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姫と魔王と守護の龍  作者: ジルコ
第1章 終わった世界から始まる物語

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第32話 魔王闘争史における重要人物一覧より(2)

 この章の最後の1人として、ピアと彼女が設立したナムヴァ運輸商会について語ろう。


 狸の獣人であるピアは、現在では魔の森と呼ばれる場所に存在したバルカ村において、村長であるポルアの娘として生まれた。

 出生年としては推定ではあるが、デリク王国歴734年。だがパルカ村においては明確な暦が規定されていなかったため、後年の自称年齢とそのときのデリク王国歴から推定されたものであるため数年のずれがある可能性は残っている。


 ピアは幼いころから聡明であり、武力にも優れた子供であったという。

 齢10のころには、村の中で彼女に武力で敵うのはわずか数人となっており、その頭脳に関しては既に大人でさえ理解できないほどのレベルに達していたという。


 パルカ村は数百人の獣人が住む小さな村であり、その程度の村であれば突出した才能とは言えないのではないかと思うかもしれない。

 だが武力に関して言えば、獣人のそれは普通の人をはるかに上回っている。特に同じ村には、後に竜の天敵とまで呼ばれた伝説の冒険者、狼の獣人ミコールがいたのだ。

 彼女でさえ、ピアに勝ったことはないと語っていたことからその武力がいかに優れたものであったのかわかるだろう。


 そんなピアであるが、デリク王国歴750年に転機が訪れる。

 ピアが齢16の時、パルカ村を奴隷狩りが襲ったのだ。

 当然のごとく村の獣人たちは抵抗し、50人程度の規模であった普通の人の奴隷狩りたちは簡単に撃退されるはずだった。


 だがそうはならなかった。

 村最強の戦士であった村長のポルアを始めとした、村の男たちによって組織された自衛団は抵抗すらすること出来ずに捕らえられ、危険を察知した村人たちは散り散りに逃げ出した。

 ピアはそのとき、逃げる村人たちのしんがりにつきその手助けをしていたのだが、獣人の子供たちを人質にとった奴隷狩りに脅され投降。

 従属の首輪をはめられ、奴隷の身分となった。


 その後しばらくの間粗末な小屋で監禁されていたピアだったが、仲間の獣人たち24名と共に奴隷商に買われ、このまま奴隷としての一生を過ごすことになるかと思われた。

 しかしその奴隷商が盗賊に襲われ、さらにその盗賊たちが流れの冒険者たちに討伐されたことで再び運命は大きく変わる。


 その冒険者はピアを始め獣人たちにはめられていた従属の首輪を解呪し、彼らが平穏な生活を取り戻せるように手助けしたという。

 従属の首輪を解呪することができるほどの高位の僧侶、そしてたまたま知り合っただけの獣人を手助けするという崇高な精神、そして資金力などを考えるとその冒険者に該当しそうなパーティーは3つに絞ることができる。


 しかしそのいずれのパーティーの記録を調べても、そのような形跡はなかった。

 もしかしたらその冒険者たちにとってはありふれたことであり、冒険者ギルドに報告するほどのことではなかったのかもしれない。

 当該冒険者については、上記の理由から特定が困難であるためここには記載しない。

 該当しそうな冒険者について気になる方は、別冊として執筆した『歴史を刻んだ冒険者たち』を参考にしてほしい。


 さて奴隷から解放されたピアではあるが、生活基盤が整っていない土地での新たな生活が安楽なものではなかったことは想像に難くない。

 食料を得るために畑を作るにしても開墾の手間は大きく、それを成したとしても小麦や野菜が満足に取れるまでには何年もの月日がかかる。


 当初は周辺のモンスターや動物などを狩る生活が続いたのだと想像できるが、その中で彼らは1つのダンジョンを発見する。

 それが後に設立されるナムヴァ運輸商会の原点とも言えるドラゴンダンジョンである。


 世界的に有名なドラゴンダンジョンではあるが、簡単に説明をさせてもらうと出現するモンスター全てがドラゴン系種族であるという超高難易度のダンジョンだ。

 現在判明している最下層は5階層、ピアが単独にて探索した記録が最古にして最深のものとなっている。

 現在、冒険者ギルドの最上位であるオリハルコン級認定に使われるダンジョンとして知られているが、その試験も1階層の主であるウインドドラゴンの討伐が要件となっており、それ以降の探索は推奨されていないことからもその危険さがわかるだろう。


 そのドラゴンダンジョンを探索したピアは、1から4階層までの主であるウインドドラゴン、ファイヤードラゴン、ウォータードラゴン、グランドドラゴンとそれぞれ戦い、その力を示して彼らを仲間にした。

 現在もナムヴァ運輸商会において、そのドラゴンたち、ナムヴァ、ウェムヴァ、ケレヴァ、マニヴァの姿を確認することができるが、彼らと対等に戦った人がいるとはにわかに信じがたいほど、その迫力は圧倒的である。

 ちなみにナムヴァ、ウェムヴァ、ケレヴァ、マニヴァという名前は、古い獣人の言葉で風竜、火竜、水竜、地竜を示す言葉ではあるが、多くの獣人たちは既にその言語について失伝しており、長寿種の獣人たちがかろうじて語り部として残っているだけである。


