旧28話〜妹と馬鹿兄妹①〜
誠に勝手ながら修正作業につきまして、旧部分をこちらに掲載致します
明くる日。
「う〜、どうしよう〜
すごい緊張してきた〜」
朝から香恋ちゃんは落ち着かない様子だった。
ラジオ体操のお手伝いの時から朝ご飯を食べ終わるまでずっとそわそわし、食べ終わってからはリビングを無意味に歩き回っていた。
昨日は勉強疲れから何も考えずに思いつくまま行動していたが、一晩が経って冷静になると人見知りが発動していた。
「お兄ちゃん、手汗がすごいんだけど、どうしよう?」
香恋ちゃんがちっちゃい手の平を俺に見せてくる。
「香恋ちゃん、とにかく落ち着こうか?」
「無理〜!」
目を> <した香恋ちゃんの手の平の汗を、俺はハンカチで拭ってあげる。
ちなみに、俺は緊張していない。
昨日、寝るまで不安だったが、なるようになれと吹っ切れたからだ。
人はそれをヤケクソとも言う。
「うーん、じゃあ、上でトランペットを吹いてリフレッシュしてきたらどうかな?」
待ち合わせ時間は10時なので、まだまだ時間に余裕はある。
具体的には後1時間ちょっと。
俺としてもお茶菓子や昼飯の準備が滞るから、香恋ちゃんにはしばらく席を外して欲しい。
「う〜、吹きたいのは山々だけど、多分なっちゃんがもうすぐ来ちゃうかな〜って」
「あれ、待ち合わせって10時だよね?」
「そうだけど、なっちゃんって時間にルーズなんだもん。
自分に興味がないことに対しては遅刻するのに、楽しみにしてる時は1時間前行動する事は日常茶飯事なんだから」
「へ、へ〜」
春樹みたいな奴が他にもいる事に俺は何とも言えない気分になる。
やっぱり兄妹でも出来る友達って似たような感じになるのかな?
知らんけど。
てか、玄関が何だか騒がしい気がする。
「あっ、なっちゃんの声だ!」
香恋ちゃんは弾かれたように玄関に向かう。
気になった俺は香恋ちゃんの後に続いた。
玄関が近づくにつれ、男女の口喧嘩の声も大きくなる。
男女って言ったけど、男は確実に春樹の声だわ。
香恋ちゃんが玄関のドアを開けると、
「だ・か・らー!
アニキは早く帰ってよー!
これからレンレンと遊ぶのに邪魔!!
てか、妹の後を付いて来るなんてサイテー!!」
「いやいや、夏実も俺の話しを聞けって!
俺は今日、ここで優っちと遊ぶんだって!
てか、夏実は家間違えてんじゃねえのか!?
ずっとスマホのナビ使ってたしな!
お前、友達の家すら知らないのかよ!?」
「はぁー!?
何、その言い方!?
ちょームカつくー!!
アニキのくせに生意気すぎっ!!」
「はぁー!?
生意気なのは夏実のその口だろ!?
てか、家知らない事については否定しないんだな?
妹ながら可哀想だわー」
「引っ越したばかりの友達の家に行った事ないのは当たり前じゃん!?
だから、アニキは馬鹿だって言われんのよ!」
「おまっ、アニキに馬鹿っていうか!?
この馬鹿妹!!」
「何よっ、アニキだって妹捕まえて馬鹿って言ってんじゃん!
だから、アニキは馬鹿なのよ!」
「あん!?
久々にやるか!?」
「何? 妹に暴力を振るうつもり?
その喧嘩高くつくんだから!」
「はーい、ストップ」
2人がヒートアップしてきた所で待ったをかける。
香恋ちゃんは玄関のドアノブに手をかけたまま固まっていた。
「あっ、優っち!」
「あっ、レンレン!」
2人が俺と香恋ちゃんに気づくと、喜色を浮かべる。
そして、
『聞いてくれ、この馬鹿妹がさー!』
と、声をハモらせて愚痴を言ってくる。
「うん、仲良いのはわかったから、とりあえず中に入れや」
俺は青筋を浮かべて、2人に指示した。
初っ端からこんな喧嘩を見せられたら、怒ったとしても俺は悪くないと思う。
副題 <喧嘩するほど仲がいい>