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ネクストワールド・ワンダラー  作者: 竹野 東西
第七章 緑の国と霊樹の葉
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痕跡

ミストの努力の甲斐あって、ソリは落ちることなく無事に縁まで戻されて、その場所で固定された。


ソリが落ちかけたのは崖ではなく、意外に深くて斜面の角度のきつい窪地だった。

あのまま落ちていたら結構ひどい事になっていたかもしれない。

場合によってはソリが使い物にならなくなっていた可能性だってある。

ソリを戻すのに、ミストはかなり苦労をしていた様だったが、そのおかげで、ソリが無事だったのは幸運だったといえそうだ。


「わあ凄い。結構大きな窪地ですね。外の風も入ってきませんし、一晩過ごすには良い場所なんじゃないでしょうか」

トキトが放った火の玉の光で照らされた窪地を見て、リーナが小さく歓声を上げた。

この窪地もスランとハッカがいた窪地を一回り小さくしたくらいの大きさはある。

この人数で一泊するだけなら充分すぎる大きさだ。

トキトは魔獣等がいない事を確認し、窪地の底に向かって斜面を滑り下りる様にして下りて行った。


「でも、カーラがもう少し早く見つけてくれれば、もっと良かったんだけどね」

軽く皮肉を言いながら、シオリもトキトの後をついてくる。


その肩の上では、カーラが不満そうにしている。

「真っ暗でよく見えなかったのよ。しょうがないじゃない」


「そうだよ。逆にカーラがこの窪地に気づいてくれなければ、窪地の中に真っ逆さまに落ちていたかもしれないんだから、感謝しなくちゃ」

トキトがカーラを擁護する。


それを聞いたカーラは嬉しそうに跳び跳ねながら、シオリの前を歩くトキトの空いていた片方の肩の上へと飛び移った。

「そうそう、その通りよね。さっすが、トキト」

カーラはトキトの頬に体を摺り寄せ、喜びを体で表現している。

カーラの外観はまさしく子猫なので、そんな風にするととても愛らしく見える。


「なによそれ、何でトキトがカーラの肩を持つのよ」

その様子を見たシオリは、トキトとカーラから視線を外し、そのままトキトの側を離れた。


「シオリさん、そっちへ行ったら危ないですよ。暗くて足元がよく見えないですから」

心配したリーナがシオリに声をかけるのだが、シオリはあまり気にしない。

「平気、平気。ここに危ないヤツがいない事はさっき確認してもらったから大丈夫」

言いつつ、皆から離れて行く。


と言っても、窪地の外に出る訳ではない事は明らかなので、トキトは特に何も言わずに放っておいた。

だが、リーナはまだ少し心配そうにしている。


「しょうがないなぁ」

その様子を見たゲイラが、リーナの元を離れ、シオリの後を追いかけた。


ゲイラはすぐにシオリに追いつき、するするっとシオリの頭の上へと登っていった。

それを目の端に捉えつつ、シオリは言った。

「心配しなくても大丈夫よ。ちょっとその辺を回ったらすぐに戻るつもりだから」


「まあ、いいじゃない。カーラの代わりみたいなものだよ。暗いからリーナも心配しているのさ。でもおいらがいれば大丈夫。何かあった時にはおいらに任せてよ」

シオリにしてみれば、いざとなれば魔法で辺りを照らす事も出来るし、多少危険な敵が現れたとしても自分で身を守ることができるという自負も有るので、不安な事はないのだが、ゲイラはまるで自分はシオリのナイトだとでも言う様に、偉そうにしている。

だが、シオリもそんな反応はカーラでだいぶ慣れていた事も有り、上手く話を合わせた。

「なら、お願いね。頼りにしてるわ」


シオリが向かったのは、トキトやリーナが下りて行っている窪地の底の方向ではなく、窪地の円周に沿った方向だ。

とはいえ窪地の外に出るつもりもないので、ほぼ円形の窪地をらせん状にまわりながら、いずれはトキト達の所へ合流するつもりでいる。

シオリは皆から少し離れる事で高まりかけた気持ちをクールダウンしようと思ったのだ。


そして、実際、少し歩いた事により心が落ち着いてきたシオリは、ゲイラにお礼を言っていなかった事を思い出した。

「そういえば、あの時の御礼をちゃんと言っていなかったわね。ありがとう」


シオリが大亀の尾の槍に貫かれそうになったのを助けてくれたのはゲイラだ。

ゲイラに助けてもらえなければ、下手をしたら亀に串刺しにされていた。


「あ、ああ、あんな事くらい大した事じゃないさ。お礼なんかいらないよ」

そんな風に格好を付けるゲイラだが、シオリの差し出した掌の上で小躍りしているのでは、あまり格好を付けている事にはならない。むしろ可愛らしく見えるくらいだ。

シオリはそこは突っ込まずに、上手く話を変えた。


「そう? ふふふ、なら、それはそう言う事にしておくことにして…、あの時使ったあなたの力ってどんなものなの? あの硬そうな大亀の尻尾を弾いたように見えたけど…」

実際、それはシオリが気になっていた事だ。

あの時、何が起こったのか、シオリにはわからなかったのだ。


ゲイラは、少し悩んでいる風だった。

「うーん、なんていうか…、そう、ある意味シオリの使う魔法に近いのかも。そこにある空気を使う訳だからね。違うのはその空気にちょっと手を加えるっていう事。例えば、うんと濃くしたり、うんと薄くしたり、とかね」


「ふーん。なんだかわかったようなわからないような…」

ゲイラの答え方に、何だかピンと来ないまま歩いていたシオリの足元で、その時、パキッ、という乾いた音がした。


「あれ?」

その音がした場所を、シオリが立ち止って覗き込む。


「どうかしたの? 魔獣の気配はないみたいだけど…」

「ちがうちがう。何かを踏んづけちゃったみたいなの。ちょっと待って」


そう言ってシオリはその場に蹲り、そこに落ちていたものを拾い上げた。

「これは…」


「弓矢じゃない? っていうことは、ここに誰か人がいたっていう事かもしれないね」

そう言われて見てみると、シオリが手にしていたのは、ゲイラの言う様に明らかに人が作ったものと思われる、少し大きめの普通の弓矢のようだった。

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