幕間・彼のバンダナは赤い色
小話。
それは幼馴染二人が出会って、およそ一年経った頃のこと。
暖かな陽光が差し込む窓辺で、少年少女はは身を寄せ合っていた。
共に一枚の毛布に包まりながら、床に座って絵本を読んでいる。
文章には少年がすでに点字をつけてあった。
「青空の下、兎は老木にたずねました。『朝と夜のさかい目はどこにあるの?』」
「……ねぇねぇ」
「おん?」
「この木の花は、どんな色になるの?」
すぐに答えることができず、シオンはじっと黙り込んだ。
花は、明るい赤色に塗られている。
彼は少し考えてから、おもむろに立ち上がり、少女に手を差し伸べる。
「こっちだぞ」
アニタは笑顔で彼の手を握った。
連れて行かれたのは暖炉の前だった。今もパチパチと火の粉が舞っている。
「この色だ」
少年は燃え上がる炎を指差した。
軽く手のひらをかざせば、じんわりと温かさが伝わってくる。
アニタははにかみながら呟いた。
「教えてくれてありがとう」
「俺は何もしてねぇよ」
「わたしがありがとうって思ったから言ったの」
嬉しそうに見つめられて、黒髪の少年は視線を泳がせた。
数日後、シオンは贈り物を渡された。
紙袋を開くと真っ赤なバンダナが入っていた。
「シオンよくご本読んでるから、前髪抑えるのにどうかな……」
少年は黙ったまま、まっすぐに彼女の両目を見た。どこまでも深いのに透き通って見える青色。
不意にバンダナを取り出し、彼はぎこちなく額に巻いた。
「似合うか?」
そう笑った彼に、アニタは花が咲くような笑顔で応えた。
本音では赤色は好きではない。
けれど、大切な少女がくれたというだけで、それは彼の特別になった。




