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ネクストワールド・ワンダラー  作者: 竹野 東西
第七章 緑の国と霊樹の葉
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任務完了

途中、砂漠のオアシスで一泊し、ライールは翌日、ファロファロの首都ファロスに着いた。

そしてその日は、国長に旅の報告をするとともに、彼等には霊樹の葉を五枚渡し、下手に使うと無駄になる可能性もある等の注意事項と共にその使い方も教えた所で、一日を終えた。


これでエルファールとの停戦は継続し、和解もきっと進む事だろう。

そう思ったトキトだったが、その夜わざわざ訪ねてきたベルナスの話によると、仮にトキト達が霊樹の葉を持ち帰らなかったとしても、エルファールとの停戦は継続したに違いない、という事だった。


ビオイオル山の南側を回って、大量の魔獣が現れた為、エルファールまで出張って狩りをする必要が無くなったのだという。

その魔獣は北の砂漠やそれよりさらに北にいる魔獣の様な恐ろしい程の強さは持っていなかったようで、ファロファロの民が狩りをするのにちょうど良い相手なのだそうだ。


つまり、少なくとも当面はわざわざエルファールまで出張って狩りをする必要は無くなったという事らしいのだ。

という事は、結果的にはわざわざ遠く白の台地まで行かなくても良かったという事になるのかもしれないのだが、トキトには特にそれを後悔する気持ちはなかった。


白の台地に行く事で、貴重な経験を幾つもする事ができたからだ。

行かなければエイル達とも会う事すらできなかったという事もある。

そう考えると、行くきっかけをつくってくれた国長には感謝しなくてはいけないくらいに思えていた。


それに、霊樹の葉を使わずに事を収めることができるという事は、その対象者を慎重に選ぶ時間があるという事になる訳で、ファロファロにとっても都合のいい事のように思えた。

国長は、成功の確率を高める為、使う前にはトキト達など、既に精霊が見える誰かに確認してから使う事にする、と言っていたので、下手に無駄使いはしないだろう。


ともあれ、トキトは国長との約束は果たした訳で、国長はコチという国の存在を認め、国同士の友好関係を結ぶ事についても前向きに検討してくれるという約束もしてくれた。

これで当初の目的は充分果たすことができたといっていいだろう。


そして翌朝、トキト達一行は、国長の他ベルナスやウィルマにも見送られ、ファロファロの国長の書簡を預かり、エルファールの王都に向かって飛び立った。

途中、ジェフジェクで一泊し、王都エルファールへと向かう。


ベルリアス王はトキト達一行を喜んで迎えてくれた。

トキト達が白の台地へ向かって以降、エルファールとファロファロの小競り合いが無くなったのはもちろんの事、ファロファロの猟師による越境もとんとなくなったという事で、国境付近の国民からは随分と有難がられているのだそうだ。


トキトはベルリアス王にもファロファロでしたのと同様、注意事項を含め使い方を教えた後、霊樹の葉を二枚渡した。

これは、ファロファロに対する抑止力の意味も含めて渡すことにしたもので、ファロファロの国長の了承も取った上の事でもある。

ファロファロ側としては、エルファールに余分を渡すくらいなら、自分達でその分を使いたいという考えも当然あったのだが、幸いにして突然の魔獣の流入により狩場の拡大は当面の急務ではなくなっていた為、合意を取り付けるのにさほど手間はかからなかった。


ベルリアス王への報告を済ませた後、一旦謁見室を退出したトキトは、シオリとリーナを伴い王の私室のドアを叩いた。

リーナの希望を叶えるためだ。


あの時、トキトは「少し考えてみる」と言ったきり、その後はリーナともその話は一切していない。

それなのに突然兄王の所へ行くと言われたリーナは少々緊張気味だ。

シオリは何も聞かされていない為、特に緊張している様子はないのだが、只ならぬ雰囲気に何か感じてはいる様だった。


使いの者の手によってドアが開けられると、トキトはリーナの背中を優しく押す様にして部屋の中へと入った。

その後ろをシオリがついて行く。

シロも一応ついて来てはいるのだが、遠慮しているのか、トキト達がいる事で安心しているのか、不思議とリーナからは少し距離を取っている。


トキトが小さな講堂ほどもある大きな部屋を中ほどまで進んだ時、突然、横から声が掛けられた。

「トキト殿、いかがされたのですかな、わざわざこのようなむさくるしい所までいらっしゃるとは」


むさくるしいどころか、きちんと手入れが施され、チリ一つない清潔な部屋の中を声のする方へと振り向くと、入口からは柱の陰で見えなくなっている位置に一つだけ置かれた立派な椅子にベルリアスは座っていた。


そしてその椅子から立ち上がり、その先に置かれたちょっとしたサロンのようなスペースへとトキト達一行を誘ってくる。

「まあ、とにかくまずはこちらへ。ここは公式の場ではありませんから、お互いに座って話しましょう」

ベルリアスはそういうと、三人を自分の向かいの椅子に座るよう促した。


このような事は実は滅多にない。

エルファールの王は余程近しいものと話す場合でなければ、対等な位置で、しかも座って話すなどと言う事は無いからだ。

つまりこれはベルリアスがトキト達の事を信頼しているという証しともいえる行為という事になる。


トキトは言われるままにベルリアスの正面に座った。

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