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10 無職と書き下ろしと〆切りと神降り

 二回目の打ち合わせを綿密に行ったため、次の日には書き下ろし部分のプロットは上がった。

 ここら辺、一回目の書籍化体験を通じて、私も成長をしているのか、『改稿すべきポイント』を押さえて、どういう話を作るかという枠組みを作るのが巧くなっていたのかも知れない。

 もっとも、電話で『こんなにすんなりプロット通っちゃうもんなんだな、ってびっくりしています』と驚きの声を上げてしまったが。


 ポイントを押さえているので、書き下ろしの手は速い。心の赴くままに筆を運び、トリックを盛り込みつつ、ひたすら書く。


 プロットという設計図がきっちりした上での執筆はこんなにも容易なのか、と思いもしたが、今から思うと実は別の要因がかなり強い。


 別の要因――つまり、『〆切り』である。


 なにしろ、4月の頭までに初校を、ということなので、とにかく時間が無いことがわかっていた。初稿を出してからの改稿は、前回の体験で地獄を見ているので、早め早め、前倒しに行った方が直す時間も確保でき、作品のクオリティは上がる。


 現在仕事をしてないのもプラスに働いた。仕事の合間を縫って書いているのでは、こうはならない。


 まずは書く。ブラッシュアップはその後。『たたき台』を作り、その後で編集と共同して物語を作っていく。作るのは、あくまでも『仮』のものだ。

 そんな、ある種の気軽さもあったと思う。

 

 だが、それよりも何よりも、プロットの段階から、このときは多くの作家が体験する、『あの』現象に包まれていた。


 多くの作家が、一度は体験したことがあるであろう現象。


 『神』が降りてくる――その感覚だ。


 書いても書いても、面白いと思える物語を書く手が止まらない。アイデアが無尽蔵にあふれ出し、一太郎の画面が文字で埋まっていく。

 書くことが楽しい――そんなことを意識するまもなく、ただ、ふわふわしたような、それでいて気合いが載ったような、心地よい高揚感に包まれながら、キーボードを叩く。


 そうして、打ち合わせから5日。プロットを挙げてオーケーをもらってから4日という、驚異的な速度で書き下ろし部分は、ひとまず完成を見た。


 原稿を編集に送った時には達成感と創作意欲で、もっと次の部分を書きたい、そんな気持ちで一杯だった。


 そして、同日。今後のスケジュールを決めるため、編集のSさんと連絡を取った。


S「書き下ろし部分ですが、これは大枠では良いと思います。それで、初稿の〆切りなんですが、4月頭までにお願いしたいですね」

私「ありがとうございます。スケジュールですが、今仕事を辞めたばかりなので、十分いけると思います」

S「それでは、土日を含めたスケジュールでも良いですか?」

私「問題ないです」

S「そうですか。……それじゃあ、〆切りは4月初めということで」


 書き下ろし部分に関してはひとまず問題が無いようで、大きく設定を変えたところの詳細について打ち合わせをし、全体の初稿を4月頭までにアップすることで、話がついた。


 改稿部分はかなりの物語の変更になるが、この調子なら問題ないだろう。

 さらに考えて4月初めにもう一回電話で打ち合わせの機会を持ってもらうことにした。


 スケジュール的に非常にきついと思っていたが、この調子なら余裕だ。

 仕事も辞めたし! 一日中時間あるし! 何より今度は『改稿』だ。全面的な『書き下ろし』ではない!


 目処がついたと思ったときの浮かれようといったら無かった。

 雨が降ろうが槍が降ろうが、どんとこい、といった気持ちだ。


 もちろん、そんなに簡単にいくことなど無いのだと、この後、痛いくらいに思い知らされることになるわけだが。

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