お城
二台の馬車が準備された。
先頭の馬車に陛下とクレア、そして白が乗車する。
ニーナは心配そうに見つめる…それを察した陛下が一切の手出しはさせないよと約束してくれてようやくニーナは後方の馬車へ乗車した。
「とても友達思いの子なんだね…サラにも作ってあげたかった」
陛下は憂えいをおびた微笑みをうかべた。
「サラには私がおります。必ずやサラを取り戻してみせます」
白はきっぱりと言いきる姿に陛下は苦笑いをうかべる…
「白殿がサラのことを思ってくれているのは、よくわかっている。されど、人は人との繋がりが欲しいのだよ。ともに学ぶ学友、ともに切磋琢磨することで互いに認め助け合う、誤りがあれば正してくれる…とても大切で尊い」
子供を諭すように白に語りかける。そして、「クレア姫はどう思うかな?」っと訪ねる。
「あの者達は私の宝です」
柔らかな微笑みがクレアを彩る。
「…損得など考えもしない…私を直人として見ているのです」
まぁ…っと苦笑い混じりで言葉を続ける。
「ニーナにいたっては考えるよりもさきに、体が動いているのやもしれませぬが………あの者達といるのはとても心地よいのです」
陛下は娘を見るように優しく微笑み頷いた。
一方ニーナはひたすら沈黙を守っていた。馬車の振動車輪と馬の蹄の音が響いている。セシリアとニーナ、向か合わせでラピスとカスティアが座っている。しーちゃんは精霊の姿に戻ってニーナの膝に座っている。
(カスティアさんいるからここでは怒られないけど…)
しーちゃんの髪を撫でながら…ちらりとカスティアを見つめる。
どこか懐かしい感じがする…不思議な安心感そしてなによりこの人は自分と同じだと、はじめて会ったときに気づいた。
きっとカスティアも気づいたことだろう…
ニーナの視線にカスティアは微笑みを向ける。
「皆さん私の顔を気にしていらっしゃいますが…何かついていますか?」
セシリアとラピスも見ていたらしく…決まり悪そうに視線をそらす。
「貴方が知人によく似ているものですから…つい見つめてしまいましたの。不快にさせてしまったかしら?ご免なさい」
セシリアが可憐に首をかしげ頬にてを添えて笑顔を向ける。
「いいえ…こんな綺麗な方々に見つめられて悪いきはしません」
カスティアも笑みをうかべる。
ニーナは首をかしげ…しーちゃんも真似て首をかしげる。
「えっ…誰かに似てる?」
しーちゃんはニーナを見上げる。
セシリアとラピスは驚く…ラピスがニーナに冗談だよなっと?顔をひきつらせる。
「おいおい…昨日会っただろう!」
ニーナはカスティアをもう一度見つめる。
「昨日?…アッシュ先生?でも違うねっ」
ラピス中腰で前屈みにのりだしニーナの顎に右手をかけ持ち上げその目を覗きこむ。
「本気で言ってるのか?」
その手をすかさずセシリアが叩く…無言、無表情で見つめる。しーちゃんは眉をよせて小さい手でラピスを押し返している。ラピスは気にすることなくセシリアに視線を向ける。
「セシリアこいつ眼科つれてかないとダメじゃね?」
セシリアは深いため息をつく。
「ラピス…あなた、今の体制口説いてるとしか見えないんだけど?」
「なに冗談いってんだ!」
セシリアは綺麗な眉を潜めそして、ため息をつく。
「じゃあ…私やクレア、あと同化したニーナならその体制する?」
ラピスは数度瞬きする。そしてようやく納得し頭をかきながら椅子に座りなおす。
「ニーナ…私の顔誰に見える?」
セシリアを見つめる…そして気づいたらしく目を閉じる。そして静かに目を開きカスティアを見つめた。
「あっ!ユウナ先生!!」
今さら驚くニーナとニーナの声にびっくりするしーちゃん。ラピスは呆れる…
