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冒険者クラブのヘタレ的純愛  作者: ボルスキ
第三章 異界編
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プリティーシマエナガがこんなに暑苦しい訳がない


「団長殿ッ!! 任務の進捗はいかがですか! このウルフェンは今日も鍛錬に励み騎士の一人を見事にのしてみせましたよ!! 全く団長殿の配下の名折れが……あなたの次に勇猛な俺が騎士になる日も近いですね! どうですか団長殿、このウルフェンを飛び級で騎士に!!」

「また勝手に騎士と戦ったことは後でお説教ね。それよりもどうしてここにシマコを?」


 シマコ。このシマエナガはシマコというのか。つまりウルフェンではないということだ。どういう原理でこの天使から暑苦しい声がしているんだ?


「それはもちろん、このウルフェンが団長殿のお役に立ちたかったからに他なりません! 我が配下たるシマコは索敵、諜報、連絡の全てにおいて優秀です。何かお望みはありますか? なんなりとお申し付けください、さあ!!」


 どう考えてもシマエナガに担わせる役目じゃないだろ。シマエナガは雪国の鳥だし渡り鳥でもなんでもないし、ノースゴッズからクソアチ異界ことドリームヒルズまではるばる飛ばすなんて所業は絶対に間違ってる。


「動物虐待か?」

「なんだと貴様!?」


 俺の正論にウルフェンが憤る。俺は冷めた眼差しでシマコを見た。彼女(彼?)はどう捉えたのか可憐にさえずって首を傾げると、俺の腕に飛んできて着地した。おーよしよし、ごめんな。お前を冷めた目で見た訳じゃないぞ。

 シマコの首にかかったペンダントが揺れる。細いチェーンに金具付きの琥珀を通したものだ。首輪代わりか何かだろうか?


「そのペンダントは魔道具なんだ。凶悪な山の魔物を従順なシマエナガの姿にする為のね」

「うおぉいっっ!?」


 思わず俺が振り払うとシマコは笑うように囀って飛び回った。俺の脳内にレイから聞いた四皇の姿が浮かぶ。


「……じ、じゃあ、遠慮せず索敵を任せていいのか。索敵というか、仲間を探してほしいんだけど。俺達が旅立ったときにもう一人仲間が居ただろ。その子を探してほしいんだ」

「団長殿のご命令であれば、だ」

「うん、俺からもお願い」

「かしこまりました!!!!」


 シマコもといウルフェンは喜色に溢れた声を上げると、不意に低く囀った。いや、これはシマコの囀りではない。よく見るとシマコの口が動いていない。しかしその口は低い囀りが鳴り終わると共に開かれ、今度は高く囀った。まるで会話をするように、シマエナガにしては野太い声と、正真正銘シマエナガらしい声が交互にシマコから響き合う。口を閉じて、口を開いて。


「これは……?」

「低い方はウルフェンの声だよ。ペンダントを通じてシマコに声を届けているんだ」


 なるほど、シマコからウルフェンの声がしていたカラクリはそれか。さながら音声転送の魔法といったところか。しかし、ウルフェンが鳥の言葉を話しているのはどういう理屈だろう? それもまた魔法なのか?

 俺はふと、ジョージのことを思い出した。魔物を恐れる筈の馬を飼い慣らし、街の外で乗りこなしていた男。彼もまた、ウルフェンと同じだったのではないか? 魔法、もしくは見事な声帯操作と未知の言語への深い理解で、馬と会話をしていたのではないか?

 もちろん、ただ会話をするだけで、魔物にしろ動物にしろ人ならざる存在を従わせられる訳がないから、彼らは会話によって友人関係や上下関係を築いていたのだろう。ジョージは前者、ウルフェンは後者と見た。


「では、捜索に行って参ります!!」


 ウルフェンが声高に宣言し、シマコが飛び去っていく。嵐のようなものが去り、俺の脳内に赤髪の暴走騎士見習いの姿が浮かんだ。

 その次に思い浮かぶのは、同じく赤髪の勇敢な貴族の姿だ。ダレンは二人のことをどう思っているのだろう。どのような気持ちでジョージを殺し、どのような気持ちでウルフェンと出会ったのだろう。どちらが先かはわからないが、なんとなく色々なことを想像してしまう。

 その辺の事情については、ダレンが語ってくれる日を待つとしよう。語るかもしれないし、語らないかもしれない。なんとなく、あの騎士団本部での夜にダレンが発した一言だけでは、ダレンがジョージを殺し、ジョージがこの世から去ってしまったのだという実感も湧かないのだ。だから悲愴も感じられないし、ダレンも深く語らないということは、今は触れてほしくないということなのだろう。

 俺は驚いたり集中するとしゃっくりが止まるような感じで、冷静さを取り戻していた。俺はダレンと目配せをして、言葉もなく歩き出した。


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