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元公爵家執事の俺は婚約破棄されたお嬢様を守りたい 第3章(9)俺のずっと求めていた人が

作者: 刻田みのり

 イアナ嬢たちがマリコーのラボの研究室にいる。


 それも人の魔力を結晶化して球にしてしまう恐ろしい魔方陣の中にいる。


 いや、あれはきっと人だけじゃなく他の魔力を有する存在も球にするのだろう。つまり、黒猫やポゥはもちろんラキアやファミマも対象にされてしまうのだ。


 きっとめっちゃでかい球が出来るだろうな。それも二個も。


「……」


 て。


 ファミマはともかくラキアがそんなやばいもんの中で大人しくしてるか?


 そもそも、どうしてあいつが何も抵抗していないんだよ。


 ちょいと古代紫竜(エンシェントパープルドラゴン)の姿に戻って一暴れすればいいだろうが。こんな施設の一カ所や二カ所、いや大陸の一つくらい余裕のよっちゃんで滅ぼせるだろうに。


 などと思っているとファミマが口を開いた。



「こんなことをしてただで済むと思ってるの?」



 天使の格好をした見た目十歳の男の子が精一杯の睨み顔をしている。本人には悪いがかなり微笑ましいな。


 その両サイドにはジュークとニジュウ。ジュークはファミマの右側で万能銃のバンちゃんを握っているし、ニジュウは左側でドラゴンランスのドラちゃんを構えている。天使姿のファミマと相まって子供のお遊び感がハンパない。


 これを俺のお嬢様が見たらすっげぇ喜びそうだな。


「小っちゃい子が一生懸命強がってて可愛いですねぇ!」


 とか言いそう。


 くっ、可愛いオブ可愛いのお嬢様に可愛い認定されるかもしれないだと?


 あいつらは本物の天使か?


 だが、お嬢様はさらにその上をいく可愛さなのだ。正に天使長クラス……いやこれだとあんまり可愛くないような(*あくまでもジェイのイメージです)。


 ……じゃなくて!


 あいつらやる気か。まあやるんだろうけど。やらない選択肢はないな。


 イアナ嬢もちょっと三人(一柱と二人)から離れた位置でメイスを握っているし、。


 彼女の右肩にはポゥ。


 あ、イアナ嬢の奴片手でポゥをもふってやがる。何て羨ましい。俺ももふりたい。


 黒猫がイアナ嬢の足下で丸くなってる。あいつ、えらく余裕だな。痛い目を見ればいいのに。


 いつまでも親父の技をパクっていられると思うなよ。


 そして、ラキアは……。



「ねぇ、ちょっといいかしら?」



 妙に真面目なトーンでラキアは声をかけた。


 姿は映らないがマリコーの声が応える。



「あら、なぁに?」

「あなた、メメント・モリ大実験で集めた魔力をどうするつもりなの? 世界規模で魔力を集めたら尋常ではないサイズの球が出来上がるわよ。それで何をするつもり?」

「大きさなら幾らでも私の自由にできるわ」

「そう、でも保有する魔力は膨大なものになるわよね。それで何をするのかしら?」

「何をって……それをあなたに教えなくてはいけない義務はないわ」

「そうね」



 ラキアがうなずいた。


 一度目を瞑り、すぐに開く。


 その瞳が赤々と光っていた。


 あ、ラキアの奴怒ってるな。



「けど、あなたは竜人を巻き込んだわよね? アタシは竜人じゃないけど彼らを庇護する立場ではあるの。だから、はっきり言ってムカついてるのよね。ルールに縛られていなければ即座にあなたを罰しているところよ」

「そう、それは残念ね。ルールに縛られるだなんてお気の毒様」



 マリコーの声は微塵も気の毒そうではなかった。


 ファミマが会話に割り込む。



「ルールは必要だからあるんだ。わかるだろ、僕ちゃんや君のような存在はその力の強大さ故に一つ間違えれば世界を滅茶苦茶にしかねないんだ。力や意思を律するためにもルールはなくてはならないんだよ」

「私は別に世界を滅茶苦茶にしようとしている訳ではないのよ」



 嘆息。



「誤解するのはそちらの買ってだけど私は実験を楽しみたいだけ。予算や上司の機嫌やクライアントの無理難題に振り回されることなく、ただ純粋に実験を楽しみたいの」



「……」


 予算や上司の機嫌やクライアントの無理難題?


 何の話だ?


 俺が首を傾げているとクロネコ仮面が口を歪めた。


「やっぱり転生者か。いや、もしかして転移者か?」

「……」


 転生者とか転移者とか、どういうことだ?


