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呪術師ジュジュ呪術中  作者: 小河白明夫


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3 解けない呪い

 呪術師ジュジュの呪術屋に、おしとやかそうな感じの一人の女性がやって来た。


「あの、こちらは呪いのお店ということで合ってますの?」

「はい、そうですよ。本日はどんなご用件でしょうか?」


 サラがその女性客にそう尋ねると、女性客は丁寧に自己紹介をしてから本日の要件を述べた。


「わたくし、とある冒険者パーティーで神官をさせていただいている、アリアと申します。本日は、呪いの専門家の方にお話を伺いたくてやって来ましたの」

「どんな話?」


 ジュジュにそう問われて、アリアはその詳しい内容を語りだす。


「実はですね、わたくしのパーティーの仲間が、どうにも呪いに侵されているみたいなんです。最近は何かと、正気とは思えないような気持ち悪い表情をされていることが多くって」

「それはどんなとき?」

「主に兜をかぶっているときですわ」


 兜をかぶっているときと言われて、ジュジュとサラはある人物のことが頭に思い浮かんだ。


「兜…か…」

「まさかそんなわけないですよね、ジュジュさん」

「そうだといいね」


 そしてアリアは話の続きを語る。


「ですのでわたくしは、きっとその兜が呪いの装備なのではないかと思いまして、なんとか浄化を試みたのですが、わたくしの力ではどうにもうまくいかなくて…。それで専門家の方にお話を伺いたいと思い、こっそりその兜を持ってきましたの」


 アリアはその例の呪われた兜を二人の前に出した。

 すると悪い予想通り、それはおっぱい好きな戦士ゴードンの兜であった。


「まあ、呪われてるね」

「やっぱりそうなんですの!」


 呪いをかけた本人が言うのだから間違いない。


「この呪い、打ち消すことは可能なんでしょうか?」

「ちょっと特殊な呪いだから、普通の方法では無理かな」


 ジュジュにそう言われてがっかりするアリア。


「そうなんですの…」


 しかし、呪いを解く方法が全くないわけではない。


「わたしならその呪いは解けますけど…」

「本当ですの?」

「ええ、わたしは解呪師ですから」


 ジュジュのパートナーであるサラは、唯一ジュジュの付与した呪いを解くことが出来る解呪師である。


「では、どうかよろしくお願いします。この兜から呪いを消し去ってください!」


 だがそうアリアに頼まれても、すぐにはいとは言えない理由がサラにはある。


「あのー、ええっと、うちのお店、呪いの力は無償で提供してるんですけど、解呪のほうは金貨百枚から…という料金体系でやっているんですよね」

「百枚…ですか。パーティーの活動資金からなら、なんとか…」


 この店の方針は、ジュジュの呪いを求める者には、誰であろうと分け隔てなく呪いの力を提供したい…というもの。

 けれど完全に無償ではやっていけないので、軽率な行動に出て間違った呪いの使い方をした者からぼったくる…というやり方で店の経営を成り立たせている。


 だが今回の件はそれとはちょっと異なる。

 なぜなら解呪を頼んできた者が、呪いの力を求めてきた者とは別人だからである。

 さすがにそれで金貨百枚も取るのはどうかと思うが、かといって特別に格安で解呪する…という前例を作るわけにもいかないため、仕方なくジュジュは事実をありのまま話すことにした。


「これに呪いかけたの、ジュジュだから」

「えっ?」

「これの持ち主も喜んでたし、特に害はないから何も問題ないよ」

「そうなんですの? でもじゃあ、どうしてゴードンさんはあんなにも気持ち悪い顔をなさって…。精神に悪い影響を受けているとしか思えないような……」


 やはり先ほどのジュジュの言葉だけでは、アリアもいまいち納得がいかないようなので、サラはもっと詳しい内容をアリアに説明することにした。


「えっとですね、この兜にかけられている呪いは、あることを代償に敵を察知する感覚を研ぎ澄ませる…というものなんです」

「つまりこの兜のおかげで、ゴードンさんは強くなっているということですの?」

「いえ、代償が代償になっていないので、多分ゴードンさんは全くパワーアップしていません」

「その代償って、いったい何ですの?」

「女性の胸が見えなくなることです」

「???」


 アリアは訳が分からず混乱している。

 なのでサラは、ジュジュの呪いがどういうものなのかについて詳しく語ることにした。


「ジュジュさんの呪いはですね、何かを代償にすることで、その代わりに大きな力を得られる…というものなんです。そこでおっぱい好きなゴードンさんなら、女性の胸を見えなくする…というのが大きな代償になると考え、ジュジュさんはそれを代償にする呪いを付与したんです」

「は…はあ…」

「ただ、そこに一つ大きな間違いがありました。ゴードンさんはなんと、女性の胸が見えなくなることすら楽しんでしまったんです」

「意味が分かりませんわ」

「ですよね。でもゴードンさんは、胸に黒いもやがかかって見えなくなるからこそ、その下では服が破れていておっぱいが露出しているかもしれない…という想像を働かせ、例の気持ち悪い顔になっているんだと思われます」

「えっ? えっ、ええっ?」


 アリアはもはや理解が追い付かない。


「ど…どういうことですの? わたくしはゴードンさんに裸を見られていたということですの?」

「いえ、むしろ視界が遮られていて何も見えてはいませんよ。でも見えないからこそ、ゴードンさんの妄想がはかどっちゃってるわけなんですけど、ただ妄想するだけなら個人の自由なので、そこは何も文句は言えませんからねぇ」


 そう、ただの妄想を罪に問うことは誰にもできやしない。

 たとえそれがどれだけ気持ち悪くあろうとも。


「わたくしはこの兜を、いったいどうしたらよろしいのでしょうか?」


 もはや何をどうしたらいいのかが分からないアリアにそう問われて、サラは身も蓋もない解決法を口にした。


「気持ち悪いのでしたら、捨てちゃえばいいんじゃないですか」

「で…でも、人のものを勝手に捨てるのはちょっと…」


 さすがに他人のものを勝手に処分することは出来ないアリアに、ジュジュはある提案を告げる。


「胸だけが隠されるから、あの人も妄想を働かせちゃうんじゃないかな。だったらもっと呪いの力を強めて、全身隠されるくらいにしちゃえば…」


 ジュジュは杖でゴードンの兜をコンコンと叩き、新たな呪いの力を付与した。


「はい、これでもう顔以外は全部隠されるよ。さすがにこれじゃあ妄想なんて難しいだろうし、ちゃんとこれが代償になってれば、本来の効果通りパワーアップも出来る」

「ありがとうございます。これでもう安心ですわ」




 さて、この件の落ちがどうなったかということなのだが……


「うおぉぉぉっ! 何だこれはっ! 全部、何もかも隠されているじゃないかぁっ! これは……さらに妄想がはかどるな!」


 ポジティブすぎるド変態のゴードンには、全くもって無意味だった。

 そしてやっぱりパワーアップは出来ない。

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