非日常への始まりの1歩
「行ってきまーす!お父さん、朝ごはん作って冷蔵庫入れておいたから温めてから食べてねー。」
そう言って家から飛び出してきたのは、友奈だ。
当然行くのは学校だ。今、彼女は小学6年生。今日は3月16日、明日が卒業式で今日は1日中お楽しみ会という、小学生にとって最高かつ、卒業式が明日という少し悲しい日である。
しかし、友奈は小学校生活最後で思いっきり楽しもうと、今回は「お楽しみ会実行係」に立候補したのだ。なのでその準備を行わなければならず、今日は異例の7時に家を出るという羽目になってしまった。
学校までは家から歩いて5分という結構近い学校に通っている。
「おはようございます。6年5組草野友奈です。教室のカギを借りに来ました。」
すぐに担任の佐藤先生が教室のカギをもってきた。
「朝早いね。あんまり無理すると疲労で卒業式を欠席なんてことになるかもしれないぞ。」
少しいたずらじみた顔で、カギを渡してくる。
「無理なんてしてませんよー。この小学校で最後のお楽しみ会を、私は一生の思い出のトップ10に入るぐらい盛り上げて見せますよ!」
「期待してるぞ。準備ができたら、私を呼びに来てくれ。少し用意するものがあるからな。」
「何なんですか?用意するものって?」
「それは言えないが、お前たちに小学校での思い出になるように、ある物を用意している。でも君たちに期待されるとなんか、期待はずれなのもかもしれないから、あまりこの噂を広めるんじゃないぞ。」
そう言って先生は自分の席へ戻って言った。
「失礼しました。」
そして、教室へ向かう友奈の足取りは軽かった。そして友奈たちの教室、6年5組が見えた。そして、かぎ穴にカギを通す‥がカギが開いている。どうしたことかと中へ入ると、そこには異形な姿をした化け物がいた。
「こいつか。こいつが勇者か。」
「解らん。だが、この機械で測って少しでも危険度が高ければ連れて来いと言われている。この町で数値が高いのは後はこの人間だけだ。」
そんな風にしゃべっているのは1体は体全体が真っ黒、顔には3本の角、背中には羽のようなものが付いている。
もう1体は体が白い。1体目とは真逆だ。頭に角は付いていないが、代わりに全てを切り裂き破壊する、という武器があったならばそんな言葉がふさわしい爪がある。
少しくぐもった声で喋っているのはこの化け物なのか?
これは卒業式を間近に控えた私たちへのドッキリなのか?
そんな感じの疑問が友奈の頭で無数に広がる。
しかし、それらの予想はすべて間違っていたということが瞬時に分かる。カメラなんてない。もし隠しカメラがあるとしたら、少し職員室の雰囲気も変わっていたはずだ。
しかし、そんな様子はなかった。
なぜそう言い切れるのかというと、4年2組担任の鈴木俊平先生はあることで有名だ。それはカメラがあると知ればカメラの元へほとんど瞬間移動ができるという噂だ。(ただのナルシじゃん!とクラスの友達との笑い話になったこともある。)
しかし鈴木先生は少しもそんなそぶりは見せなかった。だから、この学校にテレビが来ているわけはない。鈴木先生が気づいていないだけかもしれないが、その確率は皆無に等しい。なぜならドッキリとは驚かされる人間以外には全て事情が話されるというのが普通だ!と友奈は思っている。
だから友奈は決心した。ゆっくり扉に近づき‥。
(いまだ!)
ダッと思いっきり地面をけり廊下を走りだす。
「あいつ逃げたぞ。おうぞ!」
そう言って羽の生えた化け物のほうはすごいスピードで追ってくる。
しかし、友奈は陸上部に入っていたことが幸いとして、足は速い方だ。
しかし、そんなことを忘れてしまうほど、友奈は恐怖におびえていた。おってきている。つまりこれは正真正銘ドッキリなどではない。
だが、職員室に逃げ込めば、助かるかもしれない。そんな期待を寄せつつ、職員室が見えた。
やった。これで助かる。そう思った瞬間。
ガクッと体が動かなくなった。
「もう。あそこに逃げられたら、お前の回収が面倒になる。私にこの奥の手を使わせたことはほめてやろう。」
そう言っているのは体が白色の化け物の方だ。
「じゃあぼちぼち帰るとするか。『ゲートリンク』地球から、」
数秒の間ののち、
「‥ファイシクルノ」