表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
血染めの月光軌  作者: 如月 蒼
序章
3/61

第0話 出会いと別れの記憶

 プロローグから少し残酷な描写がありますので、苦手な人はUターンする事をお勧めします。

 全くの新人なので、至らない所が多々あると思いますが、宜しくお願いします。

 血の海の中。

 緋色の髪を持つ少女が、その髪と同じ緋色の瞳で、見詰めてきた。

 少女は、誰が見ても見惚れてしまうような、美しく、それでいて可愛らしさのある外見をしていた。

 彼女の身体(からだ)は、限りなく歪だというにも拘わらず。

 ――それは、大切な人との出会いの記憶。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 怖い。

 怖い、怖い、怖い、怖い、恐い――

 そして、とても寂しい。何でも良い。温もりが欲しい。

 そんな事しか考えられなくなった。自分の瞳から涙が溢れていることにも気づかないまま、少女は震える身体を自分の腕で抱き締めた。

 ――私、独りぼっちだ。 

 今更ながらその事に気付いて、少女は絶望に囚われそうになった。

「どうしたの?」

 だけど、少女の瞳が光を無くす前にそんな声が掛けられた。

 優しそうな、温かみのある、少年の声だった。

 ――それは、大切な人との出会いの記憶。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 目の前で一体何が起こったのか、少年は理解出来なかった。

 彼の脳は、理解する事を頑なに拒んでいた。

「……生きて……」

 掠れた、小さな声は、少年の前で両腕を広げて仁王立ちする女性のもの。

「レミ姉……? 何言ってるの?」

 少年に「レミ姉」と呼ばれた女性は、少年に背中を向けている。

 だから少年には見えなかった。

 彼女が、少年の声を聞いて、柔らかく微笑んだのを。

「……早く、逃げて」

 先程の声とは違い、はっきりした女性の声。

 それを聞いて、少年はやっと、目の前の光景を理解する事が出来た。

 目頭が熱くなり、視界がぼやけた。止めどなく溢れる涙を拭う余裕など、少年にあるはずが無かった。

「……泣い、てるの? こら、駄目だぞ……男の子は、あんまり泣いちゃいけな……」

 女性の言葉がふいに途切れる。

「……レミ姉?」

「……私、は……」

「え……?」

 女性が、肩越しに後ろを振り向く。ふわ、と長い銀髪が揺れた。

 彼女は表情を変えてはおらず、美しい微笑みが少年を捉えた。

 今の女性の姿は、さぞかし絵になった事だろう。

 ――彼女の左胸が、淡く発光する、化け物の触手に貫かれていなければ。

「私は……守れた、かな? 大切な、人を……」

 女性は眩しいものでも見るように目を細めて口元に笑みを刻みながら、少年を見詰めている。

 しかし。

 ぐじゃっ、という生々しい音と共に、女性の胸を貫いていた触手が引き抜かれた。

 糸の切れた人形のように倒れる女性。

「あ……あ、あぁ……」

 少年の口から抑えきれない声が洩れる。

 そして。

「あ、あ、あ……あ、あああああああああぁぁぁぁ……!!」

 喉が焼き切れる程の声量で、少年は絶叫した。

 ――それは、大切な人との別れの記憶。

 感想・ご指摘など頂けると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