表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネクストワールド・ワンダラー  作者: 竹野 東西
第3章 風の里
102/491

魔石剣

少しの間自分の周りの敵に集中したトキトが周囲の敵を駆逐し終えた時には、シオリは三人の敵を相手に戦っていた。

その少し先で二人程倒れているのが見える。

クミの電撃を避けきれず、喰らってしまった者達だろう。


シオリの闘っている相手の一人は女のようだ。

しかもその女がこの隊のリーダーらしい。

ベレツと同じような立派な鎧を身に付けている。


その女が周りの二人を下がらせた。

すでに出来上がっていたシオリを囲む陣形を崩す指示だ。

シオリも警戒しているのがわかる。


余計な事を考える暇は与えない、とばかりに女兵士はすぐにシオリに斬り掛かった。

しかしわずかに間合いが遠い。

シオリは剣先を躱し、反撃に移ろうとしている。


が、その時女兵士の持つ剣の根元が赤く鋭い光を放ち、それと同時に刃先がうすく白い靄の様な光に包まれた。

まずい。

トキトは背骨を悪寒がかけ上って行くのを感じた。

シオリも何か感じ取ったのか、迎え撃つ体制から避ける体制へと切り替えている。


構わず女兵士が剣を振る。

シオリが回避に切り替えているため、当然女兵士の剣は空を切った、…はずなのだが、なぜかシオリの左の肩当てが吹っ飛び、さらに、少し先の草までがバッサリと刈られたように消えて無くなった。

シオリの腕からは鮮血が流れ出ている。


魔法だ。

魔法を使ったとしか思えない。


すでにトキトはシオリの援護に走ってはいるが、まだ遠い。

一度は引いた二人の兵士が再びシオリを左右から取り囲むように近づこうとしている。


シオリは左肩を庇うようにしながら正面の女兵士を睨んでいて、他の兵士にまでは気が回っていないらしい。

シオリの左右から二人の兵士が斬りかかろうとしたその時、三本の光の矢がトキトの脇を通り過ぎた。


矢はシオリの左側の兵に命中、右側の兵士と正面の女兵士には当たらなかったものの、矢を避けた事で、一拍分の時は稼げている。

シオリはこの間に一歩下がって態勢を整えた。


そこへ、女兵士がさらに斬り込んでくる。

シオリはそれを剣で受け止めた。

シオリの剣に今までの勢いが見られないのは先ほどの攻撃が頭の中にある所為だろう。


女兵士と剣を合わせているシオリに、右側の兵士が更に横から斬りかかる。

その直前でようやくトキトが追いついた。

すぐさまその兵士を斬り伏せる。

兵士は寸前でトキトに気付き避けようとしたのだが遅かった。

避けた分だけ即死は免れたようだが、戦闘不能は間違いない。


「カイディ!」

それを見た女兵士が声を上げる。

恐らくその兵士の名前なのだろう。


トキトは構わず女兵士に斬りかかった。

しかし女兵士はあっさり一歩退き下がるとその攻撃を躱して退けた。

その横を電撃が掠めていく。

電撃は後ろで戦列に復帰しようとしていた兵士の一人に命中。

それが三発続いた。

前の電撃で碌に動けない状態の兵士をクミが冷静に狙ったのだ。


今度の電撃は一発づつ当てているので、さっきのモノより強力なはずだ。

これで彼らはしばらくは加勢ができない。

この間に確実に戦力を削いでおきたい所だ。

今まではこういう所で判断が甘くなり、後に仲間が危ない目に遭わせてしまう事が何度かあった。

同じことを繰り返すわけにはいかない。


トキトは唇をかみしめ、すぐ近くで倒れているカイディと呼ばれた兵士に止めを刺そうとしたのだが、その剣は女兵士の剣に弾かれた。

「させない」


女兵士はクミよりも少しだけ短い黄金色に輝くストレートの髪をなびかせてシオリよりも鋭い目つきでトキトを睨んでくる。

女兵士の顔を初めてまともに見る事になったトキトはその目に惹きつけられた。

この激しい剣戟を繰り広げていたのがこんなに美人であった事にも驚くが、それよりもその厳しい眼差しの方が強烈な印象を残している。


一瞬、女兵士に見惚れてしまったその隙に、女兵士は長い柄に付いた赤い石に触れながら何やらぶつぶつと唱え始めた。

すると、その赤い石がまばゆい光を発し、それと同時に剣先を靄のような光が包み込んだ。


「トキト!」

シオリに言われるまでもない。さっきと同じ攻撃だ。

トキトは女兵士の剣の軌道を読むとその軌道から大げさなほど大きく飛び退いた。


軌道上の草と地面が抉られる。

どうやら攻撃の間合いが伸びるようだ。

なかなか厄介そうな魔法だ。


「お前、なかなかやるな」

女兵士はゆっくりと剣を構えながら、あの鋭い眼差しでトキトの事を睨んでくる。


剣に目を落とすと彼女の剣の柄には四つの石が埋め込まれていて、その内の二つは赤い宝石だが、残りの二つはその辺に転がっている普通の石のように見えた。

見間違いでなければ先程彼女が触れていた場所にあるのは今は只の石だ。

そこから推測すると、あの赤い宝石が斬撃を飛ばす元凶で、それは使うと石になってしまうのだと考えられる。

それなら、魔法を使えるのは後二発だけのはずだ。


「なるほど、お前がベレツの奴を叩きのめしてくれたという男だな。あんな奴は殺してもらっても構わなかったのだがな。まあ、殺すまではできなかったという事か。そこそこ実力はあると認めてやるよ」


彼女はベレツのライバルなのだろうか、妙な対抗心を感じるが実力的にはベレツとほぼ同等という所ではないだろうか。

あんな剣を持っているのは少し厄介だが、一人でもなんとか対応できるのではないだろうか。

トキトはそんな風に分析していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