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第2話

その日。中年冒険者のジョフとキースは森での調査依頼をこなしていた。


「魔物の数が随分と減ってんな」

「だな。珍しい跡があるわけでもなし。何かに襲われた訳じゃ無さそうだ」

「とにかく一度持ち帰るぞ」

「りょーかい。ん?なんだありゃ」


倒した魔物の剥ぎ取りをしているジョフはキースの声に反応し顔をあげた。

視線の先には見慣れない岩があり、不自然に洞窟の入り口をのぞかせている。


「ハァー、何てもんを見つけるんだお前は」

「知らねぇよ作ったやつに言え!」

「義務を無視して帰りてぇよ」

「奇遇だな、俺もだ」

冒険者の義務としてダンジョンを発見したものはできる範囲での探索を求められているのだ。


文句を言い合いながら二人は洞窟へと進んだ。

人一人が立って歩けるほどの大きさの洞窟はなだらかに地下へと下っていく。

内部はぼんやりと明るく、松明が無くとも歩けるほどだ。


「なんだぁこりゃあ......広すぎんだろ」


外に出たかと見間違うほどの明るい空洞。

天井には擬似的な太陽が輝き、なだらかな草原が広がっている。


「ん?看板?」

ジョフか天井を見上げる横でキースは立て看板に目をやった。


[これが読めるなら大丈夫!]


「なんか、バカにされてる気がするな」


そう呟いてジョフに声を掛けようとするとどこからか甲高い音が鳴り響いた。


「なんだ!?」

あわてて見渡すと草のはえていない道の先にひとつの櫓が目についた。

その方向からピーーっピーーーっと断続的に音が聞こえてくる。


「あー、どうやらあちらさんに気付かれたらしいな」

そう言ってジョフは剣を構え周囲に警戒をし始める。


「全く、気が付かなきゃよかったぜ!」

キースはぶつくさと文句を吐きながら道を進むジェフを追いかけた。


櫓のそばまで来るとそこは丘の頂上らしく見晴らしが良くなっていた。

櫓には誰もおらず、道の先にはゴブリン達が集まり騒いでいた。

奥の壁まで続く道から少し離れると小さめの小屋が点在している事が見てとれる。



「あれ、行かなきゃダメか?数が多くて面倒なんだが」

およそ20ほどである。


「何か書いてある」

櫓の傍らには看板が立てられている。


[挑戦者募集!勝者にはメダル授与!]

[  メダルを集めて先に進もう! ]


「先に進むには戦えって事らしい」

キースは大きめにため息を吐いた。

どうやら殲滅型のダンジョンではなく、条件を満たすことで進めるクエスト型のダンジョンらしい。


伏兵に注意しながら道を進むとなにやら様子がおかしなことに気が付く。


「襲ってくるわけではないのか?」

道を塞ぐように四角い台が置かれており、その四隅には棒が立てられ3本の紐で棒を繋いである。

たとえばプロレスやボクシングで使われるようなリングである。


集まって騒いでいるゴブリン達は道の両端に集まっており、こちらを見ながら笑っている。


「っと、また看板か」


[挑戦者はロープの中へ ]

[一人ずつ、武器は無し ]

[戦闘意思を失なえば敗け]


「ロープの中で戦えってことらしいな」

「こいつら全部刈った方が早く無いか?」

「この距離で襲ってこないんだ、倒すのは時間がかかるぞ」


ゴブリンが行儀よく列を作って座っている。それだけで随分と賢いことが見てとれる。


「まぁ、襲われたら倒せばいいさ」

新米というわけでもなく、ゴブリン程度であればやられることはない程度に二人は強いのだ。

この迷宮を作った者の意図を探ろうとジョフはリングへと上がった。


ジェフがロープを越えると誰からともなくゴブリン達がズン、ズン、と足踏みを始める。

音が揃いだすと反対側にある小屋から一体のゴブリンが現れリングへと上がってきた。

手に嵌めたグローブを打ちならし、拳をあげて声を出す。それに呼応しゴブリン達が歓声らしきモノを挙げた。

見れば見慣れたゴブリンより引き締まっている気がする。


「ギャッギャッ」

一体のゴブリンがキースの方を示し何かを言う。


「ん?あぁ、これか」

台の側に立つキースは台に彫られた文字を見つける。


[角に立ち準備してください]

[ 鐘が開始の合図です。 ]


「棒のそばで鐘がなるのを待て、って事らしい」


ジェフが角へと向かうと、ゴブリンは反対の角へと進んだ。

棒に背を向け向かい合うとゴブリンの一体が持っていた木槌で台の側の鐘を打ちならした。









カンカンカーーーン!!と鐘が強く打ち鳴らされる。

すでに4体のゴブリンをリングに沈めたジェフは深くため息を吐いた。


「どうやら次が最後らしい」

そろそろ帰りたくなっているジェフにキースが声をかける。

次にリングに上がったゴブリンは首にメダルをぶら下げていた。


「そうかい、じゃあさっさと終わらせてやる」

気合いを入れ直したジェフがそのゴブリンを倒すのにそう時間は掛からなかった。




それまでと同じように、倒れたゴブリンは担架で運ばれていく。


「しっかし、ゴブリンと殴り合うのはわけがわからんな」

置いていかれたメダルを拾い上げてジェフが呟く。

リングを囲んでいたゴブリン達はゾロゾロと背を向けて小屋がある方向へと散らばっていった。


「娯楽でしょ、単純に」

「魔物がか??」

「観戦しながら何か食ってたし」

「だとすればここは随分と......いや、後にしよう。とにかく道の先を見たら一旦戻ろう」


その後、二人は道の終わりにある扉にメダルを置くであろう台座を確認し冒険者ギルドへと報告をしたのだった。

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