 俺はクロネコ仮面に尋ねた。


「一体何の話だ? 転生者とか転移者とか……マリコー・ギロックがそうなのか?」

「てめーの頭は飾りか? ちゃんと聞いてりゃわかるだろうが……て、まだ確定じゃねぇか」


 舌打ちするとクロネコ仮面が爪の装備を一瞬で消す。


 そして、俺が瞬きする間もなく短杖を修道服の袖口から出した。


「俺だとこいつで知力を底上げしねぇと鑑定できねーんだよ。しかも、これ使い切りだから一回でぶっ壊れるし。わぁ、超たりー」

「……」


 えっ、どゆこと?


 こいつ、鑑定なんてできるの?


 嘘だよな。


 ガラ悪いし不良っぽいしめっちゃそういうのできなさそうなイメージなんですけど。


 ……とか思ってたら睨まれた。あ、この目は殺し屋の目だ。確実に何百人も殺してるやばい奴の目だ。


「ちっ」


 再び舌打ちするとクロネコ仮面が薄い板に向かって短杖の先端を突き出した。


 だが。


「だあーっ、なーんであのババァが映らねぇんだよっ。姿が見えねーと鑑定できねぇだろうが」

「……」


 うん。


 地味に不便だな、その鑑定。



「ちなみに私のこと鑑定しようとしているそこのあなた。そういうの無駄だし気持ち悪いから止めてね」



「……」


 えーと。


 これ、クロネコ仮面のこと言ってるんじゃないよな?


 たまたま他の奴が鑑定しようとしていたのが気づかれただけだよな?


 クロネコ仮面のことじゃないよな?


 自分のことでもないのに俺は背中に嫌な汗をかいていた。


「あらあら、これは結構まずいかもしれませんねぇ」

「!」


 背後で女の声がして俺ははっとする。


 聞き覚えのあるようなないような、何だかもやもやする声だった。


 俺が振り向くとウィル教の修道服を着た人物がいた。ウサミミのカチューシャを頭に付けており、白い仮面で顔を隠している。


 シスター仮面一号だ。


「え?」


 いきなりの登場につい間抜けな声が出てしまう。


 いや、だってこれおかしいでしょ。


 こっちには既にクロネコ仮面が来てるんだし。


 助けに現れるならイアナ嬢たちのいる方だよね?


「あらら、私に吃驚し過ぎて鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔になってますよ」

「あ、えっ、だって」

「もう、ジェイは仕方ないですねぇ」

「……」


 その時、俺はシスター仮面一号にお嬢様を感じた。


 そんなはずがないというのに、だ。


「店長」


 クロネコ仮面が駆け寄ってくる。


「すまん。まだこっちは終わってない……」

「別にそれはいいですよ」


 シスター仮面一号は朗らかに応じたが。


「それより、店長?」

「あ」


 指摘した声音が低い。めっちゃ低い。


 クロネコ仮面の顔が蒼白になった……と思う。いや、顔の上半分仮面で隠れてるし。


「ま、急を要するのでお説教は後ってことで。ここの状況は大体把握してます」


 と、彼女は俺に向き。


「ジェイ、右手を出してください」

「は?」

「早く」

「あっ、はい」


 気圧され、俺は右手をシスター仮面一号に差し出した。


「できればちゃんとノーゼアに帰ってから渡したかったんですけどねぇ」


 言いながら彼女は修道服の袖口から銀色の腕輪を取り出した。銀色と言ってもやや青みがかった銀色だ。ミスリル製だろうとすぐに見当がついた。


 その腕輪が俺の右手首に装着される。


 少しサイズが大きかったのに腕輪は独りでに丁度良いサイズに縮んだ。凄いな。


「ふふっ、これでマジックパンチも連射できますよ♪」

「……」


 ころころと笑うシスター仮面一号。


 目を白黒させる俺。


 え、ちょい待って。


 これってもしかしなくてもマジンガの腕輪(R)だよね?


 そう思っているとあの天の声が聞こえてきた。



『「マジンガの腕輪(R)」のスペシャルパワーを解放しますか?(はい・いいえ)』



「……」


 これはあれだ。


 腕輪のアップグレードとやらをしてマジックパンチを連射可能にするってことだよな?


 そうだよな?


