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血染めの月光軌  作者: 如月 蒼
第一章 創造祭編
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第7話 THE WORLD SYSTEM.

 今回はちょっとモノローグが多いです。すみません。

 創造学院本校舎四階、一年生のフロア。

 レゼルが自分のクラスになったA組に行く為に廊下を歩いていると、当たり前かもしれないが注目されまくった。

 しかし、それは良い意味での注目では決して無い。

 向けられる視線は様々だ。灰色の髪と漆黒の瞳という、忌々しさの象徴である容姿に対する嫌悪感を含んだ視線。本当に創造術(クリエイト)が使えるのかと訝る視線。未知のものに困惑し、畏れている視線。好奇心が隠しきれない粘つくような視線。

 気分の良いものでは、無かった。

 勿論、こんな視線はどうって事はない。覚悟だってして学院に来ている。

 だがどうしても、苛々してしまう。気になってしまう。

 向けられる視線の中に含まれるであろう沢山の感情から、悲しさや怒りといったものは起こらない。ただ、視線を向けられているという事実があるのが落ち着かない。これも癖、というか(さが)である。

 窺い見るだけで話し掛けては来ないのだから、放って置いてくれれば良いのに、と思っていると、何時の間にかA組の前まで来ていた。

 廊下に生徒達が出てきていたし、教室内も騒がしい雰囲気があるから、多分今は授業前の朝の自由時間という奴だろう。

 学院長室から来て、一時限目くらいは始まっているかもしれないと思っていたのだが、そんな事はなかったようだ。

 学院長室とは違ってこちらは自動ではないが、一切音を立てない扉を横に引く。

 音が無かったから、生徒達がレゼルに気付くのは遅かった。というか、気付いたのは窓際の席に座っていたミーファがレゼルの名を呼んだ時だった。

 何故か慌てたように走り寄ってくるミーファは、周りの視線など気にしていなかった。

「おはよ、レゼル君」

「おはよう」

 朝の挨拶を交わして、ミーファはやっと落ち着いたようだった。

「中々来ないから心配してたのよ。何してたの?」

「いや、学院長に呼ばれてて……ミーファ、聞いてなかったのか?」

「聞いてないわ。お母さん、昨日忙しかったみたいで」

 ミーファの台詞に、それはそうだろうな、と思ったが勿論口には出さなかった。

「ハルキも何も言ってなかったのか? アイツは知ってる筈だけど」

 レゼルが問うと、ミーファは見て、という風に顎を動かした。

 その動きと彼女の視線を追うと、一番後ろの真ん中の席で机に突っ伏し爆睡している晴牙の姿。

「創造祭の準備、遅くまで頑張ってるのよ。最近は何時もああなの」

「ああ、成程」

「私もハルキに負けず頑張らなきゃね」

 気合いの入った顔で頷くミーファ。

「ところで、俺の席とかって決まってるのか?」

「私の隣よ」

 ミーファは即答し、笑顔でレゼルを手招いた。

 彼女の席は窓際の後ろから二番目。その右隣の席に座らされ、ミーファも自分の席に腰を下ろした。

 彼女はレゼルの方を向いて座り、椅子の背凭れに右腕を乗せている。

 彼女の背後には窓。それを通して見える景色は暗い。朝、という時間だというのに、空には星々とやっと雲から抜け出した月が瞬いている。

 世界では、当たり前の光景。誰も、本物の「朝」というものを知らないのだから。

 そこでミーファはチラチラと教室内に窺う。何だ、と思っていると彼女は小さな声で囁いてきた。

「……何か、私達、見られてない?」

「……今頃気付いたのか?」

 見られるのは当然、という考えは無いのだろうか。

 編入生など珍しいどころかいないに等しい創造学院に編入生が来たってだけでも、編入生が注目されるのは自明の理だろう。ましてや、その編入生が《(クラウド)》の容姿をしているというのに創造術が使えるともなれば、生徒達の意識が編入生に向くのも、仕方の無い事。

