首なし姫
姫には二つのうわさがある。
一つは二目と見えぬくらい醜いというもの。もう一つは光り輝くほど美しいというもの。
姫は屋敷の奥深くに隠れ誰とも会うことがなく噂ばかりが広がっていた。
そんな姫に帝が興味を示された。
さすがの姫も親兄弟に迷惑が掛かると帝の前に姿を現わした。
姫には首がなかった。
帝が尋ねると、姫は渋っていたがとうとうその理由を話し始めた。
幼い頃から美しかった姫を鵺が見初めその首を奪っていってしまった。十年後である今年の中秋の名月に迎えに来ると言い残して。
帝は姫の屋敷に通い詰めた。姫は和歌だけでなく漢詩にも造詣が深い。帝が問えばすぐに応える。また、帝がわざと間違えるとそれとなく直して答える。
二人がひかれあうのは自然だった。
秋になり、中秋の名月の日、帝は姫と共に鵺が来るのを待った。月明りの中、庭に鵺が現われた。帝が弓を引き矢を放つと鵺の目に刺さった。帝は二の矢三の矢と続け鵺を打ち取った。すると姫の首が戻った。
その姿は光り輝き美しかった。
帝は姫を内裏に迎え入れ、末永く仲睦まじく過ごされた。