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転生したらただの〇〇のようだ  作者: しゅーげつ
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第三話

ガチャガチャ


ガチャガチャガチャガチャ

ガチャガチャガチャガチャガチャ



だーーーーーー!!!!

うっるせえな!!!朝っぱらから!!!


朝とはいえ、差し込む光量に限りがある牢内の、

闇に佇む鉄格子の扉が、何やら揺れて軋んでいるような音がする。


気がする。




「……ねぇ~まだぁ~?」


ガチャ音の合間の艶かしい女声に、

オレ心はにわかにトキメキ……


いや、今のオレにハツはない。

気のせいだろう。




「……こんな奴に『さいごのカギ』を持たすから」


今度は力強い女の声。

オレの好物のくっころ系アレだ。


「デブゥ (謝罪」


不快な㌘100円肉声は、意識から即座に遠ざけた。



「ねぇ~~どうすんの~?もうよくなーい??」


「鍵までかかっているのだ、宝箱がある可能性は高いぞ?

 どうする、勇者」


「デブゥ(反省」



不愉快な擬音に紛れた単語をオレは聞き逃さなかった!



勇者っつったぞおい!

サイモーン起きろ!勇者来たぞ!!



-しかしへんじはなかった-

-ただのしかばねのようだ-



知ってるよバカ!!

どうでも良いときゃ延々語りやがって、

肝心なときはうんともすんとも言いやがらねぇ!



「わ、わかったよ!僕が何とかする……みんな下がって」


ズサっという床を擦る音の後、一瞬の静寂と、

謎の緊張感が場を包む――



何とかストラッシュ!!!



的な、版権がうるさそうな掛け声が、

ピー音と摩擦音を轟音に変える!!!




鉄格子の扉が蝶番からぶち折れて床に転がり、


ぐわらんぐらわんと波打つ格子の反響が狭い独房に響き渡る。

オレは突然の暴挙に肝を冷やした。



いや、オレにはレバーも無いから気のせいだ。



爆音の前の静寂よりも長い静けさの中でオレは思った。




勇者君は多分『脳筋バカ』なんだろう。


毎朝目覚まし代わりにアンタは勇者だとか、

勇敢に育てたわ、とか耳元で囁かれ続けて

何となく自分もその気になっちゃって、


母ちゃんに手を引かれて王様に会いに行ったら

勢いで勇者とか自称して後に引けなくなった、


『痛い子』なんだろう……なんだろう、眼窩から汁が。



しかし、暗がりから現れた青年は、


冠になんかの玉を嵌め、真っ青な鎧に身を固めた

『おお勇者よ!よくぞ参った!』という

威厳めいたモノを若いながらに携えていた。


額の玉もじっちゃんの四星球に見えてくるから不思議だ。



勇者が自称でいいのか分からんが、

もうこの子でいいんじゃないか??


おバカだけど、将来性はありそうだぞ。

オレが言うのもアレだが。



「すっご~~~いトゥンヌラ~! やるじゃーん」



急に親近感が湧いた。

おい、親。


『ふんまんやるかたない』オレを他所に、

一行はゾロゾロと一列縦隊で入ってくる。

そして渋滞していた。




「なんもなくな~い?」


勇者トゥンヌラの肩口から、ひょこっと姿を見せた、

トロい口調の女は、


僧侶のいでたち、

僧侶の杖を持った、


ムチムチボディコンタイツボンレスハムの、

ただの変態だった。


前掛けどこで落としてきたんだお前。



「ふむ……白骨以外は何もないようだな」


僧侶の反対側から、ヌッと出てきた大柄な女は、


立派な剣と盾、

高そうな羽兜、

刺さりそうな剣山肩パット、


いかにも女戦士風!!


の、鎧だけがビキニの痴女だった。



一番守るべきはそこだろ。



「デブゥ(入室)」


三人の後ろでチョロチョロしているピエロ調チビデブ男は、

帽子のボンボリを揺らしながら右往左往している。


顔がうるさい。



「も~~~!ウロウロしないでよ!!うっとおしいなぁ~~~」


「なぜこんなのを連れてきたんだ?? こいつが『さいごのカギ』を

 お手玉で無くさなければ、こんな事には……」


「いやぁ……遊び人でレベル上げたら

 悟り開いて賢者になれるって……ウル技で見たから……」


トゥーンヌラよ。


お前それ、『賢者タイム』かなんかと勘違いしてねぇか?


遊び人は何年経っても遊び人だぞ。オレの経験から言わせてもらうと。



それはさておき、

コイツは、ちょっとおつむは弱そうだが、

見た目は立派な勇者だし悪人でもなさそうだ。



勇者のバーゲンみたいになってるが、サイモーンの剣、

こいつに渡してしまって良いんじゃないか??



そんな迷いを察したのか、

トゥンヌラがオレの輝かしい肢体の前に立ち、


何やらぶつぶつ話し始めた。



「へんじがない……ただのしかばねみたいだ」


見りゃわかんだろうが!!


システムログを読むんじゃねえよ!!!!




ダメだこの子!!

この『かしこさ』で、ベットの下の剣に気づく事が出来るのか??


何とかして伝える方法を、次話までに考えないといけない事に、

不安しかないオレだった。

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