第八話「徹底抗戦」
命からがら逃げ出してきたアド軍は、砦よりおよそ50km南で駐留していた。
「どうしましょう……」
兵士たちが不安の声を漏らした。すると、司令官は突然立ち上がり、静かに言い放った。
「どうするもこうするも……戦うしかないだろう。でなければ、死んだ兵に顔向けできん」
そして、大地を震わす叫び。
「さあ、立ち上がれ!誉れ高き帝国兵たちよ!!例えここで滅びようとも、我らが誇りは永遠にしようではないか!!!立てよロマ、古の軍神の末裔どもよ!!!!」
次の瞬間、歓声があがった。
一方、師団長室では、
「お手柄だったな、レット」
ギルトとその副官が話していた。
「コーヒーは」
「師団長は俺だが」
「ちぇっ」
レットは渋々と水を沸かしに行った。
「……ところで」
コーヒーを淹れ終えたレットは、静かな口調で尋ねた。
「さっきの戦……勝ったのはどっちだと思う?」
「あ?何言ってんだお前。そりゃ当然……」
「ジグ軍の圧勝」
「そう、それ」
ギルトは、カップに口をつけながら指を彼の方へ向けた。
「伏兵を二重に仕掛けた戦法によって帝国軍は抗う術をなくし、惨めに敗走した。誰もがそう思っているはずだ」
「事実そうだからな」
「しかし、奴らの損害は少ない。大将ができるやつだったからな。恐らく損害は多く見積もって5000程度だろう」
レットは目を尖らせ、バンダナを結び直した。
「ジグ軍は勝利した。だからこそ、次は防げない」
「次?」
師団長は訝しげに顔をしかめる。
「ああ………そろそろだ」
数秒後、スピーカーがけたたましく鳴り響いた。
《ロマ軍再来襲。ロマ軍再来襲。直ちに軍を整え、これを迎え討て》
ブツン、と音がなって、静寂が訪れた。
レットは一段と低い声で呟いた。「まったく……うるさいスピーチだ」
ロマ帝国軍は北へ移動し、砦より南25kmの地点で陣形を整えていた。
兵の配置が一通り終わると、アドは兵士たちに向けて言った。
「我らが帝国が成して既に6200年が経った。小国だった我らの国は、領土を奪い、奪われ、長い年月のうちに今の形に落ち着いた。……だが、今。我らの国は、また新たなる土地を手に入れんとしている!時代が動こうとしている!俺は英雄だ!!お前らも英雄だ!!ジグの軍を破り、国を一つ征服する、その縁の下で働いた英雄どもだ!!一つ敗けた、だがそれがどうしたというのだ!!!剣をとれ!!そして闘え!!!勝利の湯にのぼせた馬鹿どもは、やがて気づくであろう!!楯突く相手が間違っていたと!!!そしてそれは、我らが敵の喉笛に噛み付いた時だ!!!闘志も、矜恃も、血も涙も!!!全てをここに置いてゆけ!!!!」
わずかな静寂の後、不意に兵士の一人が叫んだ。
「エイエイ」
やがてそれは大きくなっていき、
「エイエイ」
大地を揺るがすほどになった。
「エイエイ」
「応」
「エイエイ」
「応」
「エイエイ」
「応」
大分更新ペースが遅くなってきました。
大分は"おおいた"ではありません、"だいぶ"です。それにしても、女キャラがすごく少ない………いや、戦争ものだからね………仕方ないよね……………