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青の霊廟

「ところで青の霊廟って何なんですか?」

「それだけの目に遭って真っ先に疑問に思うところがそこかい?」

 ベイルリスは呆れつつも、一息ついて問いに答える。どこか懐かしむような声だった。


 彼は手元の紙に「青の霊廟」と書きつけて、綴りを見せてくれた。折角なのでアンゼリカも真似して書いてみる。


「……青の霊廟は、ペネロペの廟のことだよ。着工からもう二十年近く経つけど、未だに完成しなくてね」

 皇后崩御の折、炎帝は執務の全てを投げ出し寝所に籠った。その号哭は三日三晩皇都に響き続けたという。炎帝は寝所から出て真っ先に、皇都郊外の丘を切り崩し、そこに廟を造るよう命じた。莫大な費用と労力を投じたその工事は、今この時も続いている。


「人夫だけでなく妖精も協力していて、かなり大規模な建築事業でね。今でもヴァルラスは暇があれば視察に行っているんだよ。進捗確認という意味もあると思うけれど、やはり離れがたいんだろうね」

「そうだったんですか……皇帝陛下は今も、本当に皇后陛下を愛しておられるのですね。皇后陛下のことは折々に耳にしますけれど、誰もが絶賛するほどですから、本当に素晴らしい方だったのでしょうね」

「まさしく。ペネロペの唯一の欠点は、早世してしまったことだったね」

「ベイルリス様から見てもそうなんですね……そんなに素晴らしい方なら、私もお会いしてみたかったです」

「うん。彼女も君のような娘ができたら、喜んだと思うよ」


 アンゼリカは「そうであれば良いのですが」と微笑む。カサンドラのことを考えると複雑なものもあるが、会ったことのないペネロペにも敬愛が芽生え始めていた。


「それで、九日後の席はどうするつもりなんだい?」


 それにアンゼリカは仰天した。


「え!?どうしてご存じなんですか!?」

「皇城の噂の速さを侮ってはいけないよ?今朝からどこも、そのことで持ち切りだ」


 そう。昨日の件を一部始終報告した時、エリザヴェータはこれぞ余興とばかりに宣った。


「あらおもしろいこと……そうね、十日後のお昼時はどうかしら。お父様の予定が空いていたはずだから、輝月殿にお呼びしなさい。お忙しい皇帝陛下をあまり待たせてはいけないわ。速やかに貴女の回答を示すように」

「は、はい!がんばります!」


 そして一夜が明けたので、期限は残り九日しかない。「香を焚け。貴様のその嗅覚で、宿すものを探せ」という謎命令に対して、早急に何らかの答えを導き出さねば、最悪命が危ういのだ。社会的にも物理的にも。


「勤勉なのは素晴らしいけれど、ここで勉強していて良いのかい。今からフロレ語でも何でも使って社交に勤しみ、情報を集めた方が良いのでは?」


「そこは大丈夫です!昨夜エリザヴェータ様が約束して下さったので!この先十日間、一生懸命お仕えすれば、皇后陛下のことを教えて下さると!」


「…………それはそれは……頑張ってね」


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