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冒険者クラブのヘタレ的純愛  作者: ボルスキ
第一章 旅立ち編
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青い血の華と星座の瞬き


「──ぎゃんっっっっ!!!!」


 俺は強い力に突き飛ばされた。

 視界が百八十度後方に回転して、強かに頭を打ち付けた。ぐらぐらする頭を即座に起こして前を見ると、生温い雨が俺の鼻に降りかかった。

 暗転していた視界が徐々にクリアになっていく。青かった。俺の目の前に、青い血のようなものが降り注いでいた。


 虚ろな黒い瞳が俺を捉えた。


「れ、レイ……」

「あら、虫けらが居るとは思ってたけど、まさか飛び出してくるなんて。あなた、レイの飼い主ね?」


 花のあしらわれた黒いパンプスが俺に近づく。少女は失望以前に初めから希望などなかった、と言わんばかりの目で俯瞰するだけで、俺なんかには何もしない。俺を突き飛ばしたのはレイだった。


「随分と長く様子を窺っていたじゃない。あなた……ハナからレイを守る気なんてなかったでしょ。彼女一人でなんとかなりそうだったから、傍観していたのね? 本当に……救いようのないクズを信じていたのね。レイ」


 少女は血飛沫の描いた華の中心に倒れたレイを、割れてしまった花瓶を眺めるような目で寂しげに見下ろした。


「……気が変わったわ。レイ、真実を知りなさい。私達の元に辿り着いて」


 もう動かないかと思われたレイの唇が微かに震える。


「どういう……」

「あの日の悲劇は、まだ終わっていないわ」


 少女はくるりと踵を返した。


「行きましょう、みんな」

「ま、待て……!」

「じいや、剣を持っていて頂戴。腕が疲れたの」

「かしこまりました」


 少女は俺の制止を無視して、その重々しい剣を老爺に預けた。そして二度と俺やレイを振り返ることなく、アンドロイドの集団を引き連れ……去っていった。


(──そうだ、レイ!)


 集団を見送っている場合ではなかった。慌ててレイの元へと這いよる。彼女の唇は青ざめていない。青い血のアンドロイドだからだろう。彼女はいつもと変わらない唇の色をして、ぐったりと死に瀕していた。


 いや……「死」なのだろうか。


「レイ、レイ!」

「クラブ……」


 レイがうっすらと目を開ける。先ほども見た虚ろな目に背筋が冷える。


「……ベラは?」

「えっ?」

「さっきまで一緒に居たの……」


 ベラ、ベラ……ああ、あの犬のことか。そういえばさっき、走って逃げてくる大群の中に犬が居た気がする。


「あいつなら逃げたよ。君を置いて逃げた!」

「……そう……それなら、よかった」


 そんなことはどうでもいい。


「レイ……レイ……死なないで」


 この世に回復魔法なんてものはない。俺は辺りを見回して、丁度良い布がないことに絶望した。せめて上着を脱ごうとする俺を、レイは手のひらで制止した。


「大丈夫。私は死なない」


 俺の潤んだ視界の中で、星座のような何かが瞬いた。

 月光が俺達を照らしている。汚れた袖で涙をぬぐってよく見てみると、彼女の深く裂けた胸の中で、星の砂のような何かがちらちらと散らばって蠢いていた。


「私はアンドロイドだから」


 そう言って彼女は、ゆっくりと目を閉じた。


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