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異世界でアトリエ始めます。  作者: 小雪
第一章:序章
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後日談①

アレックスは普段使っている執務室で報告書を書いていた。

大森林での討伐は死者10名を出し4名の冒険者を引退させる結果になってしまったがあの強さの魔族を倒せたのなら破格の結果だろうな。本来ならランクAの冒険者パーティー数組で倒す様な相手だ。

俺も昔はランクAの冒険者として暴れ回ったんだがな~歳には勝てねぇって事かね。


レベッカが執務室に入るなり質問をする。

「アレックス支部長、アスナさん達は大丈夫なんですか?」

「ああ、心配しなくても大丈夫だ魔法の使い過ぎと疲労で暫く寝たきりだろうがな。」

アレックスは悪戯好きな子供のような顔で笑った。

「アスナさん達もこれから大変ね、噂は広まってるから多分色々な人がアスナさん達を引き込もうとするでしょうし。」

「まぁ其処ら辺は自分達で如何にかするんじゃねぇか?アスナの奴は自分の工房で商売をしたいらしいから一種の宣伝にはなっただろう。」

「面白がってません?」

「分かるか?あいつ等は久々の面白い奴らだからな。」

悪びれもせず豪快に笑う、レベッカはそんなアレックスを見て溜息を吐くのだった。




「え~と此処だなアスナが泊まってる宿屋は」

「そうです。」

アレックスとレベッカはアスナ達の様子を見に宿屋に来ていた。この宿屋『妖精の香亭』には冒険者がよく利用する。レベッカは知り合いの女の子に挨拶をしている、そういえばこの宿は女性に人気のある宿らしいなとレベッカに聞いた話を思い出していた。


「アスナ、入るぞ!」

ドアを開けて部屋に入るとアスナが着替えの最中だった。

「・・・・・・・支部長?」

「・・・・・・・ぐはっ!!」

レベッカの拳が腹に命中して部屋の外に追い出された、あんな細身の腕でこの破壊力かよ。にしてもアスナの奴良い体してやがるな、下着姿のアスナの体が目に焼き付いて離れないアレックスだったがその後のレベッカの鬼の様な剣幕にひたすら頭を下げるしかなかった。


「それでレベッカさんと支部長が何で此処に?」

「貴女のお見舞いに来たのよ。」

「まぁそんな所だ、ほら、見舞いだ。」

アレックスが見舞いの袋を投げる中身は回復薬などが入っている。

「アスナさん起きました?」「ちょっと何勝手に入ってるのよ」

「お前らも相変わらず元気だな。」

サヤの奴は最初から元気な娘だったがエレナまでこんなに元気に喋るとはなアスナ達に紹介した時とは別人だぜ、アレックスは二人の言い合いをニヤニヤしながら眺め、レベッカは微笑ましそうに眺めていた。




「………今回の魔族の件は以上だな。」

俺が簡単に説明してやるとアスナは考え込む様に俯いた。魔族と人間は長い事戦争を続けている、今でこそ表立って戦争はないが俺が子供の頃は未だに戦争が続いていた。


「魔族と魔物の違いは何なんですか?」

「そうだな……、魔族は魔物が年月を掛けて強力になった者がなると言われてる。今回の魔族が出た場所を考えるとこの説は概ね正しいのかもな。」

「魔族が住んでる場所って何処なんですか?」

「お前、そんな事も知らねえのか!」

魔族の住んでる地域は此処、貿易都市アペリティフよりずっと東にある国境砦よりさらに奥にある場所だ。だからこんな場所に魔族が出る事は通常はありえない。

アスナは全員から注がれる微妙な視線に苦笑いで答える、エルフ独特の耳がピコピコ動く。


「そうだ、お前が止めを刺した魔族だが近々競りに掛ける事になってな、倒したのはアスナだし最初に報酬を受け取れる権利がある。素材が欲しいなら競りが三日後だからその前にギルドに来てくれ、金で良いなら競りが終わった後分配になる。後は……、そうそうお前のアイテムボックスにある素材を渡してくれそれも分配になるからな。」

