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武田信玄、病とその無念


 朝起きたらカメがいる。もうね、人間って結構適応力あるんですよね。朝ご飯食べて二人で歯を磨いて、顔を洗って。カメに歯があるとかいろいろ突っ込み所はあるけれど、昔見たアニメのケロ〇人。あんなようなものだと思う事にしました。


「さ、仕事を始めるわよ」


 かぐやさんはそう言うとすっと短い手を伸ばす。その空間に穴が開いて、そこから小さな端末を取り出した。えーっ! 何それ! マジすげえ!


「気になる?」


「そりゃあもちろんですよ」


「ま、わかりやすく言えばびっくりメカね」


 なんだそれ、一周回って逆にわかんねえよ。つか、女の人ってこれだから困る。ガンダ〇もなんでもみんなロボットの一言で片づけるし。


「なによ、その顔。わかったわよ、もう少し説明してあげる。これはね*#%&の定理を用いた@&%の法則の応用なの。次元&$#を@*して+”#する訳ね。わかる?」


「いや、全然。その*#%&とか言葉自体が判らないんですけど」


「はぁ、そうなるわよね。ここにはない概念だもの。いい? 例えばあんたが平安時代に行って、そこの人に、僕、これからコンビニに行って、プリペイドカード買って、スマホゲーで十連ガチャ回すんだーって言ったらこんな感じに聞こえるわよ。概念にないから言葉が判らない。発音も聞き取れないの」


「はあ、なるほど」


「要は、これは技術、魔法とかじゃないのよ。あんたが知ってればいいのはそれだけ。だからびっくりメカ。わかりやすいでしょ?」


「ははっ、そうですね。で、そのびっくりメカで何を?」


「仕事の依頼人を呼ぶのよ、コーヒーでも準備しておいて、一応お客さんだし」


「あ、そうですね」


 僕がコーヒーの準備に立つと、かぐやさんは異次元から取り出した端末をカチャカチャっと操った。SFアニメのように空中に画面が開き、そこをなぞって読んでいった。


「ふーん、300ポイントか。しけてるわね。ま、最初の仕事だし、それでいいか」


「ポイントって何?」


「知らなくていいのよ、あんたは。説明してもわからないし」


「あ、そうですか」


「さ、呼ぶわよ。失礼のないようにね」


「あ、そうですね」


 ムイーンと空間が開き、そこから頭の禿げあがった中年の男が出てきた。ちょい悪系を気取っているのかサングラスにアロハシャツ、そして白の丈の短いズボンをはいた、太った人だった。


