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異世界でアトリエ始めます。  作者: 小雪
第二章:工房編
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クリームシチュー

夢のマイホーム男なら誰もが憧れる物だ、最近では賃貸派も多いらしいが。

俺はマンションにしか住んだ事がないので二階建ての家に憧れがある。外観も西洋

風の建物で煉瓦レンガが使われている。庭や工房など手を加えたい部分も多くて夢が膨らむな。まぁ兎も角、受け取り初日は嬉しくて仕方がなかった!だが色々

と問題も出てくる訳で……。


【問題その①】

エレナさんは異常な程朝が弱い、起きれば寝ぼけて壁に激突し階段を踏み外し廊下で力尽きて寝ている時もある。これは俺の個人的な事だがエレナさんのネグリジェ(寝巻)は過激すぎる。ベビードールの様な服で布地が透けていてエレナさんの豊満な胸などが露わになり思わずドキッとしてしまう。


因みにサヤの格好は半袖の薄い絹の服とぴったりとした短パン(スパッツ)を着ている。サヤらしい機能性重視の服だ。


【問題その②】

お風呂が五右衛門風呂のような鉄釜でかなり狭くそして少し錆びてる。この世界では普通は布で体を拭くか水浴び程度で、この街の様に温泉があり入浴する人は稀なのだから贅沢な悩みだ。しかし日本人としてはお風呂にちゃんと浸かりたいのだ。

物件を見学した時に見ておけと言われそうだが他の事に気を取られて忘れていたのだ結局商会ギルドに紹介して貰った職人さんに金貨15枚で総檜風呂に改造してもらう事になった。


【問題その③】

家事の分担だがサヤは料理も掃除も苦手なのだ、仕方ないので料理は俺とエレナさんが担当して掃除は教えながら最終的には一人で出来るようにしよう。既に購入した木の食器を在る意味器用に割っている光景を見る限りでは当分無理だろうが。





現在足りない日用品などを購入する為に買い物に行こうとしているのだが、サヤとエレナさんどっちと行くのかで揉めております。全員で行けば良いと思うでしょうがその提案を二人が却下するのです、体は女でも中身は男の俺では女性の口論を止める術などありません、二人の決着が付くのを黙ってみているしかないのです。


「あたしが行くって言ってるでしょうが」

「何でサヤさんが行く事になってるんですの」

「あたしの方が力もあるし荷物持ちだって出来るんだから」

「私だって荷物を持つぐらい出来ますわ、それに色々と意見アドバイスをして差し上げられますわ。」


二人の言い合いは続き、結局最初の提案通りに全員で出かける事になった。後日一人ずつ遊びに行く約束をさせられる事になるが。俺は如何したらもっと仲良くなれるのか考えるが良い案が思い付かず溜息を吐くのだった。





本日の夕飯の担当は俺がする事になり現在市場で食材を物色中なのだ。

以前飲食街の屋台で買い物をしたがこの市場はその隣の区画にある。魚やら肉やら色々あり悩むが、俺は料理が得意な訳ではないが食べられない物にはならないと思う。しかしよく分からない食材が多いな、今まで宿で食事をしてたから元の食材を意識してなかった。

売られてる野菜にはマンドラゴラの様な人っぽい形の根の物や何かの目玉っぽい物まである。知らない食材では料理の仕方が分からないし途方に暮れていると最近まで泊っていた宿の女の子メルを発見。


「メルこんな所で如何したの?」

「え、あ、アスナ。私は宿の食材探し、最近安くて良い食材がなくてね。」

「へ~、此処で買ってたんだね何処かの商人から纏め買いしてると思ってた。」

「知り合いの商人から纏め買いはしてるけどなるべく新鮮な物を選びたいからね。」


そうだよなこの世界には冷蔵庫なんて無い訳だし魔法の氷を使えば簡易の物が出来そうだけど。


「アスナは料理とかするんだね」

「出来なそうに見える?」

「う~ん、アスナがってゆうか冒険者全般が料理なんて碌に出来なさそうな印象イメージ。」

「確かにそうだよね、今も食材が分からなくて困ってたんだよね。」

「なら一緒に見て回らない?案内と解説をしてあげる。」


メルの解説は分かり易かった、何せ作りたい料理を聞いて其処に使う食材の実物を見ながら詳しく教えてくれるんだから。食材や料理の名前で言われても分からないしな。


「あああああ!!」

「何!?如何したのメル」

「見て見てアスナ、ホーンナイトベアのお肉だ!」

「ホーンナイトベア?」

「アスナ知らないの!?冒険者にとってホーンナイトベアを倒す事は称号ステータスなんだよ。」

「強いんだ?」

「確かに強いのもあるけど肝心なのは素材の値段だよ、毛皮も角も牙も高く売れるけど一番の目玉がこのお肉。」


メルがその後も蘊蓄うんちくを披露してるが俺はお肉に目を奪われていた。テレビで見ていた料理番組に出てきそうな霜降りのお肉、すき焼きとか出来ないかな。

後でエレナさんに聞いたのだがホーンナイトベアを一体でお肉が500㎏取れる、アイテムボックスを使うと約半分の300㎏になる、残りは何処に行くのか疑問だが仕様なんだろうな。今回の市場では1㎏銀貨5枚で売られていて商会ギルドでの買い取りは銀貨4枚、500㎏で売れれば白金貨4枚になる、凄い高いね。






