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見ようによっては好機…?

 ずっと気にかかっていたのだ。あの舞踏会の夜、エリザヴェータの怒りに触れる首飾りをしてのこのこ出かけたのは間違いなく自身の迂闊さである。だがそれが未然に防がれる可能性を潰したのは、この妖精の所為によるものだった。

「…………」

 アンゼリカの問いかけに妖精は即答せず、ただ静かに、唇に弧を描いた。


「……ユーリスに、何も言っていないんだね。知っていたなら私に教授を頼んでくるはずがない。……どうして言わないのかな」

「何となくです。あの時のことは私も良く分かっていないというか、整理できていなくて……あれで、ベイルリス様に何の得があったのか、いくら考えても分からないです。だから聞きたいんです。どうしてですか?」


 妖精は肯定せず、否定もせず、さもおかしそうに笑った。

「直球だね」

「だって、他の方法が分かりませんし」

「それは妖精相手なら最も賢い選択だけどね。宮廷を泳ぐなら弁論術は必須だよ?ヴァイス語も慣れて来たし、そろそろ応用にも取り組んだ方が良さそうだね」

「つまり?」

「まだ教える気はないってことだよ」

「そうですか……分かりました。じゃあ気が向いた時に教えて下さい!」


 アンゼリカは悄然と肩を落とすも、すぐ切り替えた。故郷から遠く離れた地だけあって、色々分からないことが多い。だが、一つずつ解決していくしかない。この国に嫁いで、この国で生きていくのだから。


 何より、これ以上ユーリスに心配をかけられない。今朝焦燥した様子で気遣ってきた夫のことを思い出す。話し合いの結果、十日後の席に同席してくれることになったが、それで元々決まっていた予定が狂ってしまったらしい。あんな毎日忙しそうで大変そうな人に心労をかけてしまい、自分の未熟さが歯がゆいばかりだ。


(でも、見ようによってはこれは好機……!)

 上手くやれば、夫の心配事や悩みの種を減らせるかもしれない。だから、そのためにどうするか。アンゼリカは茶器で手を温めながら考えた。



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