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始まりの日

前回更新が2年前?おかしい...どうしてこんなことに

俺の名前は………何だったか?

思い出そうとしても、どう考えても分からない。

歳は22になるはずだ。

高校を卒業しいくつかのバイトを経験し、親の紹介で土建屋の社員となった。

体力的にキツかったがその分しっかりと金になっていたし、福利厚生は充実していた。

とてもやりがいのある仕事だったはずだ。


人生最後の瞬間はとてもぼんやりとしている。

僕の名前を呼ぶ先輩の姿と、正面に広がる青空。手には金具の壊れた安全帯が握られている。

あぁ、私は死ぬのか。

そんなぼんやりとした記憶と自由落下のふわふわとした感覚を最後に記憶は途切れている。

人生の終わりとは呆気ないものだ。




そして少し前。緑の魔物に生まれ、もがくうちに人によって殺された。


そして今。おそらくは同じ空間に居て、身体は緑のままである。


どうしてこんなことに?


その答えは誰も教えてくれない。


なにもない部屋に一人だけだ。

だが、ひとつわかるのはゲームのような"設定"が存在していることだ。


死んだときに聞こえた音声、それがヒントになるのだろう。


異世界転生というものはずいぶん前から一般的になっているので多少はわかるが、あまり詳しいとは言えない。


ゲームのようにメニューのひとつでも開くことができればきっとどうすれば良いかを探れると思うのだが。


平地にお椀を被せたような、なにもない部屋に自分と謎の発光体。


......発光体?

「あのぉ......私の声聞こえてませんかぁ......?」


目の前に握りこぶしほどの明るいボール(?)が漂っている。

「ほんとは聞こえてるんですよねぇ......?気付かないふりしてるだけですよねぇ?」


まるで手元に太陽があるような不思議な光景である。

「どうしましょう......()()駄目となるとそれこそ終わりなんですよぅ」


太陽ほど明るくはないものの、丸く光るそれはどういう理屈か音声を出しているのである。

「お願いですよぅ......からかっているだけなんですよね?」


深呼吸をする。

よし、冷静だ。

間違いない。


「どうしてこんなことに」

ふらふらと漂って地面へと降りた発光体がどこか切なく感じる。


「ちょっと失敗したくらいでひどいですよ。サポーターの選択を間違えたからって私がサポーターになるとか絶対おかしいですってば」

「サポーターを間違えたの?」

「えぇ、転生先で種族が変わっていることを失念していてサポーターの選択を間違えたんですよ」


発光体はぱちぱちと瞬いて(またたいて)てから。

「......あーっ!やっぱり聞こえてるんじゃ無いですか!放置するなんて酷いですよ!」

「いや、無視をしていたわけでは」


「じゃあなんですか!見て笑ってたとでも言うんですか!」

「光ってしゃべる不思議なものに驚いてただけだよ」


「え?私って今どう見えてるんです?」

「野球ボールくらいの光る球体」


「そんな...私のキュートな容姿すら見せられないとは...」

「それで、君は誰なんだ?」


「元・天使の迷宮運用サポーターのルルエラです」

「迷宮さぽーたー」


「この世界における迷宮管理者へと適切なアドバイスをするための優秀な使徒なのです!」

「優秀」


「えぇ!ちょっとした手違いはありましたが、そこらに自然発生した有象無象とは違うんです」

「ちょっとした?」


「えー、はい。あなたが人から魔物にならなければなんの問題もなかったはずなのに!あの想像主と来たら!融通のきかない堅物め!」

「そんなこと言っていいの?上司なんでしょ?」


「いいんです。今となってはもうどうしようもないですから」

「ふーん?それで、迷宮運用サポーターとやらはなにをしてくれるんだ?」


「説明のためにまずは!こちらの管理端末...アレ?この辺りに丸い石みたいなやつがありませんでしたか?」

「大きさは?」


「その、眼球くらいのおおきさで...」

その言葉を聞いていつのまにやら左腕に巻かれていたリングにつけられている真珠のような色合いの石を見る。


「ああそれです。その石に手をかざすと枠が出るので情報を見ていただいて」

「ふむふむ」


右手をかざすと手元にゲームじみたウィンドウが現れる。

「その枠は管理権限を持つ者にしか見せられない設定になってるので人に見せるときは設定画面から操作してもらえれば。さて、迷宮管理を始めましょう!まずは左上の辺りにあるDP(ダンジョンポイント)を確認してもらえますか?おそらく千くらいあるかと思います。それを利用して迷宮を管理し、ダンジョンらしくしていくのです!」

「へぇ、この...千と七十五万八千五百もあるポイントで運用していくのか。なるほどー」


「えっと、今なんと?」

「え?10,758,500ポイントが何か?」


「ハァ!?何でそんな大量に...あっまさか!?あの野郎私のへそくりに手を出しやがったな!?」

どこか遠くと連絡をしているらしいルルエラを放置しているとウィンドウの一部が点滅をし始めた。


「これは...お知らせ?何々...転生直後の迷惑料としてルルエラの持ち分を振り込みましたと...」

「あの野郎なにも答えやがらない!普段ずっと暇してるくせに!ふざけんな!ばーかばーか!戻ったら蹴飛ばしてやる!」


「管理者とサポーターでは管理者の方が地位が高いので存分にこきつかってくださいと」

「えーっとですね、その、ポイントのほとんどは私のへそくりでして...えへへ、もしよければ返していただければなーと」


媚を売るような甘い声でこちらを見ているルルエラに、にっこりと笑うとそれを否定した。

「だいじに使わせてもらうね!」

「そんなぁーーわーー!!!それがないとこまるんですぅ!!」

「僕は困らないし迷惑料らしいからありがたーく運用してあげるよ!」

「や、やめてーーーーー!!」


その後、悲鳴を上げるルルエラを無視して徹底的に迷宮管理をしたのであった。





その日、世界に神託が降り、各地の聖職者が同じ詞葉をうけた。


"ミドリノマジン タイジュトナラン"

ある国は軍備が拡張され、ある国では神へと祈りを捧げられ、またある国の何処かではまだ見ぬ神へと崇拝が始まったという。



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