第27話 カラクリ
第二部もあと少し! ……第一章、かなり長いですね。すみません(汗
という訳で、主人公の戦闘シーン全てカット。ごめんよ! 第三部では見せ場あるからね!
……え、第三部まであんの? と思った人。あります。
西側戦闘区域、医務区画。
06番病室。真っ白なシーツのベッドの一つに、一人の少年がうつ伏せに寝かされていた。
体格の良い、茶色の髪の少年――聖箆院晴牙だ。
ベッド横の丸椅子には縁無し眼鏡の少女が座っていて、包帯が幾重にも巻かれた彼の背中を見つめていた。
静かな時が流れる。
この司令基地の建物の外では、今も堕天使との戦争が行われているなんて嘘みたいだ。自分も数分前まで戦場にいたんだ、と分かっていても。
数分前、創造術師協会からの戦闘部隊が到着した。怪我を負った晴牙はすぐに医務室に運ばれ、ある創造術師により治療は既に終わっている。
彼の命に別状はない。そのことに少女――ノイエラは安堵したが、彼が目を覚ました時、どんな顔をすればいいか分からなかった。
「……代表とエネディス先生、大丈夫かな……」
ノイエラは窓の外を眺めながら呟いた。(司令基地は野戦病院も兼ねており、集中治療室は地下だが、医務区画は地上にある。)
ミーファとルイサはまだ堕天使と交戦中だ。流石は《暦星座》、体力切れも遅く、今は協会の戦闘部隊に混ざって奮闘している。
ノイエラは一般の学生創造術師だ。堕天使と戦って良いのは《暦星座》か正規創造術師のライセンスを持った者だけ。それ以外の者は通常、危険と判断される。
彼女には特異な能力がある。彼女なら足手纏いどころか存分に活躍しただろうが、彼女が戦場に残れない理由は他にあった。特異な能力があるからこそ、彼女の能力をあまり公にするのは良くないと、ルイサは言ったのだ。
創造術師協会や創造術宗教団体は、堕天使の殲滅を掲げ、それに躍起になっている。ルイサが言うには、ノイエラの能力がバレると彼女が協会や宗教団体に狙われる危険があるかもしれない、とのこと。学院やその生徒には何者も干渉出来ないが、その『聖域』も協会や宗教団体の前ではあまり頼りになるものではなく、これについてはレゼルにも同じことが言えるらしい。
『出来るだけ、その能力――堕天使行動予測能力は隠しておけ。ノイエラ』
ルイサの言葉が甦る。その助言からすると、彼女は協会や宗教団体にはあまり協力的ではないようだ。まぁ、協力的な人物ならば、《雲》の学院編入など認めないだろうから、それは分かっていたが。
堕天使行動予測能力。
ノイエラの持つ、特異な力。協会とか宗教団体とは関係無しに、ずっと隠してきたもの。
「レゼルさんは何故かこの力のことを前々から分かっていたみたいだったけれど、どう思っているのかな。代表も、セレンさんも、エネディス先生も……」
ノイエラは再び、晴牙の背中を見た。包帯に血が滲んでいる、ということは無いが、その下には確かに、ノイエラが負わせてしまった傷がある。
「気持ち悪いって……思わなかったかな。ねぇ、副代表……貴方は、どうですか?」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
西側戦闘区域のエントランスフロア。
ソファに座ってじっとしていたセレンは、入り口にレゼルとルチアの姿を認めて立ち上がった。
「セレン!」
銀髪碧眼のレゼルが、慌てて駆け寄って来る。
「腕の生体機械が消失した感覚があったが……やっぱり消失していたか。異常は無いか? 痛みは?」
レゼルは表情を歪ませて、セレンの右腕を見た。今は右肩から右肘にかけて白い布を巻いて、コードや金属の鉛色が飛び出す切断面を隠している。
「大丈夫です、レゼル。異常はありません」
「そうか。良かった……」
力強く頷くと、彼は心の底から安心した微笑みを浮かべた。