そんな話をしている間にお城に到着した。
応接間のようなところに案内された。陛下と白は椅子に座る。その後ろに三人控えている。
陛下は椅子に座るようにすすめられ四人は椅子に腰を下ろす。
馬車から降りる前に紫乃は小さくなりニーナの制服に隠れる。
「クレア姫はサラの影武者をしてもらえないだろうか…」
クレアは頷く…
「かまいません」
「三人の友人は勿論、城へ客人として滞在していただく。後で部屋に案内させるよ」
ニーナ達に優しく語りかける。
「後ろの三人は竜騎士だ」
陛下は後ろの者達にうながす。
「はじめまして水竜の騎士アンジェラ・ヘルンよ、よろしくね」
亜麻色の髪グリーンの瞳のスタイルの良い美女がはじめに挨拶をする。美女なのに親しみやすい雰囲気がある。
「私は風竜の騎士、ナギ・グランフォードです…」
一礼する…茶色の髪に琥珀の瞳。大人で優しい雰囲気がある。
「アルフォード・ベルーシュだ」
金髪、右目は赤で左目は金。厳しい雰囲気の美青年…アルフォードはクレアではなくニーナを見ている。
ニーナは隠していることが暴かれている気がした。
しかし、笑顔をアルフォードに返す。
(焦らな…怯むな…)
心で呪文のよう唱える…アルフォードは少し驚きしかしすぐに瞳を閉じ視線をクレア達に向ける。
ニーナは思わず肩から力が抜け視線をおとす。そこで心配そうに見上げるしーちゃんと視線があいニーナは力なく笑った。
(陛下より…恐い)
メイドさんに各部屋に案内される。三部屋並んだ客室は高級ホテルのように広い…。
クレアとセシリア、ラピスはニーナのあてがわれた部屋に入りしーちゃんはメイドさんがいなくなると変幻して両手をあげて体を伸ばしている。
ニーナは覚悟を決める。
セシリアは微笑みを絶やさずニーナを見ている。
「セシリア…ごめんなさい」
セシリアはあらあらと笑う…
「何に対しての謝罪かしら?」
思い当たることをのべる。
「状況を判断しないで瞬間移動したことです」
ニーナはセシリアを伺う…
「そうね…それに、クレアの精霊は順位2位のマーメイド。ニーナの白雪には劣るけど太陽神殿の結界を破り守れたでしょうね」
セシリアの言葉にニーナはハッとする。
セシリアがクレアを見つめる…クレアは精霊をよびだす。
クレアは精霊に頷く…精霊はクレアにお辞儀をして口を開いた。
「紫乃様とラインを繋ぎましたので、もしやと思っておりましたわ…でも、主をお守りすると覚悟を決めておりました。例え順位1位の黒狼でも引くきはごさいません」
ニーナは睡蓮に謝る…
「ごめんなさい…」
主と精霊の絆に割り込むかたちになったのだ…精霊のプライドを汚した。
落ち込むニーナに睡蓮は微笑み言葉を続ける。
「たとえ消滅したとしても…精霊は主を守るそれが私達の誇りです。それは、白雪様も同じかと…」
睡蓮はニーナとそして幼い精霊の紫乃に語りかける。紫乃は睡蓮を静かに見つめる…先輩から後輩への言葉をしっかり聞いている。
セシリアとクレアは優しい眼差しをそんな二人に向ける。
ニーナは白雪のことを思いだす…そして白を思う。
守れなかったのは精霊にとって重い意味をもつのだと知る。
「で…俺にたいする謝罪は?」
忘れられているラピスが口を挟む…ニーナは首をかしげる。
「なんだっけ?女装が似合うことは話したけど…ごめん忘れちゃうた」
エヘヘっと笑って誤魔化す。ラピスは眉をつり上げて怒鳴る。
「俺の忠告無視したことだろう!」
しーちゃんはびっくりしてニーナに抱きつく。
四人の去った後…アンジェラがため息をつき隣のアルフォードに人差し指を突きつける。