 こんな事が分からない程、ミーファは脳の能力が乏しい訳ではない筈なのだが。そうでなければ、一年代表にはなれないだろう。

 レゼルが眉を(ひそ)めていると、彼女は視線を彼に固定したままかぶりを振った。

「違うわ、レゼル君が注目される事は私だって納得出来る。でも、何か私まで見られてない?」

 そういえば、確かにミーファもジロジロと見られていた。レゼルと話をしているから、にしては少し彼女に向けられる視線の量は異常に多い。

 ハルキならその理由を知っているかもしれない、と右後ろを振り返る、が、彼は未だにスリープ中だ。

 前に顔を戻すと、ミーファの前の席にストレートショートの髪の、縁無し眼鏡を掛けた女子生徒が座ろうとしているところだった。

「おはよう、ノイエラ」

 レゼルが、まるで彼女が教室に入ってきた事をとっくに知っていたように挨拶する。

 レゼルと同じように晴牙を見ていたミーファが、彼の声に顔の向きを元に戻した。

「おはよ、ノイエラ。今日は遅かったわね」

「おはようございます、代表。レゼルさん。――今日はちょっと、寝過ごしてしまって」

「ノイエラが寝坊? 珍しい事もあるものね」

 ミーファは少し目を丸くした後、先程感じた疑問をノイエラに話して聞かせた。

 すると彼女は可笑しそうに口に手を当ててクスクスと笑った。

「昨日、代表が実技試験でキレたじゃないですか。それで、色々噂が広がっているみたいですよ?」

「噂って、どんな?」

 レゼルのこの質問は、ただ単に話を広げる為のものだった。

 だが、ノイエラからの答えは、レゼルが予想もしていないもので、ミーファを驚愕、後何故か赤面させるものでもあった。

「そうですね。例えば、代表がレゼルさんに一目惚れした、とか。だから代表はキレたんだって」

「……!?」

「……」

 ミーファが声にならない悲鳴を上げ、レゼルが呆れ返ったような、うんざりしたような表情をした。

 レゼルにとって予想外ではあったが、ただそれだけだ。彼の眼前で耳まで真っ赤にしているミーファを、実に少女らしい初心(ウブ)な反応だなと感じながら、彼は口を開いた。

「ありもしない事を、よくもまぁ……」

 溜め息混じりの言葉を発した途端、女子二人から、レゼルよりも深い溜め息が返ってきた。

 ミーファに至っては、顔の赤色を一瞬で消し去っていた。

「……何だ?」

「いえ、何でもないわ」

「何でもありません」

 次々に首を振る二人を珍しく困惑してレゼルが眺めていると、教室前方の入口からルイサが入ってきた。それと同時にチャイムが鳴る。(因みにレゼルは後方の扉から入った。)

