表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法騎士(ナイトウィザード)   作者: 若葉みくら
3/9

夢見楼

授業が終わり四人でオレンジステラに来ていた。レトロな煉瓦造りの店はさほど大きくはないがモダンで柔らかな雰囲気である。

ニーナはテラス席につくと早速オレンジティーとオレンジケーキ、ラピスはサイダーでセシリアはレモンティーとチーズケーキクレアはコーヒーとチョコレートケーキを注文する。

それぞれに注文のメニューがとどくころ階段を神官候補生が上がってくるところだった。


四人は知らぬふりをきめこむとニーナはケーキを食べはじめた。

満面の笑みに場が和むすっかり神官候補生を意識から排除しそれぞれ食べはじめる。


「クッキーとかポッキーが売れ切れなんてショック…」


「オレンジクッキーとオレンジポッキーね、他はちゃんとあるわよストロベリー味も美味しいから食べてみたら?」


「ケーキが残ってたのだから良いであろう?」


「オレンジの皮の香りと苦味がいいんだよ…マーマレード買って帰ろ」


「それは自分で買えよ」


「は~い」


「あら残念苺ジャムをお願いしようと思ったのに」


「そうじゃのう…苺ジャムもよいのう…されどリンゴジャムなどよいのではないか?」


「まぁ…これはクレア姫ご機嫌麗しく」


リュミエールがクレアに挨拶する。


「クレア姫様は何故魔法学園などに入学されたのですか?」


リュミエールの取り巻きがニーナ達に視線を向けると見下したようにクレアに話しかける。


「神官候補生とはそのように偉いものなのか?身分あるものに気安く話しかけるなど無礼もはなはだしい」


「お許しを…このもの達は私と対等に会話を許しているもの達クレア姫の友と同じ立場ですわ」


「リュミエールスフィアそなたの友は我友と同様とは面白い…」


「ごちそうさまでした」


ニーナは手を合わせると立ち上がりクレアを見っめる。

「二人は従姉妹なんだから仲良くしないとダメだよ。私バスの時間あるから先いくね、ラピスごちそうさま。セシリア二人のことよろしくね!」

ラピスとクレアは釈然としない表情をうかべる。


「了解…早くしないとバス間に合わないはよ」


セシリアが手を振るとニーナは店をあとにする。

レンガ作りの街なみを迷いのないあしどりで走りぬける。バス停につき時刻表を確認…時計を見てがっかりする。


「行ったばっかりだ!」


ニーナはバス停横の公園に入っていき、木の影に隠れ人がいないか確認する。

目をつぶり念じる…精霊宮の風景を…。

目を開くと先ほどの公園ではなく、森の中に立っている。

目の前に巨木がそびえる巨木の付け根が門になっており、この巨木こそ精霊宮である。

ニーナはためらいなく精霊宮に入り門に立つ見張りの精霊や顔馴染みの精霊に挨拶しながら長老の部屋に向かう。

木の壁は淡く光り天井は木の実のライトが廊下を明るく照らしている。真っ直ぐ進むと広い空間がひろがり壁づたいに階段が螺旋状に造られている。

精霊達があわただしい…中央にいる水色の髪の精霊が他の精霊に指示をだしていた。


「忙しいそうだね…瑠璃」


「ニーナ、来てたのですか!…今から神官がくると連絡がありましたの」


「……神官がくるの?」


嫌そうにニーナが聞く…瑠璃も嫌そうにうなずく。


「でなおす?」


「いいえ、神官はすぐに追い出します!なので、ニーナは長老様のお部屋へどうぞ」


「わかった…見つからないようにするね!」


瑠璃と別れ長老の部屋へ向かう。

通りの部屋で何か聞こえるので覗いて見ると、壁に掃除機をたてかけお祈りしていた。


「なにしてるの?」


「ニーナ様…これは、あの~人間界では掃除用具を壁にかけてお祈りすると嫌なお客様が帰るって聞いたんです…」


「…そうなの?」


「ちぃ…ちがうんですか?」


精霊があわてて掃除機を壁からどかす。


「私は聞いたことないかな?…ただ嫌なお客様が帰ったとき玄関に塩をまくのは聞いたことあるかな」


「塩ですね…解りました!!」


掃除機を抱え走りだした…きっと塩をもらいに行ったのだろう…


(嫌われてるな…神官)