「あんたが依頼人ね」


「うむ、その方らがわが役に立ちたい、そう申す者たちか?」


「何気取ってんのよ、高々300ポイントしか出せないくせに。あんたみたいなクズは本当なら相手にしないとこだけど、仕方ないからあってやってんのよ」


「カメの分際でえらそうに! わしを誰と心得おる!」


「しらないわよ、きったないオヤジって事はわかるけど。それにあたしはカメじゃないのよ、かぐやちゃんってかわいい名前があるの」


「無礼な! 我が名は武田信玄! 従三位にして大僧正である! あっ、そっちの彼は知ってるよね、おじさんゲームとかでも超有名だし」


「あ、ええ、まあ」


「どうでもいいわよ、そんな事。あんた、頼みに来たクセに生意気なのよ。従三位だか何だか知らないけど、あたしの彼は最低でも右大臣なんだけど?」


「あ、いや、それ言われるとちょっと」


「とにかくあんたは態度が悪いわ。少しお仕置きが必要ね」


 そう言ってかぐやさんが取り出したのはいわゆるピコピコハンマー。


「お仕置きってそれ? あはは、いいよ、おじさんそれで反省しちゃうから」


 かぐやさんはそのピコピコハンマーをフルスイング。パプっと音がして柔らかいハンマーがへこんだ。その瞬間ぴりっと電気のようなものが信玄さんの体を駆け巡る。


「うぎゃぁぁぁぁ!」


 痛みにのたうち回る信玄さん。それを見て満足したのかかぐやさんはピコピコハンマーを異次元にしまい込む。


「あれはね、人の痛覚のみを刺激する特殊なハンマーなの。怪我したりしない代わりに 地獄の苦しみを味わうわ。こいつみたいに」


 さすがにのたうち回る信玄さんを見てられなくて手を差し伸べると、信玄さんは泣きながら「ありがとう」と言った。



「で、依頼はこれ?」


 かぐやさんは空中に開いた銅像が映し出されたモニターを俺たちの前につっと指で押して移動させた。


「これって、川中島の合戦ですよね。上杉謙信との一騎打ちの」


「そうよ」


「別に何も問題ないじゃないですか。こう、軍扇でがしっと刀を受け止めて。カッコいいですよね」


「あのね、たっちゃん。歴史なんてのは些細な事で変わっちゃうのよ」


「そうなんですか?」


 愛しのあの子ではなく、カメが僕をたっちゃんと呼んでくれる。きれいな声だし悪い気はしないけどさぁ。


「大体が歴史なんてうそっぱちだもの。こいつみたいな勝った奴が都合のいいように書き記したのが歴史、だって、よく考えてみなさいな。どいつもこいつも歴史の偉人ってのは人格者で公正で、民に慕われて。おっかしいと思わない?」


「まあ、それは確かに」


「政治なんてどんなにうまくやっても文句言うやつはいるの。今の総理だってそうでしょ? こいつらがね、偉人だなんだって言われてんのは都合の悪い事を全部握りつぶしたからよ。それでもこいつみたいなクズは悪評が残っちゃうけど」


「ひどい! そんな言い方しなくても!」


「まあ、落ち着いて、ほら、コーヒーでも飲んでくださいよ。かぐやさんも」


「まっずいコーヒーねぇ。インスタントなの?」


 むっかーっとくるがここは我慢。


「うちは貧乏なんです! そうだ、かぐやさん、うちにも竹取の翁みたいにお金くださいよ! 仕事するわけだし」


「ばっかねえ。それであたしは捕まったのよ? そんな事できるはずないじゃない。でも、貧乏は困るわね。美味しいもの食べたいし」


「あの、その話はあとでにしてもらっていい? おじさんの話、聞いてほしいなぁ」


「あ、すみません、つい。この駄ガメが図々しいもんで」


「あたしは駄ガメじゃないわよ! かぐやちゃん!」


「あんたねえ! いくら僕が竹取の翁の子孫だからって、仕事はしろ? 金は出さない? おかしいだろ! そのうえうまいもんが食いたいだぁ? んなもんこっちだって食ってねーんだよ!」


「あたしはレディなのよ! レディにはふさわしい生活ってものがあるの! もう、そんなんだから童貞なのよ。やーねぇ」


「ど、童貞は関係ねえだろ! あんたねえ、それは差別用語ですよ! ヘイトですよ! 訴えますから!」


「はいはい、わかったわよ。うっさいわね。お金の事はあたしが何とかするわ。ついでにあんたの童貞もね。あたしに欲情されても困るもの」


「しねーよ! どこの世界にカメに欲情する男子高校生がいるんだよ!」


「あたしはカメじゃないの! かぐやちゃん!」


「えっと、話全く進まないんだけど、そろそろいい?」


「あ、すみません」


「一応聞いてあげるわよ。仕方ないから。早くしなさい、クズ」


「ごめん、おじさん、泣いていいかな?」


 目に涙を浮かべる信玄さんを慰めて、僕たちはおとなしく話を聞いた。



「あのね、かぐやちゃんはわかるかもしれないけど、日本の中世っていうのはいろいろ厳しいところなのよ」


「そうね、床は硬いし、こーんなふっかふかなソファなんかなかったもの」


 そう言いながらかぐやさんは、ポンポンとソファの上で飛びはねた。


「ま、これは安物だけどね」


「はぁ? よくそういう事言えるな!」


「ほらほら、喧嘩しないの。でね、かぐやちゃんの言うように、座るところは硬い床。畳なんか贅沢品よ? みーんな、毛皮の尻当てとか、縄で作った円座とかに座ってお尻を守ってた」


