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呪術師ジュジュ呪術中  作者: 小河白明夫


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1 勇者の必殺技

 人里離れた森の奥に、ぽつんと立っている古びた家が一軒。

 そこでは呪術師の少女ジュジュと、そのパートナーであるサラがとある店を営んでいる。

 そして本日その店に、一人の青年が客として訪れた。


「いらっしゃいませー」


 サラにそう出迎えられた客は、この店のことについて尋ねる。


「えっと、ここが呪術師ジュジュの呪じゅちゅっ…」


 客は嚙んだ。


「ジュジュさん、やっぱりお店の名前変えたほうがいいんじゃないですか?」

「わかりやすいのが一番だし」

「でも言いづらいですよ。お客さん、思いっきり噛んでますし」

「っ……」


 客は噛んでると言われて顔を真っ赤にした。

 そしてもう一度、今度はゆっくりと尋ねる。


「ここは、呪術師、ジュジュの、呪術屋…で合ってますか?」

「わー、今度はちゃんと言えましたねー。おめでとうございまーす!」


 サラはぱちぱちと手を叩きながら、噛みそうな店名を噛まずに言い切った客をほめたたえているが、まだ客の質問内容には答えていない。


「あの、それでここは…」

「ええ、その通りですよ。ここは呪じゅ…ジュジュさんのお店です」


 サラは自分も噛みそうだったので店の名前を省略した。


「そしてこちらが店主のジュジュさんです!」


 そう紹介されたジュジュの姿を見て、客は率直な感想を口にする。


「えっ、子供?」

「子供だなんて、見た目だけでそんなことを言うのは失礼だよ。ジュジュはこれでも…十三歳だ!」


 普通に見た目通りの年齢だった。


「ジュジュさんは背伸びしたいお年頃なんですから、あまり子供扱いしないであげてくださいね」

「す…すみません」


 だがある意味サラが一番ジュジュを子供扱いしているともいえる。


「それでお客さん、本日はどんな御用でこちらに?」


 そうサラに尋ねられて客は答える。


「実は僕、勇者でして…」

「自称かな?サラちゃん」

「まあ、きっとそうですよね」


 目の前の客が全然勇者っぽく見えなかったので、ジュジュとサラは疑っている。


「ほ…本物です! これ聖剣っ、僕は聖剣に選ばれた本物の勇者ですからっ!」


 勇者は聖剣を見せて、必死に自分が本物の勇者であるということを主張した。


「確かにこの聖剣はかなり本物っぽいですよね、ジュジュさん」

「そうだね。身分詐称のためにこれを用意したのなら、相当のことをやらないと元は取れないと思う」

「だから本物ですから…」


 目の前の客は全然勇者っぽくない頼りない感じの男だが、剣は確かに本物の聖剣っぽかったため、とりあえず二人は目の前の客を一応勇者として認めることにした。


「それで勇者さんの本日のご用件は?」


 サラにそう問われて、勇者はここに来た理由を語る。


「僕、この聖剣に選ばれて勇者にはなったものの、剣術なんてこれまで一度もやったことなかったし、体力にも全く自信がないので、勇者パーティーでもいつもお荷物で…」

「あー、そういうことですかー」

「うん、わかる」


 サラとジュジュは勇者の頼りなさげな雰囲気で、ものすごくその言葉に納得した。

 そして勇者の望みをなんとなく察したサラは、早速その予想を口にした。


「つまりもう勇者をやめたいので、その口実づくりのために適当な呪いをかけてほしいということですね」

「ち…違います!」


 だが思いっきり外れだった。


「僕が欲しいのは、こんな僕でも戦える力です。ここに来れば、才能や努力なんて関係なしに、ものすごい力が手に入ると聞いて…」


 するとそんな勇者の言葉にジュジュはうなずく。


「そうだね。確かにジュジュの呪いなら、その力を与えることは可能だよ」

「じゃあ…」

「でも呪いには代償がつきものだってこと、わかってる?」

「だ…代償?」

「そう。ジュジュの呪いは代償の力。何かを代償にささげることによって、代わりに大きな力を得られるというもの。それでもよければ、呪いをかけてあげるけど」


 そうジュジュに問われると、勇者はすぐさま返事をした。


「構いません! もうこれ以上、パーティーのお荷物になるのは嫌だから、力が得られるのならどんな代償でも受け入れる覚悟です!」

「そう、じゃあ…」


 ジュジュは杖を手に取ると、その杖で勇者の聖剣をコンコン…と、軽く叩いた。


