はじめに
初めての出版体験を綴った『出版前夜祭 ~超低ポイント作者が、商業作家になるまでの体験記~』から2年。新たなオファーを受けた作家の体験記となります。
前作とは独立したエッセイなので、こちらだけでもお楽しみいただけると思います。
前回、「出版前夜祭」にて、切迫した〆切りとの勝負を繰り広げた、魂を削る初出版の体験記をアップしたが、今回はその続編となる。おかげさまで、前作は感想メッセージまでも多く頂くなど、大きな評価を得た。
そして、続編を執筆してみたくなったのである。
と言うのも、なんと、この底辺作家に、二冊目のオファーが来たからである。
書籍化作家として一冊目を出して、二冊目。そろそろ私も「小説家」と名乗っても悪くないのかも知れない。そんな思いから、今度は「初めての書籍化体験」「書籍化作家」という見解を離れ、「小説家」として雑多なことを多く綴った。
「なーんだ、二冊目なんて当たり前じゃん」
そう思われるのは当然のことであるが、今回の書籍化は、前回出版した「あなたの未練、お聴きします」の二巻ではない。あれから書き上げた新たな物語を、幸運にもまた拾ってもらったのである。この体験を、文字に起こさない手はない。
このあたり、いわゆる「なろう作家」は、多くの人が首を捻らざるを得ないであろう事実に、「一冊本を出しただけだから」と、自分のことを「小説家」と名乗れないと本心から考えている人は、私以外にも多くいる。三冊出して、ようやく「小説家」と名乗れるラインだと考えている人もいるだろう。だからこそ、自らのことを「書籍化作家」と呼び、「小説家」と呼ぶことを頑なに拒絶するのだ。
一冊目は「まぐれ」、二冊目は「実力らしきもの」、三冊目は「本物」。
そう考えている作家さんが多くいることに気づかされた。
ちなみに言うと「二巻なんて当たり前」という見解は、このエッセイでひっくり返してもらうつもりである。どうか愉しみにして欲しい。
本を出す、というのは物書きにとって結構な一大事業であり、書籍化後、一冊で満足せずに書き続けてわかったこと、見えてきたものがいくつもある。
今回のエッセイは、前回のように、いわゆる『血湧き肉躍る』ようなドキュメントではない。
そうではなく、今回出版にいたり、そこで経験したことを軸に、作家になって(やはり「作家になった」、などはおこがましい限りだが)体験したことをゆるゆるとしたテンションで書き綴っていこうと思う。前回がドラマなら、今回は日記だ。
また、今回の書籍化は「目的を定めて『作っていく』」という側面が多くあったため、自著の内容に触れることがかなり多くなっていることをお許し頂きたい。
本当に、『創作日記』、あるいは「メイキング」的な内容である。
肩の力を抜いて読める読み物だ。前回のような息詰まる展開は、ほぼない。
それでも、二冊目を出す程度には出世(?)した作家の戯言に、興味を持っていただけるなら。それほど嬉しいことはない。
次、作家になるのは、これを読んでいるあなたかも知れない。あるいは、これを読んでくださっている作家さんも、多くいるだろう。
そんな方々に、時には苦笑を、時には微笑をいただけることが出来れば、これを書く意味があるというものだ。
ゆったりとしたエッセイになるが、どうぞコーヒーか紅茶でも片手に、暇つぶしにしていただければ幸いである。