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天国の運動会


 ジャンルを何にしようか迷った結果、『文学』に設定させて頂きましたが、私自身、文学というジャンルがどういうものなのかいまいち分かっていませんので、ジャンル違いかもしれません・・・・・・。

 この天国の運動会の話は、私が幼稚園の時に仲の良かった友達がお父さんを交通事故で亡くしてしまい、その子といつの日か話したお話でした。

 ついこの前、そう言えばそんなこともあったなと思いだし、書いてみました。

 なにか誤字やアドバイス等ありましたら、言って頂けると嬉しいです。

 しかし、記憶があやふやで、情報源が何処だったかのか思い出せません。

 もしかしたら何かの本で読んだのかもしれませんし、私が母から聞いたのかもしれませんし、私がその時即興で出鱈目を言ったのかもしれませんし、その友達から言われたのかも知れません。

 もし、何かの本で書かれている話でしたら、申し訳ありません。

 知っている人が居ましたら、お教え下さると幸いです。

 暗い話ですが、どうか読んで頂けますと嬉しいです。

 下手な文章ですが、どうか宜しくお願い致します。

 前書きが長くなって申し訳ありませんでした。






 ――――天国にはね、

 ―――――運動会があるんだよ――――――――。





 黒い服を纏い、手には丸い石の連なった腕輪を着けた人々が一つの建物内に集う。

 そしてその黒の人々は皆悲しそうな表情を浮かべ、泣いている者も少なくなかった。


 そんな中、周りの状況について行けず、只茫然と佇む者が一人。

 その少女は、昨日起きたことが未だに信じられずにいた。




 ――――父さんが死んだ。

 その事実を少女に知らせたのは、中学校の先生だった。

 慌てる先生達に連れ去られるように病院へ向かった少女は、そこで白い布を被った父親の姿と、その前で泣き崩れる母親を目にした。

 一体自分の目の前に広がっている物が何なのか、少女はあまりに唐突なことに理解出来なかった。

 

 ――――交通事故だった。

 それを少女に知らせたのは、病院の先生だった。

 正午に昼食をとる際に職場の外へ出掛け、信号無視をした車に轢かれたのだという。

 それを聞いた少女は、只『そうですか』と答えた。

 そんな少女の前には、絶望的な父と母の姿が見える。

 しかし、何を聞いても何を見ても、少女はそれを現実として受け止められなかった。

 何処か夢の話のような気がしてならなかったのだ。


 

 食事は、喉を通らなかった。

 母に『食べなさい』とは言われたが、『うん』と返事しながらも、少女は箸を持ったまま手を動かせなかった。

 何故か、食欲が湧かないのだ。

 その時は、このまま何も食べなくても自分は生きていけるのではとさえ思うほど、全く食欲が湧かなかった。



 周りの人たちに急かされ、学校へ行かないのに制服を着させられた少女は、そのあと葬式場に連れて行かれた。

 そこには男女問わずたくさんの黒の衣装を身に纏った人が溢れていた。

 その異様な風景になおも違和感を感じながら、するべき事も分からずに、只少女は立ちつくしていた。




 不意に、少女の目に写真が映った。

 それは、会場の正面に飾られた、微笑む父の写真だった。

 確か、あれは父の友人の結婚式に撮ったものだった。少女はその席には居なかったが、前に写真を見せてもらったので憶えていた。

 数年前のものであるその父の写真が、今ここにあるのは何故か落ち着かない。

 その原因が何なのかは、少女には分からなかった。

  

 少女は、父が嫌いではなかった。

 最近は話すことが少なくなっていたのだが、それでも昔は、少女が大好きな人物だった。

 昔、良く『疲れてるんだが』なんて言いながらも一緒に遊んでくれたことを憶えている。

 一緒に公園に行って遊具やボールで遊んだっけ。

 一緒にプールに行ったっけ。

 一緒に遊園地に行ったっけ。

 一緒に散歩に行ったっけ。

 一緒にトランプやったっけ。

 一緒に・・・・・・。一緒に・・・・・・・・・。一緒に・・・・・・・・・―――――――。



 そんな他愛もない父との思い出を思い出していた少女は、今、自分が涙を流していることに気づいた。

 ぼろぼろと、止まることを忘れたかのように涙が溢れ出てくる。

 少女は何度もそれを拭ったが、それは拭っても拭っても何度も自分の存在を掻き消すなと言わんばかりに流れ出てきて、少女に現実という物を語り始めた。



 そこで初めて、少女はその父が今はもう居ないことに気づいた。

 そのどうしようもない事実に気づいてしまった少女は、今まで何処かに行ってしまっていた悲しみを思い出し、その場で大声で泣きながら、泣き崩れた。





 ――――天国にはね、

 ―――――運動会があるんだよ――――――――。




 そんな時、少女はふとその言葉を思い出した。

 父との思い出を振り返る途中に見つけたのだ。

 それは、少女の台詞では無かった。

 それは昔、少女が幼い頃に聞いた、少女の友達の言葉だった――――――。





 それは、少女が小学一年生の時だった。

 いつも仲良くしていた友達が突然何日か学校を休んだのが、事の発端だった。

 