「すぐ創造してやるからな」
レゼルは慎重にゆっくりと、右肘の布を取った。
「大丈夫なのですか、こんなところでこの生体機械を晒して……」
「問題ない。監視カメラの類は誤作動させてある」
「……そうですよね」
「だが、司令室のモニターにはセレンのことが映ってしまったな……」
レゼルはセレンの二の腕に両手を当てながら、苦い顔になった。
セレンの身体のことは、当然だが隠しておきたい。だから今、彼女は協会の創造術師部隊がいる戦闘に参加せず、エントランスにいるのだ。
だが今回、西側戦闘区域の司令室にいた数人の創造術師はモニターを通して知ってしまっただろう。セレンの、機械の身体のことを。
「……殺すしか……」
「こらこら、レー君? 物騒な呟きは君に似合わないぞ?」
「いや、ルチアさん、残念ですがそれは心の底から否定させて頂きます」
セレンの身体のことを隠しておきたい理由は様々だ。彼女自身やレゼルの感情など個人的な理由もあれば、ノイエラの能力を隠すのと(ルイサなら隠すだろうとレゼルは思っている)同じ理由もある。
特に、セレンの身体を調べられるのは非常に困るし、調べようなどとしようものならレゼルは流血沙汰も厭わないだろう。何より、命を支える生体機械という高度過ぎる創造術に《雲》が関わっているとなれば、世界が混乱する。《雲》は下等な生物だという認識に凝り固まっている今の人間にとって、《雲》などに劣っている、という事実は中々受け入れがたいものだ。
「ともかく、セレンちゃんのことを知っちゃった創造術師はNLFの方で何とかするよ? いっそ、NLFに引き込んじゃっても良いしね?」
「あ、ありがとうございます、ルチアさん」
ウインクして見せるルチアに、レゼルは小さく頭を下げた。
「……レー君、あたしがいなかったらどうするつもりだったの?」
「そりゃ、ここのデータベースぶっ壊して、セレンの身体を知った創造術師は再起不能に――」
「はい、ストップだよレー君! そんなことより早くセレンちゃんの腕、治してあげたら?」
「勿論」
レゼルはセレンの方に向き直ると、彼女の腕に当てた両手に融合体を廻らせた。
血のように紅い閃光が瞬く。
次の瞬間にはセレンの右腕は戻っていた。普通の人間となんら遜色のない、細くて白くて柔らかい肌の、少女の腕がそこにある。
「……何時も思うけど、レー君の機械系創造は本当に凄いよねぇ?」
「俺はセレンの生体機械を構築・創造するだけで、それを維持してるのは殆どセレンですけどね」
レゼルはルチアを振り返って小さく苦笑した。
顔の向きを戻し、
「大丈夫か、セレン?」
自身の右腕を上げ下げするセレンに問い掛ける。
「はい。問題は何一つありません」
「そうか」
「……ですが、レゼル。その、ハルキが……」
セレンの、珍しく歯切れの悪い言葉に、レゼルは顔を若干強張らせた。
「……ハルキは医務区画か?」
「はい。今はノイエラが付いています」
再び、レゼルはルチアに向き直った。
「あの、ルチアさん――」
「行ってきなさい」
レゼルの言葉を遮ったルチアの声と表情は、優しい『お姉さん』のものだった。
「友達なんでしょ? あたしのことはいいから」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
エントランスの奥、エレベーターホールから廊下を走っていく少年を見送り、ルチアは吐息を漏らした。
「相変わらずだね、レー君は?」
セレンがこちらを振り向いた。
「《雲》という存在であるが為に、彼は自分を《雲》と知りながら一緒にいてくれる、接してくれる人間を過剰に大切にする。まるで割れ物を扱うみたいにね。普段は全然、そんな面を見せないのに。レミルさんの影響もあるんだろうけど、孤独である《雲》にとって、自分を認めてくれる存在というのは、きっと――」