「はい、おしまい。呪いの付与は完了したよ」

「えっ、これで?」

「そうだよ。これでもうその剣は、呪いの聖剣となった」

「聖剣なのに呪いの剣って、ものすごく変な感じだけど…」

「ジュジュの呪いはただの代償の力であって、別に聖剣の聖なる力と相反するようなものじゃないから、気にしない気にしない」

「はあ……」

「それじゃあさっそく、外に出て試そうか」


 こうして三人は、呪いを付与された聖剣の力を試すため、店の外へと出た。



 そしてジュジュは、そこでこの呪いの聖剣の使い方を説明する。


「とりあえず、技名を叫んで剣を振って。それで必殺技が発動する」

「技名って、どんな名前ですか?」

「何でも自由だよ」

「ええっと、じゃあ……。フ…フレイムソード!」


 勇者はちょっと恥ずかしそうに技名を叫びながら聖剣を振った。

 するとその聖剣の刀身から、ちょっとだけ炎が放たれた。


「これが必殺技? でも、あまり強そうじゃない感じが…」


 するとそんな勇者に、ジュジュは必殺技がなんかいまいちだった理由を説明する。


「この聖剣に付与した呪いは、技名を叫ぶときの恥ずかしさを糧に必殺技を発動させるもの。だから技名が普通すぎて、恥ずかしさが足りないのがだめなんだよ」

「えっ? は…恥ずかしさ?」


 そこでジュジュは、何かいい技名がないかサラに案を求める。


「サラちゃん、どんな技名ならいいと思う?」

「ええっとですねー……あっ! 勇者さん、お名前は?」

「アルト…ですけど」

「じゃあ、スーパーアルティメットアルトスラッシュ…なんてどうでしょう」

「いいね、サラちゃん。自分の名前を入れるのは、ダサい技名の王道だね」

「ですよねー」


 ジュジュはサラの考えた技名に大満足なようだが、それと対照的に勇者アルトはものすごく嫌そうな顔をしている。

 だがそんな嫌な顔をしているからこそ、この技名で放つ必殺技には期待が持てるというもの。


「ではアルトさん、やっちゃってください。スーパーアルティメットアルトスラッシュですよ」

「うっ…」


 サラにせかされて、アルトは仕方なくその技名を叫びながら聖剣を振るう。


「ス…スーパーアルティメットアルトスラッシュ!」


 すると振り下ろした聖剣からは、そこそこ強力そうな衝撃波が放たれた。


「これはなかなかいいんじゃないですか、ジュジュさん」

「うん、そうだね。でもサラちゃん、普通の剣士ならこれで十分でも、勇者の必殺技としてはちょっと物足りないんじゃないかな?」

「確かに言われてみればそうですね。でも自分の名前以上に恥ずかしい技名となると……下ネタ系…とか?」

「あっ、それなら自分の性癖をぶち込むのはどうかな?」

「具体的にはどんなのですか?ジュジュさん」

「巨乳大好きボンバー!」


 だがそんなジュジュが考えた技名を聞いて、アルトは思いっきりその性癖を否定した。


「なっ…ななっ…なに言ってるんですかっ! 僕はそんなっ…」

「だってここに来てから、何かとサラちゃんのおっぱい見てたし…」

「えっち…」

「見てない! 見てないですからっ!」


 だがアルトの視線が、ちょくちょくサラの大きな胸のほうに向いていたことは、まぎれもない事実である。


「というわけで、巨乳大好きボンバーで必殺技を」

「うぅっ……」


 ジュジュに言われて、アルトはものすごく嫌そうにその技名を口にしながら聖剣を振り下ろした。


「きょ…巨乳大好きボンバー!」


 すると、アルトの目の前でとんでもない大爆発が起こった。


「……えっ?」


 あまりの威力に、頭の中が真っ白になるアルト。


「ジュジュさん、このへん人がいないからいいですけど、さすがにこの威力はちょっと危険じゃないですか?」

「そうだね。もうちょっと扱いやすい威力の技名を考えるべきだね」


 その後三人で話し合った結果、巨乳好きという要素を入れつつも、必殺技っぽいイントネーションでなんとなくごまかせそうな感じの、爆乳派…というのが勇者の必殺技の技名として決まった。


「うん、これならちょうどドラゴンを倒せそうなくらいの、いい感じの威力だね」

「よかったですねー、アルトさん。いい技名が決まって」


 だがそうサラに言われても、アルトはいまいち納得がいかない様子。

 その理由は…


「あのっ…爆乳って、僕はそこまで大きいのが好きなわけじゃ…」

「別に恥ずかしければ何でもいいんだよ」

「そうですよー」

「そんなっ!」


 というわけで、勇者の必殺技は爆乳派で決定。

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