順風満帆とはいかず。
迷宮制作から半年。解放予定のエリアには一万を超える軍勢が整列していた。
切っ掛けは育成が滞って見えたからだ。
「そろそろ人を入れるか」
そう思って現在の戦力に召集をかけたのだが...
「このゴブリン達で人を入れると間違いなく殲滅してしまいますよ?」
「そんなに人類弱いの......?」
驚きのあまり呆けた顔をしてしまった。
「人類が弱いというか...基礎能力が高いタイプのゴブリンを極限環境で鍛えたうえに、連携力も上げちゃったら初見で倒せるわけがないじゃないですか」
「つまり、手を抜かせて殺られるのを命令しないとどうしようもないってことか?」
「死にたがる個体が居るとは思えませんが......」
「じゃあダメじゃん。どうすんだよこれ」
「簡単ですよ。表に出さなければいいんです」
「そうか...せっかく鍛えたのにな」
「使うにしても未育成の魔物達がせいぜいかと」
目の前にいるのはある程度育成された個体だが、戦闘に向かない進化をした魔物を含めるとこの倍ではすまない。
「でもなぁ...殺られてこいって命令はしたくないんだよなぁ」
「しなければ良いじゃないですか。そもそも迷宮の目標は長くそこに在ることであって、魔物と人を戦わせることじゃ無いんですよ」
目から鱗だ。
「じゃあやっぱり!大規模アスレチック迷宮のプランでも!」
「それは他の迷宮に迷惑がかかるからと却下されたはずですよね?」
今のは完全に行ける流れだったじゃないかと不満をこぼす。
「どことなく攻略出来そうにするのが長く運用するコツですよ」
「ハァ......それが難しいから困ってるんでしょうに。なにか、良いアイディアはないものか」
そうして悩みぬいた末に出来たのがゴブリン迷宮の表面である。
1層の草原は作物を作るのに適している。
2層の地下からは石材や鉱石が取れる。
3層は森林の跡地だ。樹木が育ちやすい。
これらは最初に作った階層なのでより効率の上がった階層があったりする。
ゆくゆくは冒険者を利用するのも有りかと考えながら調節をしてある。
この仕組みが上手くいくことを願っている。
そして、ひと月も経たずに修正を余儀なくされた。
「確かに全力で制圧しろとは言ったけどさぁ......」
狩られた腹いせで大人気なかったと反省。
「地方領主の軍勢程度では損耗なしに倒せるってわかりましたよ。実力がわかって良かったじゃないですか」
「ぽ、ポジティブぅ......」
ルルエラが嬉々とした雰囲気で話すのを冷めた目で見ていた。
その後、迷宮制作テンプレートを元に召喚魔方陣を配置した戦うためのルートを作成することでどうしても戦いたい者達の為に労力を割くこととなった。
もう全部これでやれよと思う程度には効率化されており、調整の必要がないのだが......
「多少は往復しやすくしてもいいんじゃないの?」
「転移結晶も移動門も...あまり安い物では無いのですが」
「導入コストか...構わん!責任は私が取る!」
「私のポイントが浪費されていく......」
コントじみたやり取りをしながらも迷宮制作は進む。
残りDP7,531,000