 昨日と同じパンツスーツ姿で、顔には水色の眼鏡。髪型も変わらず、白い(うなじ)を晒したピンで留めたもの。

 そして彼女の後ろから、トテトテと小柄な少女が付いて来ている。

 緋色の長髪に瞳、誰もが目を奪われる絶世の美少女。

 美人教師と美少女補佐は教壇に上がって教室を見渡した。

 その時には既にレゼルもミーファもノイエラも椅子にきちんと座り直し、レゼルやミーファを見ていた生徒達も自分の席に戻っている。

「おい、副代表、眠いのは分かるが起きろ!」

 チャイムの音も意に介さず睡眠継続中だった晴牙を目敏く発見したルイサが怒鳴る。

 彼が机から顔を上げたのを確認して、彼女は話出した。

「皆知っていると思うが、今日からこのA組に編入生が入る事になる。――ソレイユ、前に出て来い」

 名字で、有無を言わせない口調で呼ばれ、レゼルは席を立って教壇に上がる。

「彼が編入生のレゼル・ソレイユだ」

 ルイサが視線は前を向いたまま紹介してくれる。

 レゼルは生徒達の方に向き直り、数々の視線を受け止めた。

 ミーファ、晴牙、ノイエラ以外のそれは全て、悪意か嫌悪か恐怖か好奇心の含まれた、(さぐ)るようなものだった。

 もう気にしない事に全力で努めようと決めたレゼルは、それらの視線を意識からシャットアウトした。

「レゼル・ソレイユです。宜しくお願いします」

 極めて事務的な言い方で自己紹介を済ませ、口を噤む。

 ルイサが「それだけか?」と言うような表情を向けてきたが、気付かない振りをした。

「ソレイユは、ちゃんと創造術が使える。お前達にそれだけは言っておく」

 ルイサは、近くにいるレゼルにしか分からない、小さな溜め息を漏らした後、そう言った。

 お前達、とは生徒達の事だ。

「……」

「……」

 生徒達が、無言で顔を見合わせる。戸惑いや困惑、そして嫌悪や不安も透けて見える様子だった。

「それと、こっちにいるのはセレン。今日付で私の補佐役として働いてくれる事になった」

 ルイサは自分のクラスの生徒達の様子に構わず話を続ける。

 紹介されたセレンは、ぺこりと可愛らしく頭を下げた。

 男子の間にも女子の間にも、ほんわかとした空気が漂うが、それも一瞬だった。すぐに、ピリピリした雰囲気が戻る。

「ソレイユ、席に戻って良いぞ」

 レゼルはルイサのその言葉に素直に従って席に戻った。粘つく視線が背中に刺さるのを感じながら。

 彼の隣の席では、ミーファが不機嫌そうな顔をして窓の外に目を向けていた。

「……ミーファ? どうした?」

 レゼルが不思議に思って囁くと、

「……別に。皆の態度が気に入らないだけよ」

 苛々していて棘がある声で、彼女は呟いた。

「では、授業を始める。(みな)、机の個人サーバーに電源を入れろ」

 ルイサの言葉を聞き、学院の外とは大き過ぎる差のある持ち前の科学技術を使用して机に設置された情報端末(サーバー)に、慣れた手付きで電源を入れて空中投影ディスプレイを立ち上げながら、レゼルは隣の席に座る金髪ポニーテールの少女を眺めた。

 窓に、美少女の不機嫌な顔が映り込んでいた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 今日の創造学院の授業は午前中だけになった。

 勿論、それには理由がある。

 リレイズの街・北側戦闘区域に、上位の《堕天使(だてんし)》が堕ちるという情報が学院に舞い込んできたからだ。

《堕天使》。

 それは、この世界に神様が創造術を贈り、それが発達し始めた頃に空から堕ちてきた異形の怪物だ。

 空から堕ちてきた、バケモノ。

 その姿形(すがたかたち)は様々だが、どれも吐き気を誘うような造形をしている。そんなモノが元は天使だったと言っている《堕天使》という名称を付けた人間は余程皮肉なネーミングセンスを持っていたに違いない。

 そして、そんなバケモノが空から時間も場所も全てランダムに堕ちてくるのだから、地上で暮らしている人間にはひとたまりもない出来事であり災厄だ。

 しかし、人間も無抵抗だった訳ではない。そうだったら人間はとっくの昔に絶滅している。日の昇る朝が来なくなって世界から消えていった植物や昆虫、魚、動物のように。

《堕天使》に対抗したのは、今よりもっと数が少ないながら世界の中心的存在だった創造術師(クリエイター)達だった。

 結果としてそれは正解で、《堕天使》に対抗するには創造術が一番だった。というより、怪物には創造術しか効かなかった。

 創造術師達は『能力』創造や創造武器を使い、《堕天使》との戦闘技術を体系化した。

 即ち、己を強化し創造武器を振れ、というもの。一言で言ってしまえば、それが《堕天使》に創造術師が挑む時の戦術(は言い過ぎだが)であり、定石(セオリー)なのだ。

 そして次に創造術師達は、街の上空から《堕天使》が堕ちてきて街が壊滅、なんて事のないようにする為、街の四方(北、南、西、東)に戦闘区域という、創造術師以外は立ち入り禁止の、《堕天使》と戦い滅する目的の領域を設けた。

 戦闘区域の上空には、創造術師達が《誘導結界(ゆうどうけっかい)》という結界を創造する。

 これは堕ちてくる《堕天使》の場所を戦闘区域だけに誘導するというもので、現在、創造術師が何人いても足りないという状況は、《誘導結界》を創造し維持する事の出来る創造術師が圧倒的に不足している事による。

《誘導結界》を創造する事だけを生業とした創造術師もいる程で、彼らは創造術師の中でも結界師(けっかいし)と呼ばれる。学院にも結界師を育てる「防衛科(ディフェンス)」なるものがあり、戦闘を引き受ける「前衛科(ヴァンガード)」や、サポート担当の「後衛科(リアガード)」に二年になると分かれるシステムになっている。

 つまり、全ての街の周囲には戦闘する為の場所がある訳だ。

 防衛担当の結界師による《誘導結界》によって強制的にそこに現れる《堕天使》を、前衛である創造術師が攻め、前衛を後衛がサポートする。

 無論、その「戦場」に出るのは正規創造術師(プロ)の資格を持った者達の中でも、三つの役割のどれかの熟練者(エキスパート)だけだ。

 そういう反撃システムがある事で人間は生き延びてきたのだ。

 だから、戦闘区域を作れないような、古代語では村とか集落とか呼ばれるであろう小さな街は、《堕天使》にとっくの昔に壊滅させられている。現在、小さな街などはないのだ。

 しかし、戦闘区域があったとしても、創造術師が負けてしまえば街は終わりだ。そんな事は普通に起こる現象で、人間は死と隣り合わせという事実を実感しないまま、日々を過ごしているだけにすぎない。