厨房の器具は精神力(MP)を使って動くなかなか便利な物だ。火を使いたい場合は火の魔法を器具に送り込めばガスレンジの様に使う事が出来る。欠点は精神力(MP)を使うので少し疲れる事だ。因みにサヤは料理が苦手以前にこの器具を使えない、以前の家主は魔法も使えたのかな。では早速調理に取り掛かります。


買ってきた貝、イカ、海老、後はメルに教わったスープによく使う野菜と牛乳に香辛料を入れて煮込めば『海鮮クリームシチュー』の出来上がりだ。


「アスナ何作ってるの?」

「魚貝類と野菜、牛乳を加えた煮込み料理だよ。」

「う~ん、美味しそうな匂いだね♪」

「行儀が悪いわよサヤさん。」

「なによ~。」

「二人とも喧嘩はなしだよ、食事は楽しく取らないとね」


二人はシチューを気にいった様だ、アイテムの作成もこれからどんどんやりたいけど料理を凝るのも面白そうだな、俺は美味しそうに食べる二人の顔を眺めながら顔が綻んだ。


翌朝の朝食は大きな目玉焼きだ。一般的に食べる卵は鶏の卵の3倍くらい大きい、後は野菜とパンで終わり、俺としてはお米が欲しいが仕方ない。テーブルに並べ終わると二人が下りてくる、サヤは元気一杯なのだがエレナさんは半分寝ている、何とかテーブルに着かせて朝食を頂く。


エレナさんの格好は相変わらずの卑猥セクシーネグリジェ(寝巻)だ、チラチラと見ているとサヤに鬼の様な顔で睨まれた、仕方ないんだよ俺だって男なんだから……一応。






それからレジーナさんやアレックス支部長達に工房の購入の件を話してギルドの依頼書の中から薬草採取の依頼を受けて以前試験でシルバーウルフを倒した森に向かう。


「何の薬草を探すんですの?」

「以前見つけた『デザート』とゆう名前の鎮静作用のある薬草です。出来れば他の薬草も採取したいと思います。」

「分かりましたわ、では手分けして探しましょうか。」

「そうだね、あまり離れ過ぎないように気を付けながら探そう。」

「りょうか~い♪」


サヤが楽しそうに返事をした。今更だけど二人ともどれが薬草なのか解るのかな?俺は首を傾げるが何も言わず黙々と薬草探しをする二人を見て問題ないのだろうと自分も薬草を探した。


数時間森の中を歩き回り数種類の薬草が取れた、その間何度か魔物と出くわしたがあの時の魔族に比べれば弱過ぎると全て一振りで倒した。

現在の調合レベルと今回の採取で作れそうなのは『傷薬』『酔い覚ましの薬』『ポーション』『毒消しの薬』だ。二人が採ってきた草は鑑定眼で識別した結果、大抵が唯の雑草で薬草は2割程度だ。今後の為にも指摘した方が良いかなと思うが二人の達成感溢れる顔に言葉を飲み込んだ。



帰りがけにギルドで依頼の報告をして家に帰る、ギルドを出る時何人かに気さくに声を掛けられた。少しは冒険者として拍が付いたのかとアスナは嬉しくなったが、実際は魔族討伐時と違い嬉々として薬草を受付の女性に渡して楽しそうに話す姿が可愛らしい妹の様で微笑ましく声を掛けたのだ。





俺は家に帰ると早速工房に閉じ籠りアイテムの作成を始めた。調合の道具には乳鉢や薬研やげんの様な物などがあったが俺は魔法で調合をする事にした。だって調合レベルが上がった時に何となく作りかたは理解したがやっぱり不安だしね。材料を置いて魔法を使うと手元が光り輝き、輝きが収まると傷薬が出来ていた。手持ちの薬草で作れるだけアイテムを作成してアイテムボックスに収納する、この程度のアイテムなら精神力(MP)もそこまで消費しないようで安心した。



「ほいっとっ!」

「はぁぁっ!」

その後サヤと庭で鍛錬をするがサヤの動きは素早くて俺の木剣は空を斬る。そして俺の隙をついて攻撃を仕掛けてくるが魔法で牽制して距離を取り振り出しに戻る。


「ふぅ、良い汗かいたね~」

「だな、サヤの動きが素早くて捉えられなかったよ。」

「フフフ、これでも日々鍛えているんだからね。」

「ははぁ~、御見それ致しやした。」


二人して笑いながら居間に行くと不貞腐れた顔のエレナさんに迎えられた。思わず笑みがこぼれてエレナさんが更に不貞腐れた顔をするが、俺は謝りながら料理の手伝いをして機嫌を直してもらうのだった。

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