表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大罪人が語る夢  作者: ぬらくらげ
最終章
84/94

第二十四話・飛翔せよ


 それが死体であることは一目瞭然だった。

 華玉の亡骸の軍勢は、少しずつその数を増やしている。


 少女は震えを押し込めて、急いで陸地に戻ろうとするも、そう上手くはいかなかった。


「っぁ、くっ?」


 腹の奥から湧き上がる憤怒。

 戸惑う彼女ははっと気がついた。


(何か、何かと共鳴してるの?)


 まずい――そう思った次の瞬間に、アニタの姿は変貌した。


 突如として現れた者に対し、華玉の死骸人形は武器を向ける。

 少女はぐっと拳銃を握った。



 異変を悟った少年達も外に出るが、すでに行動が遅かった。


 辺りを覆う死骸人形に、異様な形態の怪物達。

 黒髪の少年は黒曜石のナイフを手に取る。


「……チッ」


 今回ばかりは、桃髪の少女も舌打ちを咎めなかった。




 一方のアニタは、船の上空をひゅるりひゅるりと飛び回っていた。


「ご、ごめんなさいっ」


 近くにいた者のこめかみに一発打ち込む。

 下唇を噛み締めてはいるものの、その銃口がぶれることは無かった。


 弾は間違いなく命中し、数秒それは動きを止めた。

 しかし、すぐに武器を構え直し、少女へと突進して来る。


(……殺し方まで、生きてた頃と同じなの?)


 アニタは苦しげに顔を歪ませた。


 そう、彼らは寿命と飢え、そして心臓に杭を三度打つ以外では殺せない。

 正確に言えば、それぐらい確実に潰さなければ死ねないのだ。

 医学では発見できなかった、華玉の本体を破壊しなければいけない。


 銀髪の少女はきゅっと唇を閉じ、手の中の拳銃を消す。


「断罪執行」


 怒りの滲んだ冷静な声音に、彼女の武器は自然と応える。

 二丁の短機関銃(サブマシンガン)を携えて、最後の華玉は軍勢に顔を向けた。


 容赦のない弾丸の雨が降り注ぐ。


 防ぐことに気を取られたその刹那、少女は標的の胸元に銃口を押し付ける。

 全身に伝わる振動に合わせて、目の前の死体は踊るように揺れた。

 海面へと落ちていく塊を振り返らずに、銀髪の少女は猛攻を続けた。


 心にあるのは仲間への心配と、役目を終えた同族を利用する者への怒り、それだけだった。


 例え、仮初めの肉体であろうとも。

 それを他者が踏みにじるのは許せなかったのだ。




 ――数時間前、北島行きの飛行船内部。


 暇を持て余していた少女が、窓から外の景色を眺めている。

 そろそろ遠くに海が覗く頃だという。

 彼女は海を見るのは初めての経験であった。


(竜巻で遠回りになって幸運だったかも!)


 流石に口には出さないが、褐色肌の少女はにこにこと微笑んだ。


「お姉さんたち……今どの辺を旅してるんだろう?」


 絹糸の村の少女――ニーシャは、前に会った旅人達を思い出していた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