「そうよね。だから日本人は正座するのよ。直に座るとお尻が冷えちゃうもの」


「女の人はね、けど、おじさんみたいな武将ともなるとそうもいかないの。堂々と胡坐掻いて座ってないと舐められちゃうでしょ?」


「はあ、そうなんですか」


「それにね、お尻だって今みたいに柔らかい紙で拭けるわけじゃなかった。藁だもの藁。そりゃあね、お尻だって怒りますよ、あーた」


「はあ、大変ですね」


「そう、お尻にとってはまさに冬の時代。そうなるとお尻だって暴れるわけですよ」


「暴れるって? よく意味が」


「痔よ、痔、こいつは痔もちだったって訳」


「うん、でも、おじさんだけじゃないよ? きっとみんな痔もちだったはず。それでね、さっきの川中島」


「あ、はい、そこでつながる訳ですか?」


「うん、実はね、実際のあの場面、あんなカッコいい感じじゃなくてさ」


「えっ? どういうことですか?」


「謙信さんがこう、ダダって馬でおじさんの本陣に乗り込んできてさ、おじさん緊張でぎゅっとお尻の穴を閉じたの。そしたら痔が爆発してうっと立ち上がった訳よ。片手でお尻を押さえ、こっちの左手は思わず前に突き出しちゃって。そしたらたまたま持ってた軍扇でカシっと刀を防いじゃって」


「はい?」


「あの銅像みたいにどっしり構えてたわけじゃなくて実際はこう!」


 信玄さんは内股で立ち上がり、片手で尻を押さえ、左手を突き出して見せた。


「まあ、たまたまっていうか、そんな感じだったの」


 知りたくなかった歴史の真実がここに。


「その時のさ、謙信さんの憐れむような目。あれが忘れられなくてね。あの人、おじさんの事生涯のライバル、みたいに思っててくれたのに。それを失望させた? みたいな。なんかこう、悪くて」


「ま、それもあるけど問題はこれね」


 かぐやさんがそう言って一枚の紙をピラピラと取り出した。


「これはね、その時こいつの側にいた馬廻りの武者が書き残した日記」


「へえ、なんて書いてあるんです?」


「信玄公、謙信公と対峙するや、おもむろに内股にて立ち上がりて候。右手にて尻を押さえ、左手に持った軍扇にて謙信公の刀を防ぎたてまつり候、まこと此度の事は信玄公の患った痔の働きこそ天晴。病も時には患って置くべき也や」


「その人、明らかに半笑いでその日記書いてますよね」


「そうでしょうね。で、問題はこの日記が発見されたらどうなるかって事よ」


 かぐやさんは端末を操り、その場合の未来予想図をモニターに映し出した。そこには尻を押さえながら謙信公に立ち向かう信玄公の銅像が。ひゅっと画面を動かすと次に現れたのは甲府にある武田神社。そこには痔の神様として信玄公がまつられ、痔ろう大明神と書かれた幟旗が掲げられていた。


「うわっ、ナニコレ」


「ね、ひどいでしょ? おじさんの功績はぜーんぶ痔のおかげ。おじさんは痔の神様。もうね、たまらないの!」


「つまりこうならないようにするのが今回の仕事って訳よ」


「で、具体的には?」


「そうねえ、この川中島で痔が爆発しないよう、薬でも塗ればいいんじゃない? 今の時代の薬なら効き目も早いし」


「あ、いいね、それ、かぐやちゃん!」


「伊達に不老不死じゃないわよ。任せなさい。で、たっちゃんが川中島に行くからあんたは案内役をしなさい」


「えっ? 信玄さんも行くんですか?」


「そりゃそうよ。当事者だもの。それにあたしはあーんなど田舎になんか行きたくないのよ。って事で作戦開始!」


「「おー!」」


 すっごく腑に落ちなかったがともかく信玄さんはノリノリだ。ともかくも小さくなったかぐやさんを胸ポケットに入れて、信玄さんと一緒に必要なものを買いだしに出かけた。


 まずは当然ドラッグストア。痔の薬って案外高くてややためらったが、必要経費、そう思って買い込んだ。そしてそのあとはホームセンター。そこで水をろ過できる水筒を購入。約五千円もした。