 ――――交通事故だった。

 そう、小学校の先生が言った。

 その友達は、お父さんが交通事故で死んでしまったから、お葬式などで休んでいるのだと。

 少女は幼かったが、交通事故の恐ろしさは知っていた。

 死んでしまうこともある事も―――――。

 少女は『死』という物が恐ろしい事も知っていた。

 が、しかし、少女は『死』という物がどのような物なのかは、まだ理解してはいなかった。


 

 そんな少女はその友達のことをとても心配していた。

 何をどう心配したら良い物なのかも良く分からなかったのだが、とにかく友達が大丈夫なのか心配だった。



 そんな少女の心配を知ってか知らずか、その少女の友達は数日後に学校に登校してきた。

 とにかく心配だった少女は、その友達に『大丈夫だった?』と声をかけた。

 しかし、その友達はその返事を返してはくれなかった。

 変わりに、その友達は、少女に悲しそうな表情を見せた。



 それから数日の間、その友達は学校に来ても何日か誰とも話をしなかった。

 誰とも関わろうとせず、毎日学校に来ては魂が抜けてしまったかのように茫然としているか、悲しそうな表情を浮かべ泣いていた。

 少女はそんな友達が心配でならなかったが、どうしようも出来ずに、只遠くから見ているだけだった。



 しかし、それから少したったある日のことだった。

 その友達が、少女に話しかけてきのだ。

 少女は突然のことに吃驚したが、とても嬉しく思った。

 何故ならその友達が、――――いつもの笑顔に戻っていたからだ。



 ――――会ったんだ。お父さんに。

 その友達はそう言った。

 『何処で?』と少女が尋ねようとすると、その友達がその前に『夢の中だけどね』と付けたした。

 なんだと少し気分を落としたのだが、その友達は話を続けた。



 一位は、一度だけ大切な人たちと夢の中で話をすることが出来る。

 二位は、一度だけ大切な人たちと夢の中で会うことが出来る。

 三位は、一度だけ大切な人たちの姿を見ることが出来る。

 四位は、一度だけ大切な人たちの姿を知ることが出来る。

 五位は、一度だけ大切な人たちに写真の中から微笑むことが出来る――――――。



 唐突に、その友達はそう言った。

 何のことだか分からない少女が首を傾げると、その友達はその後話を続けた。




 ―――ねえ、知ってる?

 


 ――――天国にはね、

 ―――――運動会があるんだよ――――――――。



 その友達は嬉しそうにそう言った。



 ――――天国へ行って最初の試練。

 ――――五人ずつ走って順位を決めるんだ。



 その友達が、私にそう説明してくれた。

 先の順位は、この天国の運動会の順位なのだという。

 自分のお父さんは二位だったが、それでも嬉しかった。とその友達は言った。



 ――――お母さんも同じ夢を見たんだって。


 その友達は、そう嬉しそうに話した。

 この話は、お母さんから聞いたのだとも言っていた。


 正直少女はその話を良く理解出来なかったのだが、それでも嬉しかった。

 その友達が、笑っていたから――――――。





 少女は思い出した。

 昔に聞いた少女の友達の言葉を。

 あの時は良く分からなかったところがあったのだが、今ならきちんと理解出来る。

 そして、あの時、少女が順位の後に付け足した言葉も。




 ――――そして一生懸命に走った五人には、全員に参加賞が貰えるんだよ。



 ――――――自分の事を思ってくれた人たちの心の中に、

 永遠に居ることの出来る権利が―――――――。




 あの時は、その意味が全く分からなかった。

 その友達が言っていた、『お父さんは今も私の心の中にいるんだよ―――』という言葉も。

 

 しかし、今なら全て分かる。


 ―――確かに、

 私のお父さんは私の心の中に永遠に生き続けるんだ――――――。



 お父さんは何位になるのかな?

 また、会えるかな?

 冷たい態度とってごめんねって、今度はちゃんと言えるかな―――――?



 少女のこの悲しみが収まることはまだ無い。

 この涙が止まることも、もう暫く無い。

 

 

 しかし、それでも少女はこの世を生きていくのが苦痛では無かった。

 ――――楽しみも、一つ出来た。



 ――――お父さん、

 ―――――私はとっても元気です。


 ―――――お父さんは、どうですか?



 少女は、涙を流しながら父親の写真を見て、そう心の中で問いかけた。






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― 新着の感想 ―
[一言] 僕の父が病気で死んだ時一週間位父の香りが纏りついてました。 父は、特殊なコロンを付けてたので同じ香りは、無いので「あっ親父だ」と思ったものです。 父は、何位だったんでしょう? 良い話でした。…
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