「――掛け替えのないもの」
気付けば、セレンがその綺麗な緋色の瞳で見詰めてきていた。
「……そうだね。その掛け替えのないものの中に、私も入っているといいな?」
「入ってます」
「え?」
「ルチアさんも、入ってますよ」
セレンの言葉に、思わず頬が紅潮する。
「そ、そっか、良かった! ――じゃあ、セレンちゃんが無事ってことも分かったし、面倒なものも抱えてるから、あたしはこれで!」
セレンに向かって片手を上げて、ルチアは司令基地を後にした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ハルキ!」
遅れて自分を追ってきたセレンに教えてもらって、晴牙が寝ているという医務区画の病室に入ると、晴牙のベッドの横椅子にノイエラが座っていた。
「レゼルさん? それにセレンさんも……」
「ノイエラ、ハルキは?」
レゼルがベッドに駆け寄りながら訊くと、彼女は小さく微笑んだ。
「命に別状はないそうです。学院長に診てもらいましたから」
「学院長? そうか、もう学院長もここにいるのか。ということは、ウィスタリア様も……」
「はい。協会の戦闘部隊が到着すると同時に、学院長と王女様も到着しました」
説明してくれたのはセレンだった。
レゼルはセレンとノイエラの話を聞いて、やっと強張らせていた表情を崩した。
学院長――ミーナ・リレイズは、後衛の創造術師。リアガードとは、堕天使と戦う前衛の創造術師を支援する役目にあるが、ミーナと共に戦った創造術師の生存率は実に90%以上を誇る。「天才」という二つ名の他に、彼女は「戦場の女神」とも呼ばれるほどの創造術を使った医療技術を持っているのだ。
そしてこの国の王女様にして「歌姫」、ウィスタリア・ダウン・ディブレイクは、《暦星座》の中で唯一の結界師である。彼女の結界は強固で頑丈、更に堕天使に対しての効果も凄まじい。
この二人がいてくれれば、西側の戦争もじき終わるだろう。重傷者は出ても、死亡者はきっと出にくい筈だ。
そこに「神童」と「死神」も加わるとなれば、堕天使に勝ち目は皆無と言い切れる。
「あの、ところで……」
「ん?」
ノイエラが何故か言いにくそうに言葉を濁した。
「セ、セレンさんの腕、治ったんですね。……失礼かもしれませんけど、セレンさんの身体は……」
ああ、とレゼルは納得したように頷いた。
「二年前にちょっとな。あまり他人に知られたくないから、隠しておいてくれるか?」
「あ、それは勿論っ」
慌てたように、ノイエラは首をぶんぶんと縦に振った。
「……私も、その、隠しておきたいことはありましたし……」
ポツリと呟く彼女は、眼鏡の奥の瞳に小さな怯えを湛えているように見えた。
「……隠しておきたいこと……君の力のことか?」
「……はい。堕天使の行動が予測出来るなんて、ちょっと、いえ……かなり気持ち悪いじゃないですか」
何処か遠くを見詰めているような目で、ノイエラは苦笑した。
「レゼルさんもセレンさんも、そう思いませんか?」
レゼルとセレンは、きょとんとした顔を見合わせた。
そして声を揃えて、
「「いや、別に?」」
次にきょとんとするのはノイエラの方だった。
「え?」
「あー、実はさ、ここだけの話なんだけど。レミ姉もノイエラと似たような力を持ってたんだよ。まぁ、ノイエラのほど便利じゃなかったんだけどな」
「そうなんですか……!? 『最強』が……」
「それに、私達は貴女の力に助けられています。感謝こそすれ、忌むなんて言語道断です」
「レゼルさん……セレンさん……」
セレンは震えるノイエラの肩に手を置いた。
相変わらず、顔の生体機械の所為で表情が創れない彼女だが、声だけは優しさの籠ったものだ。