「ねえ、かぐやさん、こんなもの、何に使うんです?」


「生水に当たったら怖いじゃない。なんたってど田舎に行くのよ?」


「けど、今の日本で水に当たるとか」


「田舎は井戸水だったりするのよ。あとはあたしのごはんとあんたたちの食い物ね」


 そう言ってかぐやさんはカップラーメンとブロック状の栄養食品を買わせた。まあ、確かに川中島と言えば田舎っぽい感じがするけど、こんなに準備が必要なのかな?


「あら、たっちゃんじゃないのさ。お買い物?」


「あ、はい」


 バイト先のスーパーで買い物していると、いつも見切り品をくれる松岡さんが声をかけてきた。


「で、そっちの人は?」


 いぶけしげに信玄さんをガン見。そうだよね、完全に不審人物だもの。


「あ、私は達也の叔父で、竹原晴信と。いつも達也がお世話になってます」


「へえ、たっちゃんの叔父さん。あんた、高校生のたっちゃんに一人暮らしなんかさせて。ま、竹原さんはろくでなしだけどさ。そう言うときこそ親族が面倒見るもんだろ? あたしもね、よその家の事に口出しなんかしたくないけど」


「すみません、兄がほんとダメな奴で。そう思って私が、そういうことですので、一つよろしくお願いしますよ」


「そう、ならいいんだよ。ほら、キャベツ、持っていきな。みんなには内緒だよ?」


 松岡さんはそう言って俺にキャベツを持たせると、ちょっと顔を赤らめて走っていった。なにこれ、新たな恋のはじまり?



「てか、信玄さん、いつの間に叔父になったんです?」


「ああいうときは機転が利かないとね、ほら、おじさん、名将だし。だからその信玄さんって他人行儀もやめやめ、おじさんの事は晴さん、そう呼んでほしいな」


「他人行儀って、完全に他人ですよね」


「そんなこと言われたらおじさん悲しい!」


「まあいいじゃないの、部屋は開いてるんだし。そんな事より仕事よ! 急いで帰るわよ」


 急いで帰ったと思ったら、カメはチョコレート菓子を袋から取り出して、ソファに寝っ転がって食べ始めた。無論、サイズも大きくなっている。


「あー。やっぱ甘いものはいいわよねぇ。なんていうか、乙女心を刺激する味っていうの?」


「あの、急がなきゃまずい的なこと言ってましたよね」


「あ、そうね、あんたらを送り出さないと。えっと、戦場に向かうんだし、鎧くらいは必要よね」


「はっ? 今戦場って言いました?」


「そうよ、あんたは1561年の川中島に行って、武田信玄の尻に薬を塗ってくればいいの」


「いやいや、いろいろ言いたいことはあるけど、それってハードル高くないですか? 晴さんって総大将ですよね? 何万って兵に囲まれてますよね!」


「行けば何とかなるわよ。あたしがサポートするのよ? 下手な事になるわけないじゃない」


「まあ、それならいいですけど」


「とにかく鎧を選ばなきゃね」


 そう言ってかぐやさんは鎧の画像を次々と画面に映し出した。


「やっだー、こーんなへんな兜、誰がかぶってたのよ。みて、サザエよサザエ」


「本当ですね、そっちのも変わってる。頭の上に握り拳ついてますよ」


「ある意味おしゃれなのかもしれないわね。けど見て、たっちゃん。こいつの兜。なんか毛がいっぱい生えてて気持ち悪い! 絶対この毛の中にノミとかダニとか湧いてるわよ」


 かぐやさんがいかにも気持ち悪いと言った顔で表示したのは信玄公の諏訪法性の兜。晴さんはちょっと涙目だった。


「あのね、この兜は諏訪法性の兜、諏訪神社のありがたーいお力が込められたすんごいものなの。作ったのだってトップデザイナーの明珍さんよ? それにその毛は唐頭って言って、すっごく貴重なものだったの!」


