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ユーリスの通告

「アンゼリカ姫。貴女には、我が国と南方連合の和議を背負っているご自覚がないのですか?今回のことはあまりに軽率でした。下手をすれば主戦派が活気づき、開戦になだれ込む可能性すらあるのです。事実、姉上にはそれが実現できるだけの政治力と、父への影響力がある」


 政治的実権がほぼ皆無のリュドミラやアレクサンドラとは違う。エリザヴェータは国政を揺さぶるに足る発言力と影響力、何より実行力を持っている。彼女を怒らせて勢力図に手出しされようものなら、最悪開戦だ。そんな現実を突き付けられては、さしものアンゼリカも平静ではいられなかった。


「…………す……すみませんでした……」

 アンゼリカは息を呑んでから、消え入るような声で謝った。肩が落ち、眉が下がり、消沈した情けない顔になる。一方ユーリスは、言い過ぎたかという気持ちと、どうすればいいのかという気持ちで混乱していた。


 あそこまで怒りを買ってしまっては、離宮に押し込んで終わらせるわけにもいかないだろう。エリザヴェータは屈辱には屈辱で返す女だ。無理に離宮に入れても早晩引きずり出されるのが落ちだろう。こうなっては姉は、アンゼリカの心を折るまで諦めまい。


「……失礼しました。冷静さを欠いていました」

「いえ……本当にご迷惑ばかりおかけして……」

 アンゼリカは悄然と答える。そこに日頃の精彩はなく、弱弱しい少女だった。思えば、アンゼリカも災難な立場だ。国の都合からこんな北の果てに嫁がされ、義理の家族に日々振り回されているのだから。今回の問題は色々な要素が重なってのことだし、アンゼリカだけの非とは言えない。


 状況がどう転ぶにしても、フローラスも自国の王女でない以上、強く援護はしてこないだろう。アンゼリカは孤立無援なのだ。そこに思い至り、ユーリスは自省した。


「……とにかく、これ以上の悪化は食い止めなければいけません。暫くは皇城行事参加の自粛という形で、姉上が落ち着くのを待ちましょう。私からも執り成しをしますので……」


 今の状況では、パーティーや催しに出席してもろくなことにはなるまい。アンゼリカも「はい」と頷いた。


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