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【喜怒哀楽短編集】

水平線の向こう側

作者: 姥妙 夏希

これも暗い感じの話ですね...

溜まっていたのでUPですノ

毎日、水平線を見る日々。

向こう側は、どうなっているのだろう。

向こう側は、何があるのだろう。

好奇心が駆り立てられる。まさに、私は今好奇心旺盛の精神病質者(サイコパス)

好奇心は猫をも殺す、と言うでしょう?

なぁんて、くだらないことばかり考えて、他にやることのない自分が虚しくなるだけなのに。


17年、ずっと水平線を見てきた。

荒れ狂った波や、穏やかな波、静かだけれど深い波など、様々な波があった。

けれど、私は、その奥の、奥の、ずっと向こう側に興味があった。

何が、あるのだろう。何が...。


手を伸ばしても、届かない何かを見つめている。

17年、ずっと。


ある日、父がこう切り出した。

「お前は、結婚せずここに残るんだ。お前は、しっかり管理してやる」


管理?何の事かしら??

私は管理される物なの?

疑問が次々と浮かび上がる中、彼は話し始めた。


父は、ずっと私のことを監視していたのだ。

私のことを、閉じ込め、そして抗う姿を見ていたのだ。

娘をやるのは惜しい。なら、いっそ自分の物にしてしまおう。

たった、それだけのこと。


ああ、そうだったのね。

私は、自由があると思っていた。

水平線の、向こう側に、希望があると思っていた。


でも、17年、ずっと檻の中で縛られて、ただただ外を見つめていただけだった。


無駄なのに。

無力なのに。


なら、いっそ全てなくなって.......。


檻の中で、育たれた鳥は、何時しかするりと檻をすり抜け、飛べぬまま落ちてゆく。

何処までも、何処までも、その命が尽きるまで。


私は、そっと夜、家を抜け出すと、荒れ狂った海を見つめた。

17年、ずっと見ていた水平線は、真っ直ぐな線がなくなり、凹凸があるようだった。


水平線は、壊れ、希望も、壊れ...。


でもね、私は、檻の中でも抵抗するの。

これがきっと、最初で、そして最後の抵抗。


絶対貴方の手元なんかにはいない...。


私は、覚悟を決めると、微笑んで、黒くうねった波に身を投げた。

波が、水が、服に纏わりついてくる。

でも、不思議ともう怖いとは思わないの。



水平線の向こう側、何があっても、怖くなんてないから...。





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― 新着の感想 ―
[良い点] 短いながらもきちんとした話の筋があり面白かったです。海や波の描写がいいですね。
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