2 可能性は∞
その男は突然呪術師ジュジュの呪術屋に現れた。
そしてその屈強な男は店に入ってくるなり大声で叫んだ。
「おっぱいをくれぇぇっ!」
男は変態だった。
「ジュジュさん、なにで追っ払いましょうか」
「そうだねぇ、この前作ったあの呪いのアイテムの実験にちょうどいいんじゃないかな」
「そうですね。じゃあそれで追っ払いましょう」
「うん」
サラとジュジュはなんかやばそうな呪いのアイテムを手にし、それを変態に向けた。
「ま…待て、おれは変態じゃない! おれはおっぱいのことを叫ぶだけで強力な必殺技が出せると聞いて、ここにやって来たんだ!」
どうやらこの男は、勇者アルトの聖剣に付与したあれと同じ呪いを求めてここに来たようだ。
「おれは勇者パーティーの戦士ゴードン。アルトの奴から、あの必殺技はこの店で与えてもらったと聞いてな。爆乳派と叫ぶだけであんなにもすごい技が出せるだなんて、実にこのおれ向きな能力じゃないか!」
そんなことを堂々と言う戦士ゴードンを見て、ジュジュは思ったことをそのまま口にした。
「勇者パーティーってみんな巨乳好きなの?」
するとゴードンは即座に肯定したが、それはただの肯定ではなかった。
「ああ、おれは巨乳が大好きだ! だが、おれをただの巨乳好きと思ってもらっては困る。おれは小さいおっぱいも大好きだ!」
そのゴードンの言葉を聞いて、サラは即座にジュジュがゴードンの視界に入らないようにガードした。
「ジュジュさんはまだ十三歳なんですから、何か変な事したら犯罪ですよ!」
「そんなことは分かっている! おれは未発達な成長途中のおっぱいも大好きだが、決して手は出さん! ただ将来に期待して待つのみ! 大きく成長するも良し、成長せずにぺったんこのままなのも良し、もしくはほどほどに成長して普通サイズのおっぱいになるのも良し。そう、未発達なおっぱいの可能性は無限大! そして∞の記号はおっぱいに似ている!」
ただのド変態なゴードンに、サラとジュジュはかなり引いている。
「ジュジュさん、何でこんな人が勇者パーティーに入れちゃったんでしょうか?」
「ただの実力主義じゃない? 人格や趣味は特に関係なしとか…」
「でも勇者パーティーですよ。さすがに最低限の品性は…」
そんな二人の会話が耳に入ってしまったゴードンは、品性とは何かについて語りだした。
「確かにおっぱい大好きなおれのことを、品性のない人間、勇者パーティーにはふさわしくない存在だと言う者がいることも理解している。ではならば、勇者パーティーにふさわしい品性とは何だ?」
「ええっとぉ……誠実さ?」
ゴードンの勢いに押されて、サラはあまり深く考えずにありきたりな答えを口にしてしまった。
「そう、誠実さだ!」
だが答えはこれで合っていたようだ。
「そしてその誠実さとは、己を偽らないことだとおれは考えている。つまり、男ならばおっぱいが大好きで当たり前! だからおれは声を大にして叫ぶ、おっぱいが大好きだぁっ!…と」
ジュジュとサラは理解した。
目の前にいるこれは、脳みそまで筋肉なただの馬鹿なのだと。
「というわけでおれの斧にも、アルトの聖剣と同じ能力をくれ。あの能力はこのおれにこそふさわしい力だ」
だがそう言って能力を求めるゴードンに、ジュジュは厳しい現実を告げる。
「それは無理だよ。あの力は、技名を叫ぶときの恥ずかしさを糧に必殺技を放つ呪いだから、恥ずかしげもなくおっぱい好きと叫ぶような人には使えない」
「そんなっ! あれこそまさにおれのための能力だと思っていたのに、このおれのおっぱい好きがあだとなるだなんて……」
あだとなっているはおっぱい好きなことではなく、それを恥ずかしげもなく言えるゴードンの羞恥心のなさである。
しかしあの能力を使えず落ち込んでいるゴードンに、ジュジュはある一つの提案を告げる。
「そんなにもおっぱいが好きなら、ちょうどよさそうな呪いがあるけど」
「なにっ、それは本当か? ぜひとも頼む!」
「じゃあ、その兜貸して」
「ああ」
ゴードンは頭に装備していた兜を脱いで、それをジュジュに差し出した。
するとジュジュは杖を手にして、その杖で兜をコンコン…と叩く。
「はい、呪いの付与完了。もうかぶっていいよ」
「そうか」
そしてゴードンが再び兜をかぶると…
「ん? 何だこれはっ? 兜がまるで頭に引っ付いたかのようになって、脱げな…」
「その呪われた兜は、一度装備したら二十四時間は外すことが出来ないよ。そしてその兜を装備している間は、女性の胸を見ることが出来なくなる」
「なっ…何だってぇっ! ほ…ほんとだ。おっぱいの所に黒いもやのようなものがかぶさっていて、何も見えない!」
そう、これこそがおっぱい好きなゴードンにふさわしい代償とジュジュは考えた。
「これは二十四時間女性の胸を見ることが出来ないことを代償として、その代わりに気配を察知する感覚を研ぎ澄ませ、どんなに素早い敵の攻撃にも反応できるようになるという呪い…」
「ふっ…ふふふっ……」
おっぱい好きなゴードンは、女性の胸が見えなくなる呪いの兜をかぶっているはずなのに、なぜかうれしそうに笑っている。
「こうして胸を隠されるのも、これはこれでそういうプレイのようで悪くない。……いや、むしろ完全におっぱいが隠されることによって、実は黒いもやの下では服が破れていて、おっぱい丸出しになっているかもしれないという妄想がはかどる!」
ゴードンはポジティブすぎるド変態だった。
「素晴らしい呪いをありがとう! こんなにも楽しめるうえにパワーアップまでできるだなんて最高じゃないか!」
そしてゴードンは大喜びのまま帰っていった…が……
「ジュジュさん、あの呪い意味ないですよね」
「うん。あれじゃ全く代償になってないから、一切何のパワーアップも出来ないね」
ポジティブすぎるド変態には、ジュジュの呪いは全くもって無意味だった。




