プロローグ
少し文章を修正しました。
俺の名前は『佐藤 健二』何処にでもある普通な名前。現代社会で不自由なく普通に生きる事は意外と大変だ。
家族と仲が悪い、お金が無い、友達がいない、恋人がいない。
俺は普通の夢を抱いている、結婚して家族を持ち仕事をして裕福ではないけど貧乏でもない、親友や仲の良い同僚、信頼できる上司。ちょっとしたドキドキ、そんな在り来たりな生活。
そんなの普通じゃなくね、と思う方も要るでしょうがこれが俺にとっての普通なのです。
別に何処かの国の王様に成りたい訳でも長者番付の大金持ちでもイケメン芸能人でもない。まぁ多少の憧れはあるけどね。
現在の生活を一言で表現するなら「無味乾燥」だと思う。生きてるって実感も無く、唯生きる人形の用な毎日が後何十年も続くのかと思うと憂鬱になる。
仕事の帰り楽しそうに話しながら歩く男女が前に居る、正直その時はリア充は消えろなんて心の中で毒づいていた。
彼らが信号を渡ろうとした時、一台の貨物自動車が突っ込んで来た!!
その車は居眠り運転だったのだ。俺は咄嗟に男女を突き飛ばし、自分も逃げようと思ったがどうせ無意味な人生なら此処で終わってもいいかなと逃げるのを躊躇い……轢かれて死んだ。
気付くと俺は花畑の中で眠っていた、俺は飛び起きて辺りを見渡す。
「何処を見ておる。」
後ろから声がして振り向くと其処にはぞっとするほど美しく輝いた羽の生えた天使様が立っていた。
「えと、あの、天使様でしょうか……」
「我は天使ではない神だ。」
美しい女性は胸を反らして高らかにそう告げた。
「神様……ですか…。」
「うむ。」
「って事は俺は死んだのです…よね。」
「ああ、貴様は死んだ。」
死んでもいいと思ってたはずなのに何故だか複雑な気分だな。
「自らの危険も顧みず他人を助けるとは見事じゃな。」
「いえそんなたいそうな理由じゃ…」
「そのうえ威張らないとは尚更貴様を気にいったぞ!」
何だか想像していた神様と違うな。容姿は美人なのに言葉遣いが年寄りっぽい。人の話し聞いてないけど気に入られたならいいかな嫌われるより。
「そんな謙虚な貴様に褒美をやろう、何がいい?」
「褒美ですか?」
「うむ、天使見習いにしてやってもいいし好きな世界に転生させてもよいぞ!」
天使見習いと好きな世界に転生か……。
どうせならハラハラドキドキする様な世界が好いな。
「ゲームのような世界はありますか?剣とか魔法が使えたり。」
「当然あるぞ最近作った世界だかな」
「最近?」
「最近と言っても何億年も前だがな。」
最近じゃないよなそれ、神様には何億年もその程度の時間て事なのかな。
「その世界はどんな感じなんですか?」
「うむ、この世界はな其方らの世界のゲームを参考にして作ったのじゃ。
人間だけじゃなくエルフやドワーフ、猫耳獣人、ドラゴン、魔物にさらに迷宮なんて物もある。当然剣も魔法も使えるぞ。」
面白そうな世界だな、コレは行くしかないでしょ絶対!
「その世界では魔法で物を作ったりできますか?」
「できるぞ、其方の世界で云う錬金術がそうじゃな。」
おお、錬金術!!
「錬金術の呼称はあくまで物作りの総称で詳しくは鍛冶とか細工などあるがな。其方の世界でもそうだったであろう、確か科学だったな。」
剣も魔法も出来て錬金術もできる、実は一流の職人とか憧れてたんだよな。
「俺その世界がいいです!」
「うむ、この世界は其方の世界と同じ位我の自信作だ。存分に人生を楽しむがよい。」
「ありがとうございます」
「しかし唯送るのも何だな、欲しい能力はないか?三つまでなら望み通り叶えてやるぞ。」
欲しい能力といっても何がその世界で有効なのか解らないし、でも折角貰えるなら利便性のある物がいいし……。
「そんなに悩むのなら我のオススメはどうじゃ?」
「はい、それでお願いします。」
「では一つ目、自分の能力を任意で上げられるように、そして他者の能力の適性が解るようにしてやるのじゃ。」
よく理解できないがゲームの様に経験値を貯めてレベルを上げポイントを能力に振れるって事かな、他者って事は誰かの得意な適性が解る事だろうな。
「二つ目は魅力を授けてやるぞ。」
「魅力ですか?」
「うむ、簡単な事だ其方の世界でも美男美女が持て囃されていただろう?」
「そうですね。」
「ゆえに其方の魅力を上げて人気者にしてやるのじゃ。」
人気者か今までの人生じゃそんな事は一度たりともなかったし良いな。
「三つ目は供を付けてやろう。」
「お供ですか?」
「うむ、能力ではないがな、向こうの世界に行って経験を積めば能力は鍛えられる。其れよりも向こうの世界で道案内をしてくれる者がいれば心強いじゃろう。」
「そうですね。」
「なに其方に同行させる者は天使見習いではあるが優秀だ、分からない事や我に連絡を取りたい時にはその者に訊くとよい。」
「はい、何から何まで神様ありがとうございます。」
こんなによくして貰えるなんて夢じゃないよね。
「では其方を剣と魔法の世界『グリモワール』に送るぞ。」
今迄の人生で一番の幸運だ。これで心躍る異世界生活が神様のお墨付きで出来る。
「忘れておった、してどんな姿で行きたい?」
「姿と言うと?」
「其方は死んでおるからな赤子として転生するのか、ある程度の年齢の肉体を構成して送るか。」
「ではその世界で不便にならない歳でお願い致します。」
「そうだな、では15歳でいいだろう。」
「はい。」
「後は種族だな人間でよいか?」
「能力的にはどの種族がオススメですか?」
「平均なら人間、鍛冶を極めたいならドワーフだな、身体能力なら獣人が良いが、我のオススメはエルフだな。寿命も長いし能力も人間より多才だ。
容姿も美男美女だぞ、其処に魅力を上げれば誰もが其方に見惚れるぞ。」
エルフか悪くないよね、ドワーフは短足、髭モジャで嫌だ。
「エルフでもアイテムを作ったり冒険は出来ますよね?」
「問題はないだろう、鍛冶などは普通向かないが其方のやり方によっては最終的には問題なくできる筈じゃ。」
「ではエルフでお願い致します!」
「よし、では行って来くるがよい!」
俺は何かに吸い込まれる様な感覚に呑まれながら、異世界グリモワールに転生した。
「そういえば性別を訊くのを忘れておったな、どうせ暇潰しに観察するのだから女にして驚かせて楽しむかな。となると名前も変える必要があるな、では【アスナ=レイテス】で良いじゃろう、楽しく観察させてもらうぞ!」
先程まで男が居た場所で神は高らかに笑う。
神様は世界の管理に退屈していたので段々楽しくなってきました。
佐藤 健二改めアスナ=レイテスは異世界に転生する。
本人も知らぬ間に女の子になって。