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第九話「信念」


「全く……大したやつだよ、向こうの指揮官は」

レットは陣中で感心したように呟いた。

「ああ。はえはあろをいりをらおっれられるやふあんて、そうそおいるおんやええ(敗けた後も士気を保ってられる奴なんてそうそういるもんじゃねえ)」

「………何食ってんだ?」

レットが明らかな不信の目を向ける。ギルトは口の中のものをゴクン、と飲み込むと、ポッケから小さな袋を取り出した。その中には、ピンポン球大の大きさの団子が数粒入っている。

「兵糧丸といってな。カンスケという人物が作ったもので、曰く一日分の栄養が一粒で取れるらしい」

「へえ。そいつぁすげえや」

レットは一つをつまみ、ヒョイと口にいれた。


「おいお前らー」

レットは面倒臭そうに手を上げ、兵士たちに言った。

「今回の作戦を説明するぞー。まずだな……ここで構えて………んで、そしたら………だから……を…………させて、………しながら…して、……が……したところを…………する。わかったな」

「おー!!!」


「全く、休ませてくれないおっさんだ」

「安心しろ。すぐに永遠のいとまをくれてやる」

司令官二人の会話が終わると、二つの軍団は静かに戦闘を開始した。


斬っては斬られての戦闘が続いて1時間がたった。だが、戦は未だ終息の影を見せない。

どちらが優位に立つこともなく、人の数だけがじりじりと削られていった。消耗戦。兵の多い方が勝つ戦い。しかしそれだとロマ軍は敗北してしまう。そんなことはアドは百も承知だった。

砦から出撃したジグ軍はおおよそ9000。こちらは7500弱。この兵力の差を覆すような戦法……そしてあわよくば、敵の士気まで下げられる戦法……。

となれば、考えは一つしかない。


ーーー過去に戻りますーーー


「大将はかなりデキるやつだ。侮ってるとすぐにやられる」

「敵はどう来る?」

ギルトが尋ねた。レットはすぐに答える。

「こっちのが兵は多い。ならば、奴らは正攻法ではこない」

「つまり……」

「敵は必ず囲んでくるってこった」

「囲んでくるってことは……伏兵か……回り込み…か?」

「回り込みには騎馬がいる。伏兵を使ってくるはずだ」

「なるほど……」

「敵の虚を突こうとしても、ネタが割れちゃあ……」

「意味はない」

「その通り」

レットは勝ち誇ったようにフッと笑った。


ーーー現実に戻りますーーー


「突撃ぃ!!」

アドの合図と同時に草むらから伏兵が飛び出した。


来た!!!


待ってましたと言わんばかりにレットは叫んだ。

「迎撃用意!長槍構え!敵を寄せつけるな!!!」

ジグ軍の外周が槍を構えると、ロマ軍は動きを止めた。しかし、それも一瞬で、敵は再び攻撃を始める。

「人の血で道をこじ開けようってか………」

レットは悔しそうに呟いた。たとえ敵であろうと、人はあまり死なせたくない。

甘い考えかもしれない。だが、それでも彼はその信念を貫く。

「総員に告ぐ!!!」

レットは叫んだ。空気を震わすほどの大声に、敵味方の両者が立ち止まった。

「俺に続け!」

そう言って彼は敵陣へと一人飛んでいく。ジグ軍は一瞬きょとん、としたが、すぐさま彼に続いた。

「突撃だぁ!!!」


誰かを守るために命をかける。

馬鹿とでも、無謀とでも、どうとでも言ってくれ。

それでも俺は、誰かを守りたいんだ。


夕方、空は赤く染まっている。太陽が西に沈むように、局は終わりへと進んでいた。

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