アニメの熱い回が作品名をもじったタイトルだと燃えるよね
ただ、それでも、彼女を愛してしまった理由は童貞の一目惚れのような、いや、まさしくその通りのものでしかなかった。クラブと彼女の間に既にある関係を覆すほどの理由ではない。自分と彼女の間に運命と呼べるものはない。
大概クラブが彼女に惚れた理由も似たようなものな気がするが、不思議なことに、あの二人には得体の知れない運命の力のようなものを感じる。自分の母が傾倒していた、大変胡乱なアレソレの用語でいうところの——
(——ツインレイのような)
ダレンは自然にその言葉が出てきてしまった自分に吐き気がした。胡乱なそれをまさか信じている訳ではない。ただ、空想上のそれに似ているというだけの、それだけの話だ。
いずれにせよ、自分は彼らとの恋愛戦争においてそれほどの不利にあるのだから、想いを成就させる為には何か特別な策を講じなければならない。
(うん、決して負けるつもりはない)
自分はクラブとは違い、気丈で執念深いのだ。ダレンは冷静に機を伺い、的確に獲物を仕留める蛇のような賢さがあると自負していた。
「できた。セクシー悩殺ドリンク」
その蛇を握り潰して煮詰め、虹色の謎ドリンクに仕立て上げたレイが言った。その表情には先程までの憂いはなく、ひとまず考えることを止めたように見えた。今はそれでいいだろう。
「早速クラブに飲ませに行こう」
片付けもそこそこに駆け出すレイを、ダレンは慌てて追いかけた。しかし、道はこっちで合っていただろうか。ダレンは疑問に思ったが、何かと野生的な彼女の本能に従うことにした。
そしてダレンは、驚くべき光景を目にした。
「……」
砂浜、見つめ合う二人。クラブと、ナナフシ。
——童貞を殺すセーターを着た、巨大ナナフシの捕食的接近。
ダレンとレイは森を一直線に抜け、島の周縁部の砂浜に躍り出た。そこで目にしたのは、童貞を殺すセーターを着た、檻を脱走した巨大ナナフシが、クラブににじり寄っている光景だった。
巨大ナナフシの檻には、幾重もの魔法がかけられていた。その中には縮小魔法もあった。本来生物に使用できない筈のそれを、高名な魔術師達が寄り集まって研究し、複数の厳しい条件を満たした上で使用できるように改造し、専用の檻に施したのだ。しかし巨大ナナフシはそんな檻を脱走し、今や森の木々の高さをも超えた本来の姿——超巨大ナナフシとしての姿でちっぽけな島に君臨していた。
「大変、クラブが追い詰められてる。助けなきゃ!」
「傷つけちゃダメだよ。慎重に捕獲しないと」
「ナナフシを傷つけないように?」
どうやって? レイは困惑した。巨大とはいえナナフシはナナフシ。線が細すぎてほぼ線なナナフシをどうすれば傷つけないように捕獲できるのか。考えろ……
「ナ゛ ナ゛ フ シ イィィーーーーッッ!!」
——超巨大ナナフシが咆哮を上げ、目から極太熱線を放った。あ、ダメだあれ早急に始末しないと。
レイは駆け出し、クラブの前に躍り出ると彼を掴んで勢いよく草むらへと放り投げた。驚く彼を尻目に、レイは強い決意を持って超巨大ナナフシと相対した。
「大丈夫。私が助けるから」
——刹那、白色の熱線が砂浜を焼いた。レイはそれを跳躍して避けた。そしてそのまま木を蹴って翻ってドロップキック、しかしナナフシダンスで避けられた! バネのように左右に跳ねる奇怪な動きをすり抜け、砂浜に着地したレイは再び飛び上がると天を砕くようなアッパーを放った。しかしナナフシは雄大な大海原のシャチのように飛び上がると、白砂をマリンスノーのように巻き上げ、狡猾な着地をした。
そこに狙いを澄ましたのはダレンだった。彼は気配もなくナナフシの側に迫ると、聖テオドア騎士団長の証、美麗なる星々の金細工を施した剣を抜き、大きく振りかぶった。切先が真っ白い星型の光を放ち、太陽と謳われるテオドアの威厳さえも宿した。まさに天道の鉄槌。それがナナフシの地平線にも似た扁平な胴体に振り下ろされ——ようとした、そのとき。
「ダメーーーーーーーッッ!!」
耳を疑う叫びが響いた。ダレンとレイは驚愕の表情をして振り返った。それと同時に、童貞を殺すセーターを着たナナフシも動きを止めた。




