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ネクストワールド・ワンダラー  作者: 竹野 東西
第3章 風の里
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風の里

アイカの後ろに付いて、畑の横を通り過ぎ、この空間の一番奥に当たる家が数軒建っている場所まで来ると、アイカは二人をその場で待たせ一軒の家の中へと入って行った。

辺りを見回すと、家は全部で八棟建っているようだった。

が、その内の半分は窓などが全て閉められていて、人の気配が感じられない。

空家になっているようだ。


しばらくするとアイカは一人の男を連れて戻ってきた。

ソウゴだ。

相変わらず落ち着いていてトキトから見ても格好いい。

アイカの話だとまだ着いていないかもしれないという話だったが、既に来ていたようだ。


「トキト、お姫様は無事助けられたらしいな。おめでとう。それと、約束通り里に来てくれてくれた事に礼を言う。ありがとう」

ソウゴから手を差し出し、二人は握手を交わした。


「いや、リーナの事だってソウゴ達に助けられたおかげだし、シオリやイチハの事だってみんなにすごく世話になったんだから、約束を守るくらい当り前だろ。なっシオリ」

トキトは最後にシオリに振ってみたのだが、シオリは下を向いたまま黙っているだけで、応えてくれる気配はない。

急に元気が無くなったようにも見受けられる。


ソウゴがシオリにも手を差し出しても、シオリはその手を取らないでいる。

「あーもう、何やってんだよ」

トキトはそう言って、シオリの手を掴みソウゴの方へと引っ張っていこうとした。

「何があったかは知らないが、俺達が世話になったのは事実だろ」


すると、突然アイカがトキトからシオリの手を奪い自分の方へと引き゚戻した。

「別にいいだろう、握手なんてしなくても…。形式にこだわる事もない」

アイカはそう言うと、そのままシオリをその家の中へと連れて行ってしまった。


シオリを庇うように抱きながら歩いて行く二人を見送りながら、トキトはソウゴと向き合った。

確かに無理やり握手することもないとも言えるのか、強引にそう思う事にして、ソウゴの顔を見る。


そして、トキトは自分達をこの場所へと呼んだ理由をソウゴに聞いた。

「ところで、わざわざ俺達をここへ呼んで、いったい何をしようっていうんだ?」


この場所は風の民にとって秘密の場所のはずなのだ。

そんな場所にわざわざ呼び寄せたというのに、何もないはずはない。

しかも、ソウゴはトキト達に会う事を最優先に他の事を放って来たに違いない。

リーナを助けてもらった時も他を投げ打って助けてもらったので強いことは言えないが、そうしてでもさせたい事があるのだと考えたところでおかしくはないだろう。


しかしソウゴは平然と言い放った。

「いや、特に何をしてくれというものはない」


「そんな事はないだろう。あのエルファールの山奥からわざわざここまで来ておいて、何も用はないというつもりか」

「そう言う意味なら、爺さん達の話し相手になってほしい」

「爺さん?」

「そう、我々の祖父たちだ。六十年前に閃界を越えてきた」


そう言えば、あの山の中のソウゴの仮家でそんな話も聞いていた。

元いた世界が同じ者同志話をして欲しいという事かもしれないが、そうは言ってもトキト達とソウゴの爺さん達では時代が大きく違うのだ、話が合うような気はしない。


そんな事を考えている間にソウゴはさらに続けている。

「爺さん達は、日本とかいう元の世界へいまだに戻るつもりでいるのだ」

「戻る方法を知っているのか?」

トキトは反射的に聞いていた。

特別に戻りたい気持ちが強いトキトではないが、そんな方法があれば知っておきたい気持ちもある。

だが、そういう事ではないらしかった。


「いや、そんな事は何も知らない。だが、ずっと昔から戻るつもりでいるのだ。よほど戻りたいと言う思いが強いのだろう」

そう言えば、レンドローブも元の世界に戻った人はいないと言っていた。


「それを俺達に聞こうというのなら残念だが無理な話しだ。俺達だって知らないんだ」

「それはそれで構わない。というか、そんな方法はわかってもらっては困るんだ」


「どういう事だ?」

「はっきり言えば、爺さん達に諦めてもらいたいという事なんだ」

ソウゴは奥の家の方を振り向いた。


「奥の少し大きな三軒に住んでいるのが、風の民の一世、つまり俺達の祖父達だ。一世は男女三人づつの計六名で、後に三組の夫婦となり俺達の祖先となった。だが、彼らはいずれ帰る気でいるため定住地を定めたがらないのだ。ここも、親父が仮の住処として造っただけで爺さん達は定住するつもりなど毛頭ないのさ。だから周りの国々との交流もないし、交易もしないのはもちろん、一族以外にはこの場所は秘密にしている。ここに定住する事よりも一族を世界中に放ち、元の世界に戻る方法を探す事の方が優先だと考えているからだ」


「それで、俺に諦めるように諭してほしい、と?」

「別に爺さん達が戻りたいというならそれはそれで構わない。だが、我々若い者はここで生きていくしかない。日本だとかいう訳のわからない世界へ行く気にはなれないんだ。俺達はここで生まれ、ここで育ってきたのだからな。だから、そろそろ永住の地を構えたいと考えている」

ソウゴの決意は固いようにトキトには見えた。


「ソウゴの言っている事はわかった。けど、そんな事はソウゴが直接言えばいいんじゃないか?いや、そうでなきゃだめだろう。俺みたいな外部の人間が…」


「ソウゴ、トキト、いつまでしゃべっている。早く来いよ」

その時アイカが二人を呼びに来たため、二人は話を中断せざるを得なくなった。

そして、里で一番大きな家の中へと招かれて入った。


入口を入るとそこは大きな広間になっていた。

この建物は集会場か何かなのだろう、恐らくはこの集落の全員が集まれるくらいの大きさがある。

一番前の端にシオリが座っていた。

大きな部屋に一人だけ座っているせいか、その後ろ姿はどことなく寂しそうだ。


アイカはトキトをシオリの隣へと促すと、その前にある片開きの扉の前に立った。

そして後ろからついてきたソウゴと目配せしてから言った。

「これから二人に長老達と会ってもらう。長老は六人いるが、二人不在なので今ここに居るのは四人だけだ。ああ、別に緊張などしなくていいぞ。客人には優しい方々だからな」


アイカはそう言うが、そう言われるとかえって身構えてしまう。

ソウゴがなかなか意見を言えない様子だった事も気に掛る。


アイカが二人に扉の前まで来るように促し、ソウゴがトキトの背中を軽く押し中へと誘った。

その時トキトは少しソウゴの表情を窺ってみたのだが、全くの無表情で何を考えているのか全く読めなかった。


扉をくぐると、そこは小さな部屋になっていた。

小さいと言っても大広間と比べるから小さく感じるだけでそこそこの大きさはある。

中央に大きなテーブルが置かれていて、その向こう側に四人の老人が座っていた。

男性が二人、女性が二人。

両側に一脚ずつ計二脚分の空いた椅子がある事からここは六名の長老と話し合う場所なのだろうと推測される。


四人はシオリとトキトが部屋に入ると感嘆の声をあげた。

「おおー」

「なんと」

「我々とそっくりじゃ」

口々に驚きの声をあげつつも立ち上がり礼をする。

二人もつられるように頭を下げた。


気が付くと彼等はお互いに顔を見合わせていた。

トキトがどうしたものかと思いつつその場に立ち尽くしていると、

「まあ、お座りくだされ」

と、その中で一番年上だと思われる爺さんに、席に着くよう促された。

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