一章エピローグ 決断の果てに(上)
丸いステンドグラスの窓から夕日が差し込む。
光は色とりどりに染まって、壁にもたれかかる黒髪の少年を照らした。
「まいったな……」
酷く掠れた声音で呟くと、彼はその場にへたり込んだ。右手で押さえている脇腹からは、服越しに滲んだ血液がこぼれ落ちる。
ぼんやりと白濁した頭を動かし、自分が歩いて来た道を見れば、少年の居場所を示すように赤い線が続いていた。
少しずつ遠ざかる意識の中、彼はまた無理に口を動かした。
「まだ、終わってな……のに」
家具の一つも無いその空間で、両目を鋭く細めて何かを睨む。迫り上がって来た咳と共に鮮血が床へと飛び散った。
彼が荒い呼吸音をたてたその時、半開きだった扉が強引に開かれた。
闖入者の力強い足蹴によって。
もはや視線を向けることすらできない少年の正面にその人物は駆け寄った。誰が見ても重症である彼のことを目にして、遠慮のない舌打ちをこぼす。
「こんのっバカ! 何であなたはいっつも無茶ばっかりするのよ!」
厳しい台詞を投げかけたのは、彼の自他共に認める相棒だった。
それに気がついたシオンは、口元にぎこちない笑みを浮かべる。今はそれ以外に感情の表現方法が取れなかった。
彼女はそんな彼の頬を両手で包むと下から覗き込んだ。それが読唇のためだとわかって、少年は慎重に一音一音紡ぎ始める。
どうしても伝えなくてはいけないことがあった。
『ヴィー、後は、頼んだ』
そんな短い言葉を残して彼は静かに目を閉じる。身勝手な男の意図を理解したヴィーは、くしゃりと顔をしかめた。
「死なせない……死なせないわ、絶対に」
これは愚かな大罪人と彼を支えた仲間達の、長いようで短い旅のお話——
……——の皮を被った、一人の男の独断に巻き込まれた不運な奴らが紡ぐ、人間と悪魔の群像劇である。




