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3 企画会議、いつになるの?

 「企画会議にかける」


 その言葉が来てからは、じっと待つしか無かった。


 先に言ってしまうと、これは出版業界の卑近な例になるが、たとえば漫画家の場合、ネームを練って、何度もリテイクをくらい、そうして預かってもらったネームを連載会議に出してもらうまで、1年はかかるのが普通だという。その間、何もないのだ。ただ、ひたすら待つ。


 ネームが通って連載になれば良いが、没だったら、それまでの苦労と時間は水の泡である。(編集から言われたのではなく、独学です)


 それを考えると、小説の方はまだレスポンスが早いのかも知れないが、その時はそういった出版業界の事情を知らなかった私のメンタルは、やはり脆かったのかもしれない。


 企画会議にかける旨、お願いしたところ、担当のTさんには、


「ありがとうございます! さっそく企画会議に出したいと思います!」


 と言う快い返事を得た。


 職場の「最近、執筆の方はどうですか?」の声に、「いやー、一作、最終選考には残ったんだけど、そこで落ちちゃいましてね(事実です)」と答える日々も終わり。

 「今、企画会議に出してもらえることになってるんですよ!(ふふん!)」と胸を張って答えられるようになった。


 しかし、定期連絡はポツポツあるものの、肝心のGOサインはなかなか出ない。

 いったいどうなっている?

 落ちたの? 落ちたから言い出しにくいの?

 要は自然消滅ってやつ?


 ありえるな……そんな話、この業界では山ほどあるらしいし。


 もはや苦汁を飲んで諦めるしかあるまい。そんなことを思ってしまった。


 他に、何か賞に出そうかな……? 編集さんも、賞に出すことは止めてないし。

 それには、まず、完結させなきゃな。


 なろうの方も、最終章手前で、ずっと止まっちゃってるし。『待ってます』って言ってくれている読者さんもいるし、早いとこ完成させなきゃな。でも、やっぱり賞に出したい。


 折しも、『なろうコン』が始まる、という話が出ていた頃。

 でも、参加したところで、私の作風は、とことんなろうコンには合っていない。


 『あなたの未練、お聴きします』は、二回一次突破し、タイアップでつけてもらったイラストがコンテストで大賞を獲り『小説家になろう公式のイラスト』に使われていたという経歴があるが(藤ヶ咲様による、あの赤い帽子を被った金髪の女の子の画像、あの原作が『あなたの未練』なんです。知らなかったでしょ?)、コンテストはそこ止まり。やはり、なろうでは難しいのではないかと思っていた。


 しかし、連絡も無いし、この作品を世に問いたい気持ちもある。結局なろうコンに申し込み、その申込期日までに、我が猫を完成させる運びとなった。


 マイナビ出版から再度連絡があったのはそんな2月1日である。


 メールには、こうあった。


「『吾輩が猫ですか?』、完結おめでとうございます! タイミングが合わず、企画会議の結論が出ていません。ついては、改めて企画会議に出しても良いでしょうか?」


 あー、なんなのかな。そういうものなのかな。話来たの10月なんですけど……。

 でも、終わりまで追ってくれたんだ。やっぱりありがたいな……。

 少し呆れた反面、でも、忘れられてなかったというのは、やはり嬉しいものであって、「前向きにお願いします」と返した。


 ――そして結局、2月が過ぎようとしていた。


 さすがに、今回ばかりは話が流れたんだろう。


 そう思い、今度開催されるスターツ×なろうのコラボ企画に申し込むべく、文章をスリムアップすることを始めた。前回の9月、エブリスタで発表するときは文字数に気を配ったが、その後は書きたいように書いて、15万字を超えていたので、これをコンテスト規定の13万字以下にしなければいけない。


 ここら辺、出版の仁義を欠いているわけだが、企画会議の打診があってから時間がかかることもあるのだということを承知していなかったので、編集にはお許し頂きたい。また、「編集は悪い知らせは極力送らず、自然消滅に任せる」ところだという偏見もあった。


 しかし、よくよく考えてみると、悪い知らせも、決して『察してよ』という所ばかりではないのだと、今更ながらに気づいている。そうでなければTwitterで「このままでは打ち切りです! 買って下さい! 助けて下さい!」という作家さんの絶望に満ちたツイートが出回る訳ありないから。


 ……そんなこんなをしていた3月の上旬。

 またしても編集から連絡が入った。


「お世話になっております。企画会議でまだ結論が出ていません。つきましては……」

「……」


 あー、もー、なんだかな。もう。

 企画会議出すと言ってからもう半年ですよ。

 そんな風に、腐る直前のこと。


 3月も中旬になった頃だった。

 もはや諦めを通り越して悟りの域に達しかけていた私に、急展開を告げるメールが、唐突に届くことになる。


「お世話になっております。『吾輩が猫ですか』の方ですが、社内で検討した結果、出版OKを頂きました」


 お、おお!? やっと? まじで!? やったの?


「ただ、最近シリーズの続刊が多く、完全新作として6月に発行したいのですが……」


 6月刊行と言うことは、原稿は5月には完全にできあがっていなければいけない勘定だ。

 今が3月中旬だから、顔合わせなど諸々考えると、改稿などにかけられる期間はせいぜいが1ヶ月ちょっと。

 ちなみに、去年は春頃にオファーが来て、10月刊行。

 8割方書き下ろしたとはいえ、半年以上は何とか取ってもらえた。


 今回は6ヶ月待った後の、なんとなんとの予想改稿時間1ヶ月オファー。


 何かとてつもなく大変そうな「二冊目」のチャレンジが、こうして開始された。

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