気をとりなおし先を進む。

ニーナは長老の部屋に入ると白い髭の魔法使いのような老人が出迎えてくれる。


「夢見楼こんにちは」


「おぉ~来たか」


「今日も、修行お願いします!あと…聞きたいことがあるんです」


夢見楼はニーナを別の奥の部屋へ通し椅子に座らせる。


「聞きたいこととはなんじゃ?」


夢見楼は右手のひらをニーナと自身の中央にかざす…ふわりと不思議な光がうかびあがる…緑がかったり黒みをおびたり赤に混じったりその光はゆらゆら揺らめき空にどどまる。






ニーナは不思議な空間にいた…ここは夢の中。夢見楼は夢を操る精霊であり…夢見楼の夢は特殊で現実と同じ効果があるのだ。


「では…始めようかのう」


空に水が現れる。水は宇宙に浮かぶように固まって形を変えて浮かんでいる。…そしてニーナの前にはガラスのコップ…


「はい!」


ニーナは左手を水に右手をコップに向け集中する。からのコップに水が満ちる。そしてまた空にし、また満たす…いくどか繰り返した後ニーナの腕か力なく下がる。


「夢見楼…私のこの力変なのかな?魔法じゃない力で物や自分を移動させるのは…」


「わしは、同じ力を持つものと会ったことがある…とても美しい娘じゃった」


「でも…私のこの力がなかったら、白雪があんなことにならなかった」


「今日はずいぶん不安定じゃなぁ…良いかっ、罪悪感や後悔は己の目を曇らせる。魔法はイメージと魔力でうみだすもの…どんな優れた者でもその心に迷いがあれば失敗する」


ニーナを見つめる眼差しは見定めるものだった。


「諦めるかのぅ?」


ニーナは首をふる…


「絶対…あきらめない!!」


夢見楼はうなずき微笑んだ。


(夢見楼…おじいちゃんに似てるな~。…よし!!)


ニーナは再び水の移動を繰り返す。10分ほどたった頃。

ふと…気をとられる


「あっ、…」


左手にあった水が全部コップに移ってあふれる。

ニーナはあちゃ~っと膝を抱えてうずくまる。


「夢見楼…神官が来たみたい、魂の回りが金色だから間違いない」


「来たかのぅ?…しかし、便利な目じゃのぅ。今どこにいるかわかるかの?」


「精霊の繭の部屋です…あっ…あれ!」


ニーナは驚く…


「気づいたか…あれは、神の欠片をもつ精霊じゃ…」


「白雪と同じ魂…」


目をくぎづけにして見つめる。


「ほしいかのぅ?」


聞かれてニーナは夢見楼を見上げる…そして首をふる。


「幼すぎます。私じゃ…消滅させちゃう」


夢見楼はなごりおしそうに見つめるニーナの頭を撫でる…


「わしはちと神官に会ってくるから続けていなさい」


「はい」


夢見楼が消えた後ニーナは先ほどの話しを思いだしていた。

魔力とイメージ…コップに水を…満たす。

コップから水があふれだし空間を満たす。


(やっぱり、駄目かっ!…凍れ)


水が一瞬で凍る…ニーナは、湖を思いうかべる…精霊湖へ…移動


空間から氷が消えた。そして訓練ようの水も…

ニーナはしゃがみこむ…






夢見楼は空間からでると神官の待っ部屋に入る。

金の縁取りの白い衣替えをまとった二人の男が一人は椅子にもう一人は椅子の後ろに控えている。その男の手には台座に赤クッションそしてその上に繭が乗せてある。


「長老…こちらの繭を譲り受けよう」


そう言うと男は水晶をとりだし繭え近づける…水晶は金色に輝きだした。


「三年後にせまった…儀式はこの精霊にする。いぞんあるまい」


たいじしていた瑠璃が発言しようとしたとき…魔力を感知する。長老はうなずき椅子に座る。

神官はまったく気づかぬ様子でだされた紅茶を飲んでいる。

だが、その前で繭から精霊が生まれそして部屋を出ていくのを…

おそらく魔力にひかれたのだ…


「この大きさなら後一年で生まれるだろう…まったく前回の精霊は賊に奪われどうなることかと思ったが…」


「…どうぞ(空の繭を)お持ちください」


瑠璃はにこやかに微笑み…神官は怪訝そうにする。


「それでは…失礼する。では長老」


と言って男たちは部屋を出ていった。

男たちと入れ違いに精霊があわただしく入ってくる。


「精霊湖に巨大な氷が降って参りました。」


「心配ない…あれはちと水をだしすぎただけじゃ、ただの氷じゃよ」


ホッホッホッ…っと笑う長老に精霊は目を白黒させてたちつくす。






ニーナが顔をあげると神官が出ていくのを確認する…しかし自分のそばに金色の魂がいる…?

目をこするが確かにいる。そして、右手の小指に痛みがはしる!!

空間が歪み幼い三歳くらいの子供があらわれた。額にフェリーストーンそして血がついている。


「かっかり…仮契約しちゃった!!」


額の石が消える。ニーナはあわてて袖口でふこうとするがその前に消えてしまう…

小さな精霊は淡く輝きニーナに「ちゅうせいちかう」と宣言される。


「まなは…」


あわてて精霊の口をふさぐ!!