「ノイエラ。きっとミーファもエネディス先生も同じ気持ちですよ。だから、無理に事情を話すことはありません」
ぽろ、とノイエラの瞳から一筋の涙が零れた。
「……レゼル、泣かした」
「ちょっと待てセレン! 何で俺なんだよっ!?」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「くっ、くくっ……あは、あはははははははっ!」
「……笑い過ぎだぞミーファ」
「や、だって……あははははっ――いっ、痛だだだだだだだッ」
晴牙の隣のベッドで笑い続けていたミーファだったが、その笑い声は突如悲鳴に変わった。
セレンが彼女の腕の傷口にガーゼを押し当てたからだ。
「ちょっとセレン! もう少し優しく出来ないの貴女はッ」
「隣でハルキが寝ているのですよ? 静かにして下さい。それに、そんなに笑うのはノイエラに失礼です」
やや涙目になって抗議したミーファだが、セレンの正論に一蹴されて口を噤んだ。
「そうですよ代表。そこまで笑うなんて……」
そして晴牙のベッドの横椅子ではノイエラの悲しそうな表情に出会い、ミーファは早口になって言った。
「だ、だって! 気持ち悪いとか思う訳ないでしょ! どんな力があったってノイエラはノイエラだもの。そんなことで悩んでたなんてって思って……」
「そんなことって何ですか! 私は真剣に」
「あー、はいはい。ごめんごめん、悪かったわ。でも、気持ち悪いっていうなら、紅茶をノンシュガーで飲むレゼル君の方が気持ち悪いわ。人間じゃないわ」
「お前は今、紅茶愛好家の大半を敵に回したぞミーファ。その言葉の通りなら今の世界人口の半分以上は人間じゃなくなってるが?」
壁に寄り掛かって半眼になるレゼル。
「一つ言わせて貰いますが、貴女の甘党は異常です。貴女の方が人間じゃないです」
更にセレンからも追い討ちを喰らい、ミーファはベッドに沈み込んだ。
「何よぅ……」
「ミーファ、まだ手当てが終わっていないのですが」
横になってシーツを被ってしまったミーファをセレンが揺する。
ガバッ、と彼女は上半身を起こし、
「だから痛いってば! 私怪我人なのよ! 治療なら後でお母さんにして貰うから貴女も休んで――」
「ああ、私のことなら心配要りませんよ。機械ですし、この通りもうすっかり直ってますから」
ガーゼテープを持った右腕を上げて見せるセレンに、ミーファは何と言って良いのか分からないという表情を浮かべた。
彼女の向かいのベッドからも、同じような表情が向けられる。
「それにしても驚いたよ。機械人間なんてな」
ミーファもそうだが、ルイサも白のゆったりとした病院服を着てベッドの上にいる。
「しかも機械部分は創造術だそうじゃないか。四六時中、一時も欠かさず創造術を行使し続けるなんて、今度はどんな絡繰りだ? 普通ならエナジー切れで死んでるか植物状態になっているはずたが。いや、この場合、『絡繰り』ではなく『機関』――と言った方が良いのかな?」
「……ミーファもそうですけど、エネディス先生、元気ですね」
数分前まで堕天使と死闘を繰り広げていたとは思えない様子の二人に、レゼルは再び半眼になりながら訊いた。
二人はぱちくりと一つ瞬きをし、
「ノイエラやハルキ、セレンの力もあったもの」
「まぁ、途中から《暦星座》が四人もいたからな」
「……成程」
と、納得したように見せながら、《暦星座》の優秀さを再確認したレゼルの後ろでは、セレンが無表情にミーファの手当てを続け、ノイエラは苦笑していた。
因みに、ルイサの手当てはノイエラが担当し、既に終わっている。彼女は終始下位個体の堕天使と戦っていたからだろう、ミーファより怪我が少なかった。
「で、セレンの身体にはどんな機関が?」
にっこりと笑うルイサに、レゼルは深い溜め息を吐いた。