 ただ、《誘導結界》――というより、街には《堕天使》があまり堕ちてこない。平均して一年に一回が精々、それも強くない下位個体で群れで堕ちてくる事も稀。

 その代わりなのか、街も戦闘区域も無い、街と街の間の荒野のような場所には、結構な頻度で怪物が堕ちてくる。

 そうなれば、街と街の間を《堕天使》が跋扈(ばっこ)する事になり、国家間どころか街同士の貿易・交流も出来ない事態になるが、一流の正規創造術師(プロ)の中でも熟練者(エキスパート)の中でも一線を画す創造術師のみで構成された組織が存在し、荒野に堕ちる《堕天使》を殲滅して世界を廻る。その為、今は何とか、国家間や街同士の貿易・交流は続けられているのだ。

 話は戻るが、本日、創造学院が午前中だけになったのは、滅多に街には堕ちて来ない《堕天使》の、しかも上位個体が《誘導結界》の歪みによって「堕ちて来る」事が観測されたからだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 編入早々、こんな事になったレゼルは、他の生徒と同じように寮に戻って来ていた。

 現在の時刻は正午を少し過ぎた所。

 という訳で、彼はセレンや友人達と共に寮の食堂に来ていた。

 友人というのは、ミーファ、晴牙、ノイエラの三人。

 彼らは周りの視線や態度など気にせずにレゼルに接してくれている。それはちょっとだけ、レゼルに温かいものを与えていた。

 セレンは、ルイサに「レゼル君の所に戻っていろ」と言われて、ここにいる。多分、ルイサは北側戦闘区域に向かっているのだろう。学院長で《暦星座(トュウェルブ)》のミーナと連れ立って。

 本来、寮の食堂は昼には開かない。(本校舎の隣に大食堂やカフェなどが入った建物があるからで、昼はそっちを使う決まりだ。)

 しかし、生徒に「外出はするな」と命じたミーナが手を回し、生徒達をすぐさま寮に叩き帰した後、寮からも出なくて済むようにしたらしいのだ。

 レゼルとしては大袈裟だと思うのだが、他の寮食堂に集まる生徒も、友人達も、「当然」といった顔をしている。

 それを見て改めて、自分が学院に来るまでいた場所がどれだけ《堕天使》に慣れているのかを思い知った。

 寮食堂に足を踏み入れたレゼルを、もう何度目ともしれない無数の視線の砲弾が襲った。

 既にレゼルはそれを意識する事を止めている。見事とすら思える無表情で悠々と食堂のテーブルの間の通路を歩く。

 セレンは言わずもがな、それはミーファや晴牙も同じで全く気にしていない。ノイエラは少し居心地悪そうにしているが、それは彼女のしっかりした性格が不躾な視線を許せないからだろう。

 メニューを注文するサーバーの画面前で止まったミーファが、「何にする?」と背中を向けながら皆に訊く。

 レゼルは、晴牙から教えてもらった冬に食堂で一番美味しいというクリームシチューと珈琲(コーヒー)を頼む。

 晴牙は天麩羅蕎麦(てんぷらそば)に緑茶。流石(?)は極東日本国の人間だ。

 女性陣は皆少食で、量が少ないパスタにサラダ、紅茶を注文した。

 ミーファがサーバーの画面に手を置いてぱぱっと操作する間に、レゼルは食堂の天井を見上げた。正確には、そのちょっと下を。

 生徒達でごった返す食堂の上空、天井に近い場所では、十数個の空中投影ディスプレイが瞬いていた。

 そこに表示されているのは、日替わりや本日のオススメメニューだ。他にも、天麩羅蕎麦に使った海老(えび)は日本国産だとか、カロリーや栄養バランスの情報、等々。

 学院の科学技術――というより設備――は本当に凄いな、と感心しながら、注文したメニューを取りに行く為食堂奥のカウンターへ。

 学院の科学技術は、「外」とはかなり差がある。そしてその事を、「外」の人――一般人は殆ど知らない。

 学院の科学技術の事は、創造術師達の暗黙の了解で秘匿されているのだ。

 理由は、国家間の争いの為。

 と言っても、世界の脅威である《堕天使》だけで殆どの国が手一杯で、国同士戦争なんて事は、ここ五、六世紀は起こってないだろう。

 ディブレイク王国も、西の大国や日本国と一応不可侵条約は結んでいるものの、それが有っても無くても大して何も変わらない。

 だが、他の国家の影響は何処の国も考えてしまうものだ。

 だから万が一、国家間で戦争になった時の為、秘匿した技術を用意しておく。それが、学院の中の科学技術な訳だ。

 ところで、創造術は秘匿技術には成り得ない。《堕天使》を倒す為に創造術が必要な以上、国家で秘匿など出来る訳が無く、従って、秘匿技術は創造術とは一切関係の無い「科学」になるのである。

