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旧31話〜全員でトランプ大会〜

誠に勝手ながら、本編の軌道修正作業に伴い旧27話から31話までをこちらに移動致しました。

永らくの更新停止、及び修正作業を心からお詫び申し上げます。

 



「優っち、トランプある?

 あるなら、みんなでやんない?」


 自己紹介が終わり、この後どうするか悩んでいた時に春樹がそう提案してくれた。


「トランプはあるけど、みんなはそれでいい?」


 俺が確認を込めてみんなに訊ねると、


「わたしはいいよー」


「アニキの提案なのはアレだけど、やる事考えてなかったし」


「まあ、妥当かしら」


「麗ちゃんがオッケーなら私もいいよー」


「えっ、と、優くんがやるなら」


「ん」


 と、順に香恋ちゃん、なっちゃん、麗姉、茜さん、萌、冴が肯定の言葉を返してくれる。


 こんだけいると全員の意思を確認するだけで時間かかるね。


「じゃあ、トランプ持ってくるけど、何やる?」


「そこは大富豪一択じゃね?」


「春樹は大富豪が本当好きだな」


 トランプをやる時は必ずと言っていいほど、春樹は大富豪をやりたがる。


「えー、大富豪楽しいじゃん!」


 まあ、そこについては否定しない。


 みんなからも特に異論はなかったので、トランプを持って来て大富豪をする事になった。


 大富豪のルールに関しては一悶着あったが、変則的なルールでやる事なった。


 羅列すると次の通りになる。




 ・カードの強さは基本通りに、3→4→5→6→7→8→9→10→J→Q→K→1→2の順に強い


 ・人数が8人のため、カードをシャッフルするのに手慣れている春樹から時計周りにカードを配り、春樹からカードを切り始める


 ・順番は春樹→麗姉→茜さん→萌→冴→俺→香恋ちゃん→なっちゃん


 ・カードの役割として、8()切りのみ


 ・縛りは全てなし


 ・階段もなし


 ・革命はあり


 ・ジョーカーは2枚で何にでもなれる


 ・2の上のジョーカー出しのスペ3返しもなし


 ・上がり禁止カードもなし




 以上が今回のルールである。


 何故こうなったかだが、ローカルルールがあると慣れている春樹が強すぎるのと、縛りをつけると高確率で麗姉が勝つから、運要素が強いルールになった。


 勿論、春樹と麗姉からは不満の声は上がったが、そこは押し通した。


 全ローカルルールを駆使した春樹と、出されたカードを全部暗記して手持ちのカードを推測する麗姉が本気を出したら誰もついていけないからである。


 冴辺りはダークホースではあるが、せっかくのゲームなんだから、皆が楽しめるようにしたい。


 それと、あがった順番での役は大富豪→富豪→平民×4→貧民→大貧民であるが、次のゲームでのカード交換はなし。


 その代わりだが、大富豪は大貧民に次のゲームが終わるまで1つ命令が出来、富豪は貧民に1つ質問し正直に答えないといけないパーティ用の罰ゲームが設けられた。


 カード交換なしは元々の手持ちの枚数が少ないので有利過ぎるとの俺の意見であり、罰ゲームに関しては春樹となっちゃんからの案である。


 うん、この兄妹、性格が似過ぎだろ。




 ルール説明終了。




 さて、いざ大富豪を始めた訳だが、俺としては貧民と大貧民にならなければ構わない。


 なので、負けないカードの切り方をしていたのだが、


 1回目


 大富豪→麗姉

 富豪→春樹

 貧民→萌

 大貧民→香恋ちゃん


 命令は『語尾にぴょんをつける』


 質問は『好きな食べ物』に対して『トロロや納豆、オクラみたいにネバネバした物』


 萌はその食感が好きらしい。


 2回目


 大富豪→冴

 富豪→麗姉

 貧民→俺

 大貧民→香恋ちゃん


 命令は『麦茶一気飲み』


 キンキンに冷えた麦茶を一気飲みした香恋ちゃんは涙目だった。


 質問については『デートするならどこがいい?』


 随分、直球な質問にファイナルラウンドか映画館と答えておいた。


 そして、3回目


 大富豪→麗姉

 富豪→俺

 貧民→なっちゃん

 大貧民→香恋ちゃん


 と、なった。


 お気づきだろうか?


