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ネクストワールド・ワンダラー  作者: 竹野 東西
第3章 風の里
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帰還

結局、ウィルマはエルファールとの国境にあたるあの大河の川岸まで付いてきた。


「次に会う時のことを楽しみにしてるぜ」

川面が見える大きな樹の下まで来た時、ウィルマはそう言ってその場に残った。


ここからは少し草地が続き、その先はひたすら川だ。浅いと知っていても流されそうで怖くなる。

「ワニがいないか注意してくれ」

トキトが言いつつ辺りを見回すが、ワニの姿は見あたらない。

とはいっても、草むらに潜んでいれば近づくまではわからないので、注意は必要だ。


シオリを先頭に水際まで進んで行く。

そこで一旦止まり、周囲を確認した後、まず最初にシオリが川に飛び込んだ。

そのすぐ後にアイカが続く。


そして最後にトキトが川へと飛び込んだその直後、先頭を行くシオリが声をあげた。

「前方にワニが二匹いるみたい」

しかし、行きの時のように慌てた様子は見せていない。

「でも、大丈夫。想定の範囲内よ」

そう言って右手を右前方のワニへと向ける。


 バシャン

 バシャバシャ

 バッザーン

その時、左右から大きな水音が複数聞こえた。

見ると周囲をワニに囲まれている。

四、五、六全部で七匹はいるようだ。この様子だと罠を張っていたとしか思えない。


「トキト、ごめん。戻って! 全部に対応するのは無理みたい!」

だいぶ魔法に慣れてきたシオリだが、一度にこれだけの数に同時に対応するのは難しいらしい。

陸上ならトキトも援護できるが、川の中ではそううまくは出来そうもない。

止む無く戻ろうとするのだが、トキトの目の前にはすでに一匹が迫っていた。


慌てて剣を抜くべく手を掛ける。

しかしその時、川岸から声が投げかけられた。

「行け!ウォンツの事はあたしに任せろ!」

その声を最後まで聞き終わる前に、トキトの目の前に迫っていたワニの目に矢が突き刺さる。


どうやらワニはウォンツという名前らしい。

トキトのすぐ近くまで来ていたウォンツは大きな水音をたて水中に消えた。

と思った次の瞬間、さらに次々と水音が響き渡る。


あっという間に上流と下流から挟み撃ちを仕掛けて来た五匹のウォンツが水中に消えていった。

シオリはシオリで前方の二匹を仕留めている。

ウォンツの待ち伏せは無に帰したという事になる。


「ありがとーう。ウィルマー!」

「感謝する」

木の上で手を振るウィルマにトキトとアイカが礼を言う。

シオリも小さく手を振り、感謝の意を表した。


それにしてもすばらしい腕前だ。

かなり距離があるのにもかかわらず、水面すれすれにわずかにのぞいた目を全て正確に打ち抜いている。

しかも連射でだ。

「気を緩めるな! ボルボルにも気をつけろよー」

ウィルマの声が聞こえてくる。

ボルボルとは恐らくあの大きな口のオオサンショウウオの化け物の事だろう。

そう、きっとウィルマはこの事を知っていたのだ。

だから援護射撃をするために、わざわざここまで一緒に来てくれたのだろう。


馬は深みを抜けて川底の浅い場所へと進んで行く。

一息ついたトキトはもう一度礼を言おうと樹の上を振り返ってみたのだが、その時にはもうウィルマの姿は見えなくなっていた。

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