 しかし、いくら国同士の戦争の為に創造術以外の技術(即ち、科学技術)を用意しておくといっても、それを使いたくなってしまうのが人間の(さが)という奴だ。

 では、科学技術の効率的な使用場所とは何処で、何の為に使うのかと言えば、それは創造学院で、学生創造術師(アマチュア)の育成の為に、だった。

 現状として、世界的に創造術師が不足しているのは国の上層部を長らく悩ませている案件だ。リレイズ創造術師育成学院も、正式には「ディブレイク王立リレイズ創造術師育成学院」となり、国の頂上(トップ)である王族が、色々な面で学院を援助、支えているのだ。

 国は、学生創造術師の育成に力を入れている。

 その事実は、創造学院を、発達した科学技術の利用場所にも秘匿場所にもぴったりにしたのだ。

 そういう、少しだけ黒い裏事情があって、学院と「外」ではとても大きな技術差があるのだった。

 だが、いくら学院の技術が発達していると言っても、食堂の料理は調理師のおばちゃんが手間隙(てまひま)と心を込めて手作りしてくれている。

 まぁ、その調理師のおばちゃんの人数も多いので、然程(さほど)待たずに料理は出てくるのだが。

 カウンターで、まず晴牙が注文した料理をおばちゃんから受け取った。

「ありゃ? なぁ、食堂のおばちゃん。今日マズルカさんは? いないのか?」

「ああ、何かねぇ、今日は用事があるらしいんだわぁ」

 晴牙とおばちゃんの話を聞いて、レゼルは首を傾げる。

「マズルカさん?」

 独り言のような彼の質問に答えたのは、レゼルの後ろにいたミーファだった。

「二年にいるディブレイク王国の王女様のメイドさんよ。食事時は王女様のお付きをもう一人のメイドさんに任せて、食堂の手伝いをしているの」

「へぇ……」

 レゼルが肩越しに顔だけ振り向くと、彼女は唇を小さく尖らせていた。

「何よ、レゼル君。メイドさんが好きなの?」

「いや、そんな嗜好は全く無いが」

 無い。無いのだが、今、酷く既視感(デジャビュ)を感じたのは気の所為だろうか。

 レゼルは顔の向きを戻し、カウンターに肘を付いておばちゃんに「貴女の笑顔、百円」とか訳の分からん事(ちょっと失礼な言葉に聞こえる)をほざいている晴牙を押し退け、嫌そうな顔を隠し切れず苦笑いしているおばちゃんからシチューと珈琲の乗ったトレーと、パスタにサラダ、紅茶の乗ったトレーの二つを素早く受け取る。

 ところで、「円」とは日本国の金銭の単位だ。因みにディブレイク王国は「ソル」、西の大国は「$(ドル)」、大陸の南の小国家群は「ユーロ」である。

「あ、レゼル、大丈夫です。それくらい、自分で運びます」

 左隣にいるセレンが手を伸ばしてくる。

 それをやんわりと制して、レゼルは彼女に向かって微笑んだ。

「セレンはエネディス先生の補佐役で疲れてるだろ。俺が運ぶ」

「別に、彼女の寮の部屋(という名の研究室)を掃除した程度ですが……」

「いいから、俺が運ぶ」

 尚も無表情で渋るセレンに苦笑しながら歩き出す。

 何故か睨んでくる金髪ポニーテールの少女と、それを見て溜め息を漏らす眼鏡を掛けた少女に、先に行って五人が座れるテーブルを探す旨を伝え、レゼルは晴牙と共に周囲に目を向けた。


 やっと! やっと世界観を放出出来ました!

 ずっと溜めていた設定です。……説明(モノローグ)、分かりづらかったらごめんなさい。

 ところで、昔(という程昔ではありませんが)、マクド○ルドで友人が「笑顔下さい」とカウンターで注文(?)していました。店員のお姉さんは最高のスマイルをくれました。タダでした。ちょっと気分が良くなりました。

 そして思った事と言えば――


 友人、勇気あるなぁ。


 と、いう事です。

 それは置いといて、今私は「皆さんのアクセス下さい!」と言いたいです。切実な願いですね。

 と、それも置いといて、更新時間ですが、朝の方が良いのでしょうか? ご希望の時間などありましたら、感想とかに書いてもらえると、できるだけご希望にそえるように致します。

 それ以外にも、感想・ご指摘、お待ちしております!

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