 ピアは仲間にしたドラゴンたちの協力を得て村を開拓し、それと同時にナムヴァと共に空を駆け、散り散りになった仲間たちを集めていった。

 そして同年末、その地域を治めていたヒルデアン王国の一領主、ラッセント伯爵に開拓村として設立を申請。

 贈答品として、グラスドラゴンの素材を提供したこともあり即日認可され、晴れて新たな獣人の村、レーノとして公式に認められることになった。


 その後、ピアはドラゴンダンジョンで得た素材を元手にお金を稼ぎ、デリク王国歴755年に、ナムヴァ運輸商会を設立した。

 現在では多角的な商売にまで手を伸ばしているナムヴァ運輸商会ではあるが、設立当初は荷物を運ぶことに特化した仕事のみを請け負う当時としては異色とも言うべき商会であった。


 設立当時はその特異さから利用する客はほぼ皆無であったが、ピアはナムヴァと共に空を飛び各地を飛び回り、商会の宣伝をして回った。

 なにせドラゴンが飛んでやってくるのだ。その宣伝効果はとても大きなものだっただろう。

 実際街を守護する兵士の日誌などにいくつもの記載があり、その書きようから衝撃の度合いがうかがえる内容になっている。


 さて、ウインドドラゴンを利用した高速、かつ安全な物資の輸送。それは全く新たな視点ではあったが、その有用性を理解する者はたしかにいた。

 その1人が、当時のデリク王国5大将軍筆頭、クライブ・デ・オーサムである。


 デリク王国歴757年。クライブはナムヴァ運輸商会と接触し、翌758年初めに同商会と『緊急時における優先輸送に関する協定』を締結。

 この協定によりナムヴァ運輸商会は、デリク王国の後ろ盾を得ることになり飢饉対応やモンスター侵攻時の糧食の運輸など密な関係を結んでいくことになる。


 ただこのことによりレーノ村とヒルデアン王国との関係は悪化。同758年末にレーノ村及びドラゴンダンジョンを接収するために王国軍が直々に侵攻してきた。

 通常であれば領主であるラッセント伯爵に兵を出させるほうが自然ではあるが、王家直轄軍である王国軍が出てきたことを考えれば、直轄領とするべく画策していたことが推測できる。


 なおこの侵攻については、ドラゴンたちによって徹底的に殲滅されておりナムヴァ運輸商会の被害は0、対して王国軍は8割死傷という歴史的に見てもまれな決着がついている。

 このことによってヒルデアン王国の国力は大幅に弱った。

 そしてそれにとどめを刺したのが、領主であるラッセント伯爵によるデリク王国への帰順である。


 王国軍によって土地を荒らされ、さらには兵士の糧食なども提供させられ、なにも手を貸さなくとも勝手に金を産んでくれていたレーノ村を奪い取ろうとした。

 そんな王に対し、ラッセント伯爵は愛想を尽かしたのだ。


 ラッセント伯爵及びその係累の北部貴族がデリク王国に帰順したことにより、その国土の5分の1を失ったヒルデアン王国はじり貧となった。

 領土を奪還しようにも国軍は壊滅状態、他の領主たちに要請して集めた連合軍は、再びドラゴンたちに蹂躙され、王は急激に求心力を失っていく。


 レーノ村への国軍の侵攻からわずか2年。デリク王国歴760年にヒルデアン王国は内乱により王族が粛清され地図から姿を消す。

 その後、各地の貴族が小国を起こしたりしたが、それも数年も持たずにモンスターたちにのまれ、滅亡している。


 デリク王国に正式に属することになったナムヴァ運輸商会の運輸部門は、半ば国政に組み込まれるような形で発展を遂げていった。

 国境沿いにおける空域からの監視、異変の発見と報告、それに対応する物資の運輸を担うことにより、その地位を確固たるものにしていったのだ。

 現在、デリク王国が魔王との戦いの防波堤となることができているのは、強靭な騎士、兵士のみならず、ナムヴァ運輸商会の活躍があってこそのことである。


 ピア個人は、デリク王国歴782年、齢48までナムヴァ運輸商会の代表を務め、その地位を二代目のカルロに譲った後も相棒のナムヴァと共に空を飛び続けたという。


 デリク王国歴784年。依頼を受けるためにナムヴァと共にレーノ村を飛び立ったピアだったが、予定時間を過ぎて戻ってきたのはナムヴァだけだった。

 その後、商会やデリク王国を挙げての大捜索が行われたが、その行方は分からずじまいであり、その3年後の787年正式に死亡したものと認定された。


 ピアはその生涯を独身で過ごし、その血は今に引き継がれていない。

 しかし竜と共に生きたその生きざまはナムヴァ運輸商会の根底に連綿と受け継がれており、ある意味では商会の母としての人生を送ったとも言えるだろう。


 なおウインドドラゴンのナムヴァだが、ピアの死んだ7の月ごろになるとまるでかつての主を探すかのように3日ほど姿を消すという。

 その行先についてはどこかわかっていないが、もしかするとピアの最後の真相を知る彼なりの弔いなのかもしれない。





 さて、ここまで眠りの魔王との長きに渡る人類の闘争史における最初期の重要人物を挙げてきたが、次ページ以降では中期の重要人物について記していく。

 この期の違いについては学説によりいくつかの分類があり、この書においては現時点で主流であるオストスク分類を採用している。

 その初期と中期を区切る目安は魔人の出現。デリク王国歴875年に初めて確認された知能ある魔王の手下との対立の時代である。

お読みいただきありがとうございます。


現在新連載ということで毎日投稿を頑張っています。

少しでも更新が楽しみ、と思っていただけるのであれば評価、ブクマ、いいねなどをしていただけると非常にモチベーションが上がります。

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