遊び人の顔にめり込んだ。


「ちょ~!!なにやってんのよ!!アタシの全財産!!」


床を跳ねる金貨が奏でる擬音と、

アタシの??という疑念の合間に――

確かに聴こえた、ような気がした。


カツンッ という鈍い音。


オレには知覚出来ないが、勇者はそれに気づいたようだった。



「あ!!ちょっと待って……!!」


キョロキョロと周囲を見渡して、僧侶の松明を持ち、

薄れていくチャリンの中で、自らの求める音の出どころを探し、

ベットの下に転がった金貨を探る為に覗き込む勇者――




「これかあああああ!!」





ゆうしゃは


カイヤのつるぎを



手に入れた!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