 3回とも香恋ちゃんが大貧民となったのだ。


 そして、麗姉の運と実力が強すぎる。


 手持ちが6〜7枚で運要素が強いはずなのに、この結果に香恋ちゃんは涙目である。


 てか、


「お兄ちゃ〜ん、勝てない……にゃん」


 と、既に俺に泣きついている。


 語尾がにゃんなのは、麗姉からの命令である。


 この前、テンションが上がった時はにゃんにゃん言ってた香恋ちゃんだが、流石に素面でやるのは恥ずかしいらしい。


 ただ言うだけじゃん?


 と、思う人がいるかもしれないが、ならレストランの店員に注文した時に、にゃんと語尾をつけてみるといい。


 平常心の中、罰ゲームでやると恥ずかしくて精神的な軽く死ねるから。


「恥ずかしいなら、何も言わない方がいいよ」


 と、俺は黙秘する事を勧める。


 何も言わなければ語尾を言う必要もないからね。


「うう〜、それでも何かアドバイスが欲しいんだけどにゃん」


 アドバイスねぇ。


 3回やって思ったけど、香恋ちゃんは素直過ぎる所がある。


 俺、冴、春樹なんかは手持ちのカードで勝ち確の手順を作る。


 これは詰将棋のイメージに近い。


 相手の手札や自分の手札、出されたカードからこう出せば絶対に勝てるという状況を作るのだ。


 麗姉も基本それなのだが、全員の癖を掴んで、手持ちの切り方から残ってるカードを推察している。


 簡単に言えば、カードが配られた時にある程度やりやすいようにペアをくっつけたり、強さ順に並び替えると思う。


 麗姉はそれを左から出してるのか、右から出してるのか、性格も加味して残りのカードを推察してベストの出し方をしている。


 冴が大富豪になった時は、わざと手待ちをランダムに切り替え、勝ち確の手順を踏めたからである。


 そして、なっちゃん、茜さん、萌の出し方としては勝ち確まではいかないけど、自分なりに出す手順を考えてカードを減らすオーソドックスな物。


 まだ流れや既出のカードを読み切れず、甘い所はあるが大富豪アプリのCPUみたいな安定感がある。


 それで、問題の香恋ちゃんだが、さっきも言ったけど素直過ぎる。


 手札を左から弱い順に並び替える。


 場に出されていくカードの次に強いカードを出す。


 手持ちが揃ってないのに強いカードを早々に出す。


 せっかく2を出して場を流したのに、初っ端8を出して雑魚カードを残す。


 ぶっちゃけ、8と2があり手札的にも富豪以上はいけるはずなのに、香恋ちゃんは負ける。


 これはもう一種の才能としか言いようがない。


「うーん、アドバイスとしたら、ペアカードとシングルカードは分けて、親になるようにカードを切ることと強すぎるカードはもうちょい温存しといた方がいいかなぁ」


 俺は無難なアドバイスを他の人に聞こえないように耳打ちする。


「うん、ありがとう!にゃん」


 香恋ちゃんはやる気を取り戻して目をキラキラさせる。


 うん、テンションが上がったようでなにより。


 だから、麗姉と萌は不満そうな目で俺を見ないでくれ。


 んで、もって春樹は春樹でニタニタと俺を見るんじゃない。


 さっさと帰りたがっていた春樹だが、この状況をメッチャ楽しんでいる。


 まあ、引き止めた手前、楽しんでくれている分にはいいんだが、腑に落ちない。


 そして、迎えた4回目


 大富豪→春樹

 富豪→麗姉

 貧民→萌

 大貧民→香恋ちゃん


 うん、コメントしづらいね。


 香恋ちゃんは意気消沈し、皆も可哀想な生き物を眺めてる目になっていた。


 麗姉や冴ですら、憐れみの視線だ。


 これはもう無理だろう。


「あー、次のゲームから隣同士でペア組んでやらない?」


 俺のその提案に異論を挟む物は誰もいなかった。





 副題 <委員長の不遇は大富豪には発揮されませんでした>




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