旧27話〜妹と余計な一言〜
誠に勝手ながら修正させて頂く辺りに旧部分をこちらに移動致します。
夕方の小休憩中、
「お兄ちゃん、お姉ちゃん。
明日なっちゃんが遊びに来たいみたいなんだけど、いーい?」
香恋ちゃんはスマホを見ながら、そう確認してきた。
「俺は大丈夫だよ。麗姉はどう思う?」
「私も構わないわ」
俺の了承に引き続き、麗姉も首肯する。
「やったー! ありがとう!」
ここ連日、ずっと勉強会をしていたので、香恋ちゃんが万歳して喜ぶ。
宿題もほとんど終わり、教科によっては復習と予習に入っている。
過去問や参考資料をそろそろ買いたいと麗姉も言っていたし、タイミング的にもキリがいいだろう。
「ただし、しっかりと残りの宿題は終わらせなさい。
明日は休みにするけど、明後日までに終わってなかったら、わかってるわよね?」
麗姉がニッコリと香恋ちゃんに釘をさす。
「はぁい」
香恋ちゃんが俺に『お姉ちゃんが厳しいよ!』と目で訴えてくるけど、頑張れば今日1日で終わるから麗姉にしては甘い。
俺は『頑張って』とアイコンタクトを送ると、香恋ちゃんは裏切られたーとショックな顔をしていたのが、ちょっとおかしかった。
「とりあえず、なっちゃんに返信するね!」
香恋ちゃんは気持ちを切り替えてスマホを操作する。
さて、俺は明日はどうするかな。
明日が急にオフになったので、予定を全然考えてなかった。
「麗姉は明日どうするの?」
「明日は洋服と参考書を買いたいかしら。
優も付き合いなさい。
明日はデートよ」
デートって。
麗姉は当然のように言うけど、もう少し恥じらって欲しい。
俺は麗姉の直球に照れ臭い気持ちになってると言うのに。
いやさ、今までよく買い物に付き合わされたり、最近だと腕を組まれたりして、今更感はあるけど、意識してしまう物はしょうがない。
「まあ、予定はないから、麗姉に付き合うよ」
俺はそう決めて答えると、
「えー、お兄ちゃんとお姉ちゃん、明日出かけちゃうの!?」
香恋ちゃんがビックリして異議を唱える。
「えー、と、なんかマズかった?」
「なっちゃんがお兄ちゃんとお姉ちゃんと遊びたいって言ったのにぃ……」
と、香恋ちゃんが『ライス』の会話を見せてくれる。
俺と麗姉が確認して見ると、
『レンレン、勉強お疲れさまー
愛しのお兄さんと恋敵のお姉さんと勉強ってどうなん?
てか、お兄さんとお姉さんと会ってみたいんだけど、明日遊びに行っていい?
後、宿題写させてくれるとメッチャ嬉しい(笑笑)』
と言う問いに『確認したけど大丈夫だって!』と既に返信していた。
麗姉があからさまにため息をつき、
俺もこれには苦笑いである。
「香恋、報告は正確にしなさい。
それとも国語のお勉強がまだ足りてなかったかしら?」
「うぅ〜、それは関係ないもんっ!」
勉強時間を増やされたくない香恋ちゃんが必死になって否定する。
「大体、私が香恋のお友達と何して遊べばいいのかしら?」
「えーと、自己紹介して、お茶して、後は楽器の演奏?」
「却下ね」
「うぅ、お姉ちゃんが冷たいっ!」
うん、別に麗姉は冷たくはないかな?
俺も香恋ちゃんのお友達と一緒に遊ぼうって言われても困るだけだ。
自分が劣勢だと感じた香恋ちゃんはう〜と唸りながら考え、ポンと手を叩く。
「そうだ!
なら、お兄ちゃんとお姉ちゃんもお友達呼ぼうよ!
それなら、お茶したり、パーティゲームも出来るし!」
名案! と言わんばかりに香恋ちゃんが言う。
「友達ねぇ」
気軽に呼ぶとなると、春樹辺りか?
