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冒険者クラブのヘタレ的純愛  作者: ボルスキ
第二章 森竜編
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【改稿】見栄の張り合いといこうぜ


 まじでいい男すぎて腹立つな。俺は内心で舌打ちしながら空を舞う。


「森竜! まじで大戦犯じゃねーかこのポンコツ親父ッ!! 聞こえてないなら罵り百回の刑に処すけど大丈夫そう!?」

(……クラブ……)

「!?」


 そのとき、俺の脳内に声が響いた。それはまさしく森竜の声だったが、目の前の彼は目も口も変わらず閉じ続けている。なんだこれは。崇高な竜の神秘パワーか。


(今すぐライアンを連れてここを離れろ……手出しは不要じゃ)

「あいつが俺達に唆されたぐらいで逃げると思うか? そして俺のレイはあいつにご執心だし? 俺は巻き込まれてサイアクって感じ」

(……『俺の』、か。やはりお主は愚かな男よ。心から想う相手を所有しようとはな。はてさて? 今、わしとお主の立場が逆であれば、お主はあの小娘を道連れにしようとしたのではないか?)

「は!?」


 俺は虚を突かれた気分だった。こいつはこの期に及んで皮肉を言っているのか? 本気で今すぐレイだけを引っ掴んで逃げ出してやろうかと思った。だが、そういう訳にもいかないのだ。なぜならこれは俺の見栄の為の戦いだからだ。

 俺は出し抜けに杖を振ると、岩の針を射出した。それは森竜の傍でうすらぼんやりと浮かんでいた海将マーリンの背鰭へと突っ込んでいき、貫いた。砕けた背鰭がキラキラと散る。次の瞬間、俺は無補正の重力を受けて急速に落下した。

 この世界において、魔力は無尽蔵に大気中に満ちている。なので魔法は使うだけならほぼノーコストでいくらでもできるが、それは撃ちっぱなしの話に限る。

 魔法の維持。それは魔法使いのたゆまぬ働きかけなしには成立しない。先程まで俺は自身にかけた浮遊魔法と、レイにかけた防護魔法の二つを同時に維持していた。にもかかわらず、その上で三つ目の魔法の発動——岩の針の発射だなんて、三流魔法使いであるこの俺にできる訳がなかった。現在の俺は浮遊魔法の維持を損ない、落下しているが、それはごく自然な帰結である。

 そもそもただでさえ高度な浮遊魔法を使っているのに、防護魔法まで並行して使えていた時点で奇跡のようなものだった。それでも今までそれを成し遂げていられたのには、ただの奇跡ではない理由があった。


『——あなたが信じて送り出せるぐらい、私に強い防護魔法をかけて。何よりも強い魔法を』


 レイの言葉が脳裏に浮かぶ。俺の体を強烈な衝撃が掠めていく。下を見ると、アンドロイド達がその手に礫を握り込んでいた。


(傷、俺の方が治りにくいんだけどなぁ!!)


 俺はふわりと翻り、森竜の方へと向き直った。大丈夫。防護魔法が解けた気配はない。虹色の嵐、それによる魔法の出力アップ、マルチタスク。その全てが要因となり、向ける杖の先がぶれ続ける。


「見栄の張り合いといこうぜ。ダメな保護者同士のな」



 レイとライアンは空を飛び回り、地上から弾丸のように飛んでくる礫を打ち落とし続けていた。作戦の要、クラブを守る為である。

 が、圧倒的な物量に打ち漏らしも少なくない。時々自分達も礫に当たる。しかしレイの身体に痛みはない。レイが自身の身体を見下ろすと、その表面を覆う膜がほの明るく光っていた。

 この状況下で防護魔法は凄まじい強化を受けていた。本来の防護魔法はあらゆる被害の四割を軽減する程度の力しかないが、今この状況では無敵にも近い防護力を誇っている。

 しかし、それも長くは持たない。レイを覆う膜の一部には細かいヒビが入っており、何より生身のライアンの肌には痛ましい痣が増え続けていた。


「彼が触媒を破壊するのとどちらが早いか……やはりアンドロイド達を殲滅しなくては」

「でも戦っても勝てないよ」

「……」


 ライアンは森竜の方を見た。せめて森竜だけでも助からないか……と考えかけて首を振る。

 殲滅魔法は森竜をも滅するだろう。発動すれば、自分達も森竜も、そして村も消え去る。生まれ故郷も森竜も、ライアンにとっては同じぐらい大切なものだった。



『——しんりゅう様! 今日のくもつをお持ちしました!』


 幼い頃、ライアンは森竜にべったりだった。


『いらぬ。お主はまだ守り人ではないのじゃ。まだ幼いのだから、もっと村の子供達と遊ぶが良い』

『いいえ! けいしょうの儀式は儀式に過ぎぬ、今のうちから守り人のじかくを持てというのが父上の教えです。それに……

 今日もかけっこしたいんです!』


 ……自覚という言葉は口ばかりで、恐れ多くも当時の自分は、森竜を遊び相手に据えていた。


 夕焼けの草原を駆け抜ける。森竜の姿ははるか遠く、悠然と空を羽ばたいていた。

 じわじわと開いていく、決して縮まらない彼との差。手加減してくれていてこれなのだと、本当はもっと大きな能力の差があるのだとわかっていた。それでも自分は、我武者羅に彼を追いかけることが楽しかった。


『しんりゅう様とのかけっこは、絶対に勝てないから楽しいです!』


 なんて言葉も口にして。父から守り人の役目を継承するその直前まで、森竜と遊ぶ日々は続いた。



「——ッッ!!」


 不意に礫がライアンの翼を捉え、その飛膜を撃ち抜いた。ライアンはよろめきつつも再び迫った礫に向かって鋭く羽ばたく。羽風で勢いを失ったそれを掴むと、レイに向かって放り