 なーんとなくそんな気がするぞ。


 俺はシスター仮面一号を見た。


 彼女はうなずき、こちらに親指を立てて見せる。


「はい、だ」


 俺は選択した。



『女神プログラムによりマジックパンチのアップグレードを開始します』



 右腕の腕輪が激しく光り、圧倒的な光量で俺を飲み込んだ。



 **



 眩しさに堪えきれず目を瞑った俺の頭の中で天の声が淡々と響く。



『エレメンタルコアとのリンクを確認、ステータス正常』


『マジェスティックオペレーションを起動』


『マルチロック機能を追加』

『オートマチックファイヤーを追加』

『マナコンバーターを追加』

『マナブースターを追加』


『トータル制御システムを構築』

『女神プログラムの特別ルールによりディメンションコアとのリンクを承諾』


『インストールプログラムを作成します』


『アイデンティフィケーションフェイズ……エンヴァイロメントフェイズ……データフェイズ……プログラムフェイズ……エンドフェイズ』


『ジェイ・ハミルトンの身体を(ピーと雑音が入る)に対応させるため組成変更します』


『組成変更用術式を展開、エーテルコアとのリンクを確認、(またピーと雑音)を実行』



「うおっ」


 ちくちくと刺すような鋭い痛みが俺の全身を走った。我慢できない程の痛みではない。


 最後に下腹のあたりをちくちくさせるとその刺激は止んだ。



『完了まで90㌫……72㌫……41㌫……15㌫……8㌫……完了しました』



『マジンガの腕輪のアップグレードが完了しました』


『以降、マジックパンチの連射が可能となります』


『また、ジェイ・ハミルトンにマナドレインキャンセラーとマナブースターとマナコンバーターが内臓されました』


『これにより、外的要因による魔力の消失および魔法・能力の発動阻害を無効にできます』


『さらに自身の保有魔力の増幅および効率変換が可能となりました』



『お知らせします』


『ジェイ・ハミルトンに称号「女神の守り手」が授与されました』

『なお、詳細は秘匿されます』



「……」


 マジンガの腕輪のアップグレードをしている間にダーティワークの黒い光のグローブは解除と発動を繰り返していた。


 そして今は解除状態となっている。


 なぜ、解除と発動が繰り返されたのかは俺にもわからない。たぶんアップグレードの作業に必要だったのだろう。そう思うことにする。


 それより……。


「……」


 俺は両手をじっと見た。


 ダーティワークを発動していないのに強い魔力を感じる。何と言うか力が内から漲っているような感じがするのだ。


 俺の体内でとてつもなく強い魔力が沸き上がっていた。まるで自分の中、特に下腹のあたりに魔力の源泉があるかのようだ。


「ジェイ、気分はどうですか?」


 シスター仮面一号がにこやかに訊いてくる。


 その声はお嬢様の声だった。


 いや。


 今の俺にはわかる。


 この人は俺のお嬢様だ。


 二年前にクソ王子ことカール第一王子によって婚約破棄と断罪の憂き目に遭い、王都から辺境の地ノーゼアへと追放されたミリアリア・ライドナウだ。


 もっとも、今はシスターエミリアと名乗っているが。


「……」


 どうして今まで気づかなかったのだろう。


「ふふっ、その顔、ひょっとしてばれちゃいました?」


 お嬢様が微笑む。


 まるで春に咲く小さな花のようだ。可愛い。めっちゃ可愛い。


 仮面なんかでは彼女の可愛さを隠せない。


 俺はこの人のためなら死ねる。


「そうですねぇ、体内にマナドレインキャンセラーとマナブースター、それにマナコンバーターがありますものねぇ。そりゃ魔力も強くなりますよねぇ」


 お嬢様がとても嬉しそうだ。


 彼女はうんうんとうなずきながら言葉を接いだ。


「私の被っているウサちゃんマスクの認識阻害を打ち破ってしまうくらい魔力が強くなっていてもおかしくないですよねぇ」

「え?」


 ウサちゃんマスクの認識阻害?


 その仮面ってそんな効果を持っているんですか。


 彼女はゆっくりとマスクを外した。


 露わになる可愛らしい顔。


 ノーゼアを発ってからずっと求めていた、ずっと会いたかった人の顔がそこにあった。


 俺のお嬢様がそこにいた。


「くっ、また邪魔者かっ!」

「ふむ、いずれにせよこの結界を何とかせねば吾の攻撃は届かんぞ。もっとも、あちらからも手出しできぬようだがな」


 結界の外側でバロックが騒ぎ、元エルが腕組みしながらふんぞり返っている。


 ああ、そういやこいつらがいたな。


 しかし、何だろう。


 今なら全く負ける気がしねぇ。


「ジェイ」


 お嬢様はバロックたちを一瞥すると俺に告げた。


「いろいろ訊きたいことがあるでしょうが、今は目の前の敵をどうにかしましょう。クロちゃん」

「店長、その呼び名もちょっと……」


 露骨に嫌がるクロネコ仮面には応えずお嬢様は言った。


「二号ちゃんがファミマたちの下に向かってます。あなたもそちらへ行ってください。ここは私とジェイで片づけます」

「はぁ? 何とかって言うマルソーんとこの若いのがいるパーティーが危ないからってあっちに行かせたんじゃなかったのか?」

「ええ、でもブートキャンプの効果が想定以上だったみたいで……」

「んだよ、ならそっちに行ってりゃ楽できたのか」


 そう言ってクロネコ仮面が目を閉じた。


「……ん、ここか。よしっ」


 クロネコ仮面がふっと消えた。


 見送るかのようにクロネコ仮面がいた場所を見ていたお嬢様が一つうなずき、バロックへと視線を向ける。


「あなたがジェイを傷つけた人ですね」

「傷つけた?」

「ええ」


 お嬢様が修道服の袖口から手のひらサイズのハンマーを取り出した。


「あなたが叶いもしない望みを叶えるためにジェイの心を傷つけ、彼に危険な感情精霊を宿らせた。それだけでも罪深いのに何人もの子供たちを犠牲にしてきた。いいえ、子供たちだけではありませんでしたね。あの村のこと、しっかりと調べてありますよ」