だけど、あいつに香恋ちゃんがバレたら面倒臭そうだし、どうすっかなー
俺が思案してると、タイミングよく春樹から『ライス』の通知が届いた。
通知の内容は、
『優っちー、明日、家に遊びに行ってもいいかー?
妹が明日友達の家に遊びに行くらしくて、構ってくれないんだよ(泣
ついでに、宿題を写させてくれるとメッチャ嬉しいんだけど(>人<;)』
と、どこかで見たようなメッセージだった。
俺は手早く『OK。だけど、宿題は自分でやれや』と返信する。
「明日、春樹が来たいみたいだから、俺は大丈夫だよ」
春樹から『そんな殺生な!』と返信が来たけど、それは無視して香恋ちゃんと麗姉に伝える。
「あぁ、あのお調子者ね」
麗姉がまたため息をつく。
そんなため息をつくと幸せ逃げるよ?
言ったら怖いから言わないけど。
「やったね♪
それじゃあ、お姉ちゃんはどう?
というより、お姉ちゃんに友達っているの?」
香恋ちゃんがそんな恐ろしい事を言ってくれる。
怖い物知らずなのか、可愛い妹は馬鹿なのか、判断に悩むところである。
「香恋、雉も鳴かずば撃たれまい。
口は災いの元。
いい諺だから覚えておきなさい」
「いひゃい、いひゃいよ、おねぇひゃん」
麗姉が香恋ちゃんの頬を引っ張りながら、縦や横にグリグリする。
若干可哀想だけど、自業自得だから俺は口を出さない。
麗姉が最後に頬を目一杯横に引っ張り、パンと離す。
ああ、あれ痛いんだよな。
麗姉は興味を失ったみたいで、スマホを操作し始める。
誰かと連絡を取っているんだろう。
香恋ちゃんはと言うと、頬をさすりながら「お姉ちゃんがバイオレンスだよ、お兄ちゃ〜んっ!」と俺に泣きついて来る。
俺は頭をポンポンと触り「痛かったね。だけど、香恋ちゃんも言葉を選ぼうね?」と一応注意しておく。
香恋ちゃんは「は〜い」と、返事すると、
「あっ、そうだ!」
何か閃いたみたいにスマホをまた操作しだした。
数分後、
「ご希望通り、私も1人呼んだわ。
これでいいんでしょ?」
と、麗姉がスマホを置き、俺達に声をかけた。
「えーと、誰を呼んだの?」
恐らく、生徒会の誰かかとは思うけど、大事な所なので確認しておきたかった。
「茜よ」
麗姉の返答は簡潔だった。
「ああ、良かった」
茜さんは生徒会副会長で、生徒会では1番マシな人なので俺はホッと胸を撫で下ろした。
「えーと、一応確認しとくと、明日は俺、春樹、香恋ちゃん、なっちゃん? 麗姉、茜さんの6人でいいのかな?」
結構な大所帯である。
客間は広いので入らない事はないが、カオスになりそうな気がする。
そこで、
「あっ、萌さんと冴えさんも来るって!」
と、スマホを操作していた香恋ちゃんが爆弾を落としてくれる。
「えっ、来るの?
マジで?」
「うん!
仲間外れは良くないしねっ!」
香恋ちゃんは笑顔で言うが、俺としては複雑過ぎる。
委員長とは池袋以降、会っていない。
香恋ちゃんが勉強会に誘ってはいたが、佐藤と一緒に勉強するからと遠慮していた。
委員長と佐藤が喧嘩別れせずに済んで良かった反面、どう接すればいいのか未だに悩んでいたところだった。
それなのに、明日大勢と一緒に会うの?
「明日が楽しみだね、お兄ちゃん!」
と、香恋ちゃんが笑顔で言う。
なるようになるだろうが、
明日は無事過ごす事は出来るのか。
不安は尽きなかった。
副題 <香恋ボマー>