「あなたは…紫乃、しーちゃんだよ!」


「しーちゃん?」


精霊は自分をさして…きょとんとする。ニーナうなずく。


「しーちゃん、しーちゃん!」


気に入ったみたいでニーナは胸を撫で下ろす。

危ない…契約者になるとこだった…


「なまえ…なに?」


のぞきこむ幼い精霊にニーナはみもだえる…かわいい!


「私はニーナ・クライス。ニーナってよんでねぇ」


「ニーナ…ニーナ、ニーナ、しーちゃんとニーナ!」


はしゃぐ紫乃にニーナは笑っていた。


「ニーナ…ここでなにしてるの?とじこめられた?」


空間が変なことに気づいて紫乃は聞いてきた。


「違うよ…練習してるの。水をコップに移動させるの」


「コップ?」


ニーナは土魔法でコップを作る。鉱物や植物は土魔法で作れるのだ。透明なコップを紫乃は見つめる。


「しーちゃんおてつだいする!」


そう言うと水がわきあがり、コップがたくさんおかれた。


(なんか…コップが100個ぐらいある)


でもキラキラなしーちゃんのまなざしにニーナは覚悟をきめる。

集中してすべてのコップに水を満たす。

ほっとするニーナをよそにしーちゃんはすごい喜んでいる。

ニーナは喜んでんでくれるならと何度も水の移動を繰り返した。

しーちゃんは「もっとお!」追加でコップをだしてくる…


「先生…スパルタすぎます」


ニーナは思わず呟いた。しーちゃんはスパルタが気に入ったらしく「スパ~スパ」と喜んでいる。


「これは…すごいのぅ!」


夢見楼があらわれ1000個ほどの水の入ったコップをみやる。


「夢見楼…この子と仮契約しちゃった」


あわてて夢見楼にすがるニーナの肩をトントン叩く。


「これなら羽化の繭の移動もかのうじゃ」


「……本当ですか?」


うなずく夢見楼。思わずニーナはしーちゃんを抱きしめ。


「ありがと…しーちゃん!ありがとっ!」


「では、ここからでようかのぅ」


夢見楼がそう言うと視界が変わる。

ニーナはゆっくりと目をさます…膝にはしーちゃんが座っていた。しーちゃんは眠っているのでそのまま椅子に寝せて、夢見楼と羽化の部屋へ移動する。精霊が新たに強くなるために繭になることを羽化…そして、この部屋は強くなろうとする精霊の繭がいくつも並んでいた。

その中で…魂のない空の繭がおいてあった。

ニーナはそっと繭を抱きしる…そして夢見楼を見つめる。うなずくのを確認してから、繭に集中する。繭と自分の内にいる精霊に…。

繭が一瞬で消える。

ニーナは自分の胸に手をあてる。





ニーナと夢見楼が部屋に戻ると大騒ぎになっている…。起きたしーちゃんがニーナがいないことに気づいて暴れたのだ。風や水、火まで…そしてさっき教えたコップが今瑠璃に向かって飛んでいく。とっさにニーナは瑠璃の前に立った。コップはニーナにぶつかりわれ、驚いた紫乃が魔法をとめる…

ニーナの顔から血が流れる…

紫乃は泣き出した、ニーナは紫乃を抱きしめる。


「ごめんね…おいてっちやって、でもね、同じ仲間に魔法で怪我させるのは…ダメ!」


紫乃は泣きながらうなずく…


「もうしない…いたい?ごめんなさい…」


「大丈夫だよ!見てて…」


紫乃はニーナを見つめる。


「癒しの光…」


ニーナの呟きで蒼い光が部屋をみたす…光が消えるると、ニーナの傷はきれい治っていた。


「あいかわらず…美しいですわ!あの子供がうらやましい!」


「…これ、心の声がもれとるぞ!」


瑠璃の呟きに長老、夢見楼がたしなめる。あらっと口をおさえる瑠璃をホッホッホッと夢見楼は笑ってみやる。

紫乃がおちついたところで、ニーナは火山の精霊について訪ねた。


「いいんじゃないかの…」


「いいんですか!?…でも、私魔物の森に入って大丈夫ですか?」


「ふむ…瞬間移動するんじゃからの、とくに結界を破るわけでもなし…問題なかろう」


隣に立つ瑠璃に同意を求める。


「はい、ニーナは気にしないでマリン…じゃなくフェニックスのもとに行かれませ」


「よいか!…ニーナ、これから辛いことがあるやも知れん。じゃが…決して諦めるでないぞ!」


ニーナは疑問に思いながらも…うなずき紫乃とともに寮へ戻った。


「いよいよですね…」


「そうじゃの…」


瑠璃は思わず追いかけようとするが…立ち止まる。


「信じるのじゃ…」


そう言うと夢見楼は瑠璃の肩を叩いた。

外はもう日がくれる…夜が森を隠す。















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