「ふーん、どうでもいいわ」


 晴さんは完全に泣いた。


「で、たっちゃん、こんなのはどうかしら」


「それ、すっごく目立ちません? 任務的に地味目の奴の方が」


「けどあんたはうちの一族なのよ? ちゃんとカッコいいの着けてもらわなきゃ」


 結局あれこれ揉めて伊達政宗モデルの鎧に決まった。


「ま、ちょっと地味だけど、この三日月はカッコいいわよね。月に代わってお仕置きよ! みたいな感じで良いと思わない? あたし、月の人だし」


「ああ、もういいです、それで」


 そんなやり取りしている間、晴さんは遠い目をして外を見ていた。


「それじゃ、このデザインを元に生成するわよ」


「生成?」


「そうよ、たっちゃんが危ない目に合わないように超硬セラミックで作るの。矢も鉄砲も槍も刀も通らないし、軽いのよ」


 かぐやさんは異次元から箱のような大きな機械を取り出し、それに端末からデーターを送った。その箱の透明なケースの中で3Dプリンターのように鎧が出来ていく。


「うわ、すごいですね」


「なんでも作れるのよ。この鎧に通信デバイスも仕込んだから連絡も取れるし、いろいろ便利に作っておいたわ」


 しばらくするとチーンと電子レンジのような音がして、伊達政宗モデルの鎧が出来上がった。


「さ、できたわ、けど、やっぱり地味ね」


「いやいやいや、十分派手ですから」


「この、のっぺりとしたお腹が気に入らないのよねぇ。そうだ、お花でも描いときましょうか!」


「やめて!」


「えへ、あたしって結構絵心あるのよねえ。こっちには猫ちゃんかしら」


「やめろー!」


 僕の叫びもむなしく、鎧にはピンクのチューリップと猫の絵が。しかも無駄に上手いんだな、これが。


「ほら、可愛いでしょ?」


「確かにかわいいけど! せめて描くなら桜の花だろ! なんでチューリップ? おかしいですよね!」


「もう、いいじゃないの細かい事は」


「こまかくねーよ!」


「はいはい、とにかくこれ着て。時間ないんだから。向こうで時間かかると月曜までに帰ってこれないわよ?」


「えっ?」


「向こうで過ごした時間はそのままこっちでも経過するの。じゃないとあんただけどんどん年取っちゃうじゃない」


「あ、よくわからないけどそんな感じかも」


 鎧は実に便利にできていて、結合部はぱちんぱちんと止めるホック止め。袴もジャージみたいな感じだし、兜もバイクのヘルメットみたいなベルトで止めた。

 しかもすっごく軽いのだ。兜に付いた三日月には超小型カメラが仕込まれている。かぐやさんはその映像を元に僕たちに指示をくれるらしい。


 適当な刀を生成し、それを僕の腰にひもで括り付けた。そして袋に水筒と食べ物、それにポケットテッシュを入れてくれた。


「このテッシュは時間経過で消えるのよ。お尻拭いたり、鼻かんだりしてその辺に捨てても残らないすぐれものよ。変なものおいてきてあとで見つかると大変だし」


「いろいろあるんですね」


「あたしはね、これでも時間管理局の長でもあるの。歴史警察みたいなもんね。歴史を変えられるといろいろ面倒だから未然に防いでいるって訳。ほら、最近はライトノベルだかなんだかの影響でトラックにひかれて転生したりする奴もいるのよ。そう言うのを排除するのもあたしの役目って訳。できる女は辛いわぁ」


「はは、そうなんですか」


「ま、準備はこれでいいわ。そこのクズ! いつまでもいじけてないで行ってきなさい。移動するのは1561年9月9日よ。10日が例の一騎打ち。しっかりやりなさい!」


 かぐやさんは空間にゲートを開き、そこに僕と晴さんを押し込んだ。急に怖くなって抵抗したがカメは案外力が強かったのだ。


「うわぁぁぁ!」と奈落の底に落ちていく感じがして気が付いたら森の中。そこから見えるのは武田の軍勢だった。


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