話をずらすな、と暗に言っている彼女の笑顔に押され、彼は口を開く。
「……セレンの生体機械を創造・構築しているのは俺の月詠です。ですが、創造物――生体機械を維持する為の融合体の供給はセレンが行っています」
「て、ことは……二人掛かりの創造術ってこと?」
目を見開いたミーファの問いにレゼルは頷いた。
「まぁな。俺とセレンのエナジー性質はほぼ一致しているから、それが可能なんだ」
「エナジー性質の一致、ですか? でも、エナジーの性質に同一なものは無いはずですが……」
ノイエラが困惑顔で訊いてくるのに、レゼルは苦笑いで答えた。
「勿論、完全に同じって訳じゃない。『ほぼ』一致、というだけだ。多少のエナジー性質の差は、融合体にすることで誤魔化してる」
「……レゼル君、ちょっといいか」
「何ですか、エネディス先生?」
レゼルはミーファの向かいのベッドに視線を向けた。
「学院で検査したデータでは、確か君とセレンのエナジー性質は全く違うものになっていたと思うんだがな」
「ああ……寮部屋の扉に付いているエナジー感知システムのデータですね」
「目敏いな……」
「それなら、完璧に誤魔化してありますよ。エナジー感知システムも所詮機械ですからね、セレンの体内に内蔵されているスーパーコンピュータでハッキングすれば――」
レゼルの飄々とした言葉に、ルイサの口角が吊り上がった。
「ほう? ハッキング、だと?」
だがレゼルは彼女の鋭い表情にも弱気になることなく、
「はい。だって、セレンの身体のことを隠したいと思うのは当たり前でしょう? 徹底的にやりますよ、俺は」
ルイサは深い溜め息を漏らした。セレンを除いて他の者は、レゼルの話に目を丸くしている。
「学院のコンピュータがハッキングされるなど、前代未聞だぞ。セキュリティサーバーは何をやっていたんだ、全く。――レゼル君、悪いがこの話はミーナに伝えさせて貰う」
「別に良いですよ。もうセレンが機械人間であることはここにいる皆には知られてしまっている訳ですし、学院長も悪いようにはしないと思いますから」
「まぁな……ミーナだったら『え、何、セレンちゃんが機械人間? 何それ、凄くない? 間違いなく凄いよ! よし、ハッキングに関しては不問に付す! 情報規制もしてあげようじゃないか!』くらいは言いそうだしな……」
「いや、学院長もエネディス先生も、話が分かる人で助かります」
これはレゼルの本心から出た言葉だ。彼が《雲》であったりする事情から、彼女ら二人は、セレンの身体のことを隠す訳を的確に素早く理解してくれる。
「それで話は戻りますが、俺とセレンは創造術を行使し続けているのに何故エナジー切れにならないのか――。これはただ単に二人掛かりの創造術であることと、俺の創造術が月詠であることが関係しています。しかし二人掛かりと言っても、セレンの生体機械創造は俺より彼女の方に負担が掛かっているので、エナジー量を考えるとセレンは生体機械を維持し続けながら違うものを創造することは出来ません」
「……だから、前々から生体機械の内部に武器を創造しておくのね。それと、そのブーツも。所謂セレンは今、創造物の維持は出来ても構築は出来ない状態にあるのね?」
「ああ、そうだ」
ミーファの真剣そのものの問い掛けに、レゼルも深く頷く。
しばし06番病室には沈黙が立ち込めた。
そして誰からともなく、ほぅ、と息をつく。
「……私のことはもういいでしょう。それより、学院長はまだ来ないのですか?」
ミーファの手当てを終えたセレンが呟くように言った、その時だった。
病室の扉が勢い良くスライドして、
「ミーファああああぁぁぁぁッ!!」
金髪の、ミーファによく似た女性が飛び込んで来た。
読んで下さりありがとうございました。第二部も残すところあと一話となります。来週も普通に更新!