「くっ、黙れ。この小娘がっ!」

「そしてその後も子供たちを使って人体実験をして……そちらの方も沢山の犠牲を」

「結果を出すための礎だ。それくらい当然だろう」


 お嬢様の言葉を途中で遮り、バロックが怒鳴った。


 そのバロックをお嬢様が冷たく睨む。


「そういう考えは許容できません。それとあなた」


 と、元エルを睨み。


「あなたは何故その身体に宿っているんですか?」

「吾のことかね?」


 元エルがふんと鼻を鳴らした。


「言っておくが、吾はエルヴィスが望んだからこの身に宿ってやっておるのだぞ」

「エルが望んだ?」


 俺がつい聞き返してしまうとバロックが口角を上げた。


「エルはお前とは違うのだよ、ジェイクリーナス。お前はどれだけ頑張っても一つしか精霊を宿らせなかったのにエルヴィスは複数の精霊を宿らせることに成功したのだ。これがどれほど素晴らしいことかわかるか?」

「エルヴィスは自分と同じ境遇の子供たちと殺し合いをさせられたと言っておったな」


 元エルが楽しそうに報告する。


 いや、それって楽しそうに言うことか?


 それに……。


 俺は尋ねた。


「なぁ、あんたと交替したエルはあんたと話せるのか?」

「必ず会話が成立する訳ではないがな。だが、良い退屈凌ぎにはなるぞ」

「……」


 良い退屈凌ぎって……。


 ちょい微妙な気持ちになる返答だった。


 それよりお嬢様の顔が怖い。


「そうでした。そういえばそんなことをしていたんでしたね。子供同士で殺し合いをさせるなんて」

「し、真に強い魔法戦士は戦いの中で最強に到達するのだ。最強を名乗れるのは常に一人。頂点は一人でなくてはならないのだよっ!」

「それで実力が拮抗していたエルヴィスとケイオンを戦わせたとはな。それに二人は親友と呼べる程の仲だったと言うではないかね。吾も地味に引くな。そういうのは吾の好みに合わぬ」

「け、結果を見れば大成功だったのだ! エルヴィスは自らの手でケイオンを殺し、その自責と絶望で内なる精霊を変異させてバンシーとした。そして……」


 バロックが元エルを手で示した。


「エルヴィスはさらに別の精霊を宿したのだっ。ああ、これはマリコー・ギロックにも感謝せねばなるまいな。あの女の技術提供がなければ炎の精霊王をエルに宿らせるなど不可能だったかもしれん」

「ふふっ、そうですか」


 お嬢様が低く笑った。


 あ、これは良くない笑いだ。


 俺がそう思っていると徐にお嬢様が手のひらサイズのハンマーを振り上げた。


「やはりマリコー・ギロックも有罪ですね。ジェイ、さっさとここを片づけて彼女を倒しに行きますよ」

「えっ、でも」


 俺たちはまだ結界の中にいた。


 結界の壁がある以上、こちらからの攻撃は通らない。まあそのお陰で向こうからの攻撃も通らないのだが。


 パリーン。


 お嬢様がハンマーを振るとあっけなく結界が壊れた。


「……」


 えっ、何で触れてもないのに結界が壊れるの?


 ハンマーは当たってないよね?


 待って、ちょい待って。


 これ、元エルが散々攻撃したのに傷一つ付かなかった結界なんですよ。


 どうしてお嬢様が壊せるんですか。


 破壊された影響か透明だった結界が可視化されていった。


 崩壊していく結界の壁が光の粒子となって消えていく。


 きらきらと光る光の粒子に照らされたお嬢様の顔がとても神秘的に見える。可愛くて神秘的だなんて反則過ぎだ。これはもう天使なんてレベルじゃないし天使長レベルでもない。


 あれか、俺のお嬢様は女神だったのか?


 などと考えていると……。


「さて」


 お嬢様がにっこりと微笑んだ。


「ジェイ、ここから先はあなたに任せましたよ」



 **



 あっけなく崩壊して消えた結界にバロックが目を丸くした。


「な」


 あんぐりと開けた口から間抜けな声が漏れる。


「ななななな」


 人間ってこんなに同様できるんだな、とか俺はつい思ってしまった。はい、そのくらいこちらには心に余裕があるので。


 何と言うか……そう、これはお嬢様効果?