アスナが回収していた素材を取り出す、結構入ってるな俺のじゃ半分位だろうな精々。アスナのアイテムボックスの許容量に俺は驚いた。


「アスナは誰かに魔法や剣術を教わったのか?」

アスナは少し考えながら以前少しだけ教わり後は独学だと答える、以前ギルドで鍛えてやった時は駆け出しにしては出来る奴程度の印象だったが、その後も成長を続けて今では熟練の冒険者なみの強さと回復魔法、現在は職人の修行までしてやがる。サヤもエレナも優秀な人材だし先が楽しみだぜ。

アスナは何か隠してる感じだが誰にでも知られたくない事位あるものだ、それにアスナは良い娘だしなと気にも留めなかった。




「じゃあ用件は終わったし帰るぞレベッカ。」

「もう帰るのですか?折角アスナさん達とゆっくりお話が出来ますのに。」

「ならお前はもう少し此処にいろ、俺はまだ仕事があるからな。」

宿を出て直ぐにギルドに戻るつもりだったがまた書類仕事をするのもなと近くの酒場に行った。酒場には今回の討伐に参加した冒険者が数名飲んで騒いでいる、その中でも一際酒をがぶ飲みする男、ドワーフに話しかけた。


「おいガレス昼間から飲み過ぎじゃねえか?」

「うぁ?何だアレックスかよギルドの仕事はいいのか?」

『鮮血のガレス』は名前の物騒さと違い陽気に笑い酒を飲む。美味そうに飲みやがって俺も飲みたくなるじゃねぇか。完全に言いがかりである。


「あの嬢ちゃんは元気か?」

「アスナの事か?見舞いに行ったが問題はなさそうだ、まだ疲れが残ってるだろうがな。」

「そうだろうな、あんな細い腕の嬢ちゃんが自分の身長程もある剣を振り回すんだから今でも驚きだぜ俺は。」

確かにアスナの使ってる武器は非常識だ、あの腕でどうやって持っているのか恐らく俺でも使いこなせないだろうなあの剣は。エルフは通常弓や短剣、魔法で戦うのが常識だがアスナのそれは固い鎧と無骨な大剣で戦う真逆の物だ、しかも美人だからやたらと目に焼きつくんだよな。


「あの女性の話ですか?」


話に入って来た男、誰だったかな顔は覚えているんだが……。

「何だお前か、そういえばお前さんおの娘を背負ってキャンプまで運んでいたな。」

ああ、そこまで聞いて思い出したあの時の男か、確か仲間の誰かをアスナに助けられていたんだったな。

「怪我した仲間はもう大丈夫なのか?」

「アスナさんのお陰ですっかり、あそこで飲んでますよ。」

視線の先を見ると怪我をした筈の男は陽気に酒を飲んでいる。確かに大丈夫そうだな。

「アレックス支部長はアスナさんと親しいんですか?」

「親しいってのは言い過ぎだが顔を合わせれば話す仲だな。」

「支部長お願いがあります!」

アレックスは嫌な予感がしてガレスと顔を見合わせる、ガレスは俺に振るなと言わんばかりに顔を反らした。

「お願いとは具体的になんだ?」

「アスナさんと付き合えるように協力してくれませんか!!」


「「・・・・・・・・・・・・」」


騒がしかった酒場に静寂が訪れて数十秒後騒がしいというより暴動のような騒ぎに発展していた。


「ふざけんなこの〇ンカ〇野郎が、てめえのような奴にあの娘は釣り合わねえよ」

「俺の方が断然お似合いだぜ」

「何がお似合いだ鏡見て出直してこい」

「支部長!俺を彼女に紹介してくれ」

「最初に目を付けたのは俺だてめえらは下がってろ」

アレックスは目の前で繰り広げられる喧騒に頭を抱えながら聞くんじゃなかったと後悔した。

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