「ちょつと!アルフォード貴方、あんな小さい子になに睨んでるの!」
ナギは同意しながらも先ほどの少女を思いだす。
「そうですね。でも、あの子は怯えていませんでしたよ…。兵士も恐れる火竜の騎士に笑顔を返すなんて」
ちらりとナギはアルフォードに視線を向ける。陛下もにこやかに同意する。
「そうだろう…あの子は私にも反論したんだよ。サラとクレア姫の魂は違うとねっ。たとえ同じ魂だとしてもやはり違う気がする」
陛下は怒るどころか嬉しそうに語る。
白はニーナの言葉を思いだし…正論だとわかっている。
納得いかないところもあるが…謝りにいこうときめる。
「白殿も私もあの子には感謝せねばいけないね…。アルフォード、ナギ、アンジェラ…私の娘サラを取り戻す力をかしてほしい」
「私からもお願いする…サラを取り戻す為なら私は命も惜しまない」
白と陛下が頭を下げる…三人は驚きあわてる。
「陛下…頭を上げてください。姫は私達が全力で救います!」
アンジェラの言葉にナギもアルフォードも同意する。
話が終わり竜騎士と一緒に白も退室する。
通りかかったメイドに部屋を聞いて白はその部屋へ足を向ける。
ラピスは怒っている。とりあえずニーナは謝る…
「ゴメンなさい」
「このじゃじゃ馬!少しはお淑やかになってくれよ…王にまで反抗するし…こっちの心臓が止まるかと思ったぞ!」
「まあまあラピス…」
セシリアがラピスを止めてくれてほっとする。
「ラピスが今だに女装が似合うのは事実よ…」
ニーナは青ざめる…火に油を注がれる。
ラピス視線をセシリアにむけ名を呼ぶ。
「セシリア…」
セシリアとラピスが笑いあう、…ニーナは静かに後ろに下がる。
「ラピスのお姉さまたちからの贈り物が私の所に送られてきてね…写メの催促がきてるの」
セシリアは両手を伸ばすと大量のゴシックドレスがあふれだす。
「ラピス髪も短く切ってしまうし…孤児の私を学校に通わせてもらってる身としては、断れないのよね」
ラピスはため息をつき…ドレスを手にとる。さらにセシリアからウィッグをわたされラピスはひったくるようにうけとると同じ部屋にある別室に移動する。
ニーナはクレアの後ろに逃げ込む…。
しーちゃんは不思議そうに見ている。
「ニーナのも、勿論送られてるからね」
クレアの後ろにいたが空から大量のゴシックドレスが降ってきた。
ニーナは力なく座るとドレスを広げる。
一瞬で着替え終わり立ち上がる。
しーちゃんはニーナのドレス姿が気に入ったらしい。
「わぁ~ニーナ、かわいい」
制服を椅子にかけてセシリアをみると…セシリアは呆れていた。
「ニーナ…ちゃんと着替える、やり直し。リボンも結べない、ボタンもかけられないそんな大人になりないの!」
クレアは面白そうに笑っている。
「お母さんは大変だな~」
「お母さんじゃありません…まったくっ」
セシリアはため息をつく…幸せが逃げたらニーナのせいねっとぼやきクレアに労われている。
ニーナは「は~い」とおとなしくしたがい、服に手をかけたときドアをノックされニーナは返事をする。ドアが開き白が立って硬直していた。
「あっ白様さっきは…」
ニーナの言葉を聞く前に脱兎のごとく逃げだされた。
「まだ…脱いでないのに、こっちが痴漢したみたいじゃん!」
ちょうどラピスが別室からでてきたところだった。
どこからどうみても美少女にしか見えないラピスが赤いドレス姿で登場した。
「さぁ…写真とるわよ」
セシリアの声に二人は力なくしたがった。
ニーナの部屋から逃げた白は顔が真っ赤だった。
「なんなんだ…あれは!」
小さい子と思っていたが…あんなに綺麗だったことに今気づき焦っている姿が城内で見かけられた。