「ななな何でマクドの攻撃すら効かぬ結界をこんな小娘が壊せるんだ? おかしい、こんなの絶対におかしいぞ」

「……」


 ああ、やっぱりマクドがエルに宿ってたのか。


 まあ、炎の精霊王ってマクドしかいないよな。うんうん、わかってたわかってた。


「マクド……ああ、なるほど」


 お嬢様がため息を吐く。ちょい残念そうだ。


「確かにマクドの魔力を感じますね。でも、これって本体ではなく分身体なのでは?」

「なっ」


 お嬢様の言葉にぎょっとしたバロックが元エルを見る。


 元エルが不敵に笑った。


「今さらかね? いかにも吾は分身体だが。まさか本体がこのようなつまらぬ身体に宿るとでも?」

「だが、マリコー・ギロックは確かに宿らせたと……くっ、そうかあの女! よくも騙してくれたなっ!」


 地団駄を踏むバロック。


 それを愉快げに眺めていた元エルが俺に向いた。


「おや、どうしたのかね? もう結界はないのだし吾に攻撃してきても構わぬのだよ。そちらのお嬢さんも任せると言っておったではないかね」


 挑戦的に目をぎらつかせ口の端を上げた。


 あ、こいつ手招きまでしてやがる。


 ムカつく。


 怒れ。


 当たり前のように俺の中の「それ」が反応した。囁く声が俺を煽ってくる。


 怒れ。


 怒れ。


 怒れ。


 その声を聞き流しつつ俺はダーティワークを発現させる。


 黒い光のグローブが俺の両拳を包んだ。それとともに身体強化の効果が俺の肉体を強くする。


 今なら一歩で元エルとの距離を詰められるだろう。


 だが俺はそれをせず二つのマジンガの腕輪に魔力を送った。


 チャージ。


 ここは魔力吸いの大森林の中央にあるマリコー・ギロックのラボ。


 通常ならここも大森林の影響を免れない。それこそマナドレインキャンセラーのような遺失技術(ロストテクノロジー)を使わなければ魔法を体外で発動させることすら難しい。


 身体の外に放出した魔力は大森林の影響で何処かへと消えてしまうのだから。


 だが、俺にはマナドレインキャンセラーがある。


 それだけでなくマナブースターもマナコンバーターもある。


 身体の中に魔力の源泉でもあるような感覚。


 漲る力。


 俺はニヤリと笑ってやった。


 両拳を元エルに向けて発射の態勢をとる。


 そこに。


「ジェイ、あの美少年を殺してはいけません」


 お嬢様からの待ったが入った。


 睨めつけてくる元エル。マクドの意識が強すぎるからか態度が物凄く偉そうだ。


「吾に勝てるのかね? いかに力を付けようと所詮はバロックの失敗作なのだろう? そんな程度で勝てるのかね?」

「そ、そうだ。お前は失敗作。今になって現れたところでそれは変わらんっ」


 元エルが挑発し、バロックが同調する。もう十分過ぎるほどバロックの小物感がハンパないのだが俺は我慢した。


 先にやるのは元エルだ。


 俺は左右のマジックパンチを同時に発射した。


「ウダァッ!」


 轟音を伴って二つの拳が放たれる。


 元エルが無詠唱で防御結界を展開したが無駄だった。


 易々と結界の壁を貫き、そのままの勢いで元エルの両脇腹を抉る。不快な炸裂音が二つ重なった。


 左右の拳が弧を描いて戻ってくる。


 手首の断面に接合すると何事もなかったかのように二つの拳は手首と繋がった。


「ふん」


 ダメージを受けたはずの元エルは余裕だった。


 その証拠にマジックパンチで深手を追った両脇腹が炎を纏いながら再生していくではないか。


「児戯だな」


 元エルがふんぞり返った。


「そんなくだらぬ攻撃をしているようでは吾に勝てぬぞ」

「……」

「は、はは」


 元エルの挑発を俺が無言で応じているとバロックが嘲笑った。


「ははは、そうだな。いかにお前が力を得ようと最強にはなれん。何故だかわかるか?」

「……」

「それはエルこそが真に最強の魔法戦士だからだ」


 俺が無言でいるとバロックがいい気になって鼻を高くした。


 あ、こいつ調子に乗ってやがるな。


 よし。


 俺は再度腕輪に魔力を流した。


 チャージ。


「ジェイクリーナス、お前の成長にはほんのちょっとだけ驚いたがそれだけだ。エルが最強の魔法戦士である限りお前には勝てんっ!」

「む?」


 まだ勝ってもいないのに勝ち誇るバロック。


 一方、元エルは何かに気づいたようで警戒するように防御結界を張り直した。今度は前より分厚そうだ。


 俺は両拳でラッシュを浴びせるイメージを描きながらマジックパンチを撃った。


「ウダア!」


 轟音とともに左・右と少しタイミングをずらして拳が発射される。


 俺の拳は左右に一つずつ。つまり二つしかない。


 マジックパンチの連射と言っても二発が限界……のはずだった。


「!」


 拳を失った部位に黒光りする拳が現れた。


 瞬時に俺は理解する。これは魔力で作り出された拳だ。本物ではなくあくまでも魔力による複製だがマジックパンチの「拳弾」にはなる。


 だから放った。


 放っても放っても次から次と「拳弾」が補充される。


 まるで遠隔でラッシュを放っているようだった。


「ウダダダダダダダダ……っ!」


 まあ、頭の中で「オートマチックファイヤー作動中」と天の声が聞こえるのは気になるが。これってマジックパンチでラッシュをやる度に聞こえるのか? だったら嫌だな。


 初めの数発は結界に阻まれた。


 なるほど、分身体でもマクドはマクドか。警戒すれば守りは堅い。腐っても炎の精霊王ってところだな。


 炎が腐るってのは意味不明だが。


 しかし、パワーアップした俺のマジックパンチはこんなもんじゃなかった。


 結界の壁を打撃する「拳弾」が繰り返し壁を打ち続け、やがて小さな亀裂を生じさせる。


 そこからはあっという間だった。


 一気に亀裂が広がり、やがて結界の壁が砕けた。


 濁流のように「拳弾」が押し寄せ元エルに襲いかかる。


 防御結界を張り直そうとした元エルだが間に合わず一発また一発と打撃が加えられた。


 何発何十発何百発という「拳弾」が元エルを滅多打ちにする。


「ぬおおおおおおおおおおおっ」

「ウダダダダダダダダダダダダダダダダ……!」


 俺は闇雲にマジックパンチを連射していた訳ではない。


 攻撃を続けながら探知を使って元エルの体内の魔力を探っていた。


 ここはマリコーのラボの中だが魔力吸いの大森林の中でもあるのだ。通常、その影響は避けられない。


 だが、あのエンエンや俺のようにマナドレインキャンセラーを内臓していたら?


 エルはマクドと交替する前に魔法を使っている。結界はもちろん攻撃魔法も発動させていた。


 もしや……。


「!」


 あった。


 奴の下腹、ほぼ中心あたりに異常に濃い魔力反応があった。


 マナドレインキャンセラーにより大森林の影響から外れ、さらに増大した俺の魔力によって高性能化された探知はその異常に濃い魔力反応を「探していた物」と認識。


 さらにその反応は俺のマナドレインキャンセラーと酷似していた。


 うん、間違いないな。


 即座に俺はそこを狙った。


「ウダアッ!」


 奇しくも何度か目に戻ってきた俺の左拳(本物)がエルの下腹部中央を打ち抜いた。


 遠隔で肉をぶち破る不快な感触と硬い物を砕いたような感覚が体温とともに伝わってきたができるだけ気にしないよう努めた。まあ、なかなか難しいが。


「ぐふっ!」


 元エルが表情を歪め苦悶の声を上げる。


 炎を下腹部中央に纏わせようとして失敗した。一瞬だけ燃え上がるもすぐに消えてしまったのだ。傷も塞がらずどくどくと血を流している。


「な、何故だ。吾の魔力が安定せぬ……だと?」

「……」


 いやあんたそれでも炎を一瞬とは言え燃え上がらせただけでも凄いぞ。


 とは言わず。


 俺は元エルの両腕と両脚に「拳弾」を撃ち込んで無力化した。魔法を使えなくなった元エルは最早完全に俺の敵ではなかった。


 よし、それじゃいよいよバロックへの断罪だな。


 そう思って向き直ると奴は狂ったように笑い始めた。



 **



「あーはっはっは、こいつもまた失敗作だったとはな。とんだ期待外れだっ!」


 バロックの姿が一瞬消え、俺や元エルから離れた位置に転移した。


 呪文の詠唱や魔方陣は使っていない。魔道具の類を使っている可能性もあるが定かではなかった。


 そして、周囲は元エルの魔法によって溶岩地帯と化している。常人ならとても平気ではいられない環境だ。


 俺はファミマの祝福によって致死以外の状態異常を無効にできるしこれまでの戦いで成長しているから身体も強化されている。さらにマジンガの腕輪のアップグレードの時に何かいろいろされたみたいなので大抵の環境に対応できるはずだ。自分でも何故かはわからないがそんな気がする。


 エルは……表にエルヴィスかマクドのどちらかが出ているかによって変わるかもしれないが今は平気そうだった。その証拠に溶岩の上に直置きで転がされているというのに地形効果でのダメージは一切ないように見える。


 つーか着ている服とか装備とかも溶けないし燃えないのだが。


 あれか、ご都合主義的な何かが働いているのか?


 お嬢様は……うん、この人は特別だし。


 俺のお嬢様はトイレに行かないし、溶岩地帯もへっちゃらなのだ(男の幻想込み)。


 そうに決まってる(ぐっと拳を握る)。


 ……で、バロックなのだがこいつも溶岩の上に立っているのに平然としていた。何なら履いている靴もノーダメージだ。どこの特注品だよ。


 バロックが両手を上げた。


 その手が炎に包まれる。


「ここが溶岩地帯に変えられていたのがお前らの敗因だな。このまま始末してやる」

「……」


 あれだ。


 こいつが何をするつもりでいるかは知らないが、全く負ける気がしねぇ。


「ジェイ」


 お嬢様が言った。


「その人には手加減しなくてもいいですよ。遠慮なく滅しちゃってください」

「はい」


 もちろんそのつもりだ。


 こいつは……バロック・バレーはここで始末する。


 こいつが生きていればまた誰かが俺やエルヴィスのように苦しめられるだろうからな。


 俺は大量の銀玉を収納から射出した。


 使い捨てにしてしまった分もあるから1000個には足りないがまあいいだろう。


 それにしてもマナドレインキャンセラーがいい仕事してくれているなぁ。


 俺はバロックを指差して告げた。


「くだらない目的のために犠牲になった人たちの分も食らいやがれっ! サウザンドナックル!」


 俺のまわりに滞空していた大量の銀玉が一斉にバロックへと襲いかかる。


 バロックが炎に包まれた手で身を守ろうとしたが無駄だった。ほとんど間を置かずに銀玉による打撃が加えられバロックが奇妙なダンスを踊る。


 あ、そうだ。


 ふとあることを思い出したが、俺は攻撃を続けた。


「ウダダダダダダダダ……っ!」

「おごおぉぉぉぉぉっ!」


 エルとの戦いを思えばバロックは楽な相手だった。


 自分は戦わず、偉そうにして他の者を戦わせるような奴なんて案外そんなものなのかもしれない。


「ウダァッ!」


 ズタボロになったバロックにおまけの一発をぶち込むと、奴は仰け反るように倒れた。


 執念なのかまだバロックの手が燃えている。


 俺はバロックを凝視した。


 打撃を終えた銀玉が俺のコントロールに従い奴の周囲で留まっている。


 妙な動きをしても即座に対応できた。


 バロックが弱々しく口を開く。


「とどめは……刺さないのか?」

「一つ質問がある」


 俺はあることを思い出していた。


 そのことがなければサウザンドナックルだけで終わらせていたかもしれない。


「あんたが村を捨てた夜、古代紫竜(エンシェントパープルドラゴン)が現れて大暴れしただろ? あんたはあいつに攻撃されて火の海に落ちたはずだ。それなのにどうして生き残った?」

「……」


 バロックが無言だったので銀玉を一発奴の右肩に投げつけてめり込ませた。ゴキリと骨が砕ける音がしたが気にしない。


 バロックが何か騒いでいるが気にしない。


 俺は少し待ってから再度質問した。


「何故、あんたは生きている? あの火の海はとてもじゃないが落ちたら助からないはずだ」

「ふ」


 バロックの身体が小刻みに震える。


「ふふふふふふふふふふ」

「……」


 気味の悪い笑い方をするバロックに警戒しつつ俺は怒鳴った。


「さっさと答えろっ! 殺すぞ」


 まあ、どっちにしろ殺すのだが。


「殺す?」


 バロックがピタリと笑うのを止めた。


 その瞳が妖しく赤く光る。


「お前に殺せるのか……ジェイクリーナス?」


 バロックの魔力が急激に膨れ上がっていた。


 その濃密な魔力が奴を発火させる。真っ赤に燃え上がる炎はバロックの肉体を炭化させ不快な臭いを撒き散らしながらその炎を巨大化させていった。


「……やべっ」


 やっちまった。


 俺は頭を抱えて反省したくなるのをどうにか堪える。


 これは完全に俺のミスだ。


 質問なんぞしないでさっさととどめを刺せば良かったのだ。


 つまらないことを気にして奴に反撃のチャンスを与えるだなんてどうかしている。


 炎と化したバロックは狂ったように笑っていた。


「私を本気で殺せると思っているのか、この失敗作の化け物がっ!」


 バロックの足下から放射状にマグマが吹き出し滞空していた銀玉を全て飲み込む。


 この一回で俺の操っていた銀玉が全部溶かされてしまった。


 バロックが笑い狂う。


「お前もエルももう要らんっ。ここでお前らを全員始末して今度こそ最強の魔法戦士を作ってやる。そしてこのバロック・バレーの名を世界中に知らしめるのだっ!」

「ああ、これはどうしようもないですねぇ」


 声高な宣言をするバロックにお嬢様が呆れた。


「あんな程度の魔導師に最強の魔法戦士なんて作れるはずがないんですよ。というか、もうその願望と自尊心しか残ってないですよね?」


 お嬢様はつかつかと元エルの下に歩み寄り膝をついた。


 修道服の袖口から白いクマの彫像と白手袋を取り出す。


 白いクマの彫像を時分の横に置くと彼女はポンとその頭を叩いた。


 チカチカと両目を点滅させると白いクマの彫像が大きく口を開ける。


 やがてゴウゴウと風を放出し始めた。


 一気に周辺の温度が下がっていく。ああ、あのクマの彫像は冷風を吐いているのか。


「……」


 て、あれ?


「な、なな何だこれはっ、凍る……だと?」


 バロックが戸惑ったように叫ぶ。


「そそそそんなっ、ここはマグマも吹き出す溶岩地帯だったはずだ。それが何故こんな急に冷えていく?」

「……」


 俺が説明を求めてお嬢様を見ると彼女はにっこりと微笑んだ。マジで可愛い。癒やされる。


 お嬢様は白手袋を自分の手に填めながら応えた。


「あ、このクマさんの置物はシローイクマくん。ご覧の通り冷房用の魔道具です。ほら、今年の夏はちょっと暑かったでしょ? ブラザーラモスとかがあまりにも辛そうでしたので試作してみたんです」

「れ、冷房……ですか」

「もっともせっかく作ったのにこれ(試作機)ができた頃には涼しくなってしまったんですけどね」

「はぁ」


 苦笑するお嬢様も可愛いのだが返答に困るなぁ。


 てか、話している間に一面銀世界なんですが。


 何なら雪も降ってるし。こりゃ、まだまだ積もるな。


 ……じゃなくて!


 あのシローイクマくん、絶対にただの冷房用魔道具じゃないよね?


 追求しようとしたらお嬢様がそっぽを向いた。ええっ?


「くっ、何だこれはっ! 凍る、身体が凍るぞっ!」

「……」


 あ、うん。


 バロックが騒いでるけどもういいや。


 こっち(お嬢様のやらかし)の方が大事だし。


 お嬢様が俺と目を合わせないようにしながら白手袋を填めた手を元エルの身体にかざす。


「ハンドマジックパワーです」


 テッテッテッテレー♪


 テッテッテッテレッテー♪


 どこからともなくテンポの良い奇妙な音楽が流れてきた。はい?


 白手袋がぼんやりと光る。


 ゆっくりと元エルの身体が震えて右胸のあたりから小さな球が二つ浮き出てきた。


「ああ、私の見立て通りでしたね。こちらの赤いのが炎の精霊結晶でこのオレンジ色のが魔石……」

「それに触るんじゃないっ!」


 バロックが喚いた。


 大部分を凍りつかせた身体を引きずるようにお嬢様へと迫っていく。


「あらあら」


 お嬢様がクスリと笑った。


「やはり受肉されていたんですね。さしずめ炎の悪魔バロックといったところでしょうか。受肉のタイミングとしては例の事件で火の海に落ちた時ですか? 悪魔の中には死に際の強い未練を好む方もいると言いますからねぇ」

「うるさい! いいからそれをよこせ!」

「ええっ、嫌です」


 お嬢様の姿がふっと消え、俺の間近に現れた。


 そのまま俺の背後に隠れる。


「ジェイ、わかってますよね? 悪魔は自分の魔石を破壊されると……」

「ジェイクリーナスっ、その女から魔石を取り上げろ!」


 今度は俺の方にバロックが向かってきた。


 どうやら炎の悪魔(?)バロックは身体が凍っていると転移できないようだ。まあ、あくまで俺の推測だが。


 俺はお嬢様からオレンジ色の魔石を受け取った。


 バロックが叫ぶ。


「ジェイクリーナス、それをこっちに寄こせ!」

「断る」

「こ、断るだと。し、失敗作の化け物の癖に断るだと」


 たぶん、まともな人間の状態だったらバロックは顔を真っ赤にして怒っていただろう。


 でも、ま、凍ってるし。


 激高しながらバロックが俺に飛びかかってきた。


「いいから寄こせと言ってるんだ。この失敗作の化け物がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 俺はバロックの魔石を持ったまま奴を殴った。


「ウダァッ!」


 ごす。


 ぴき。


 凍りついた身体を殴った衝撃で魔石にひびが入る。


 そのことに気づいたのかバロックが怯んだ。


 俺は告げる。


「俺はもうジェイクリーナスじゃない。俺の名はジェイ・ハミルトン、人間だっ!」


 そして、バロックを奴自身の魔石で殴った。


「ウダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ……ウダアッ!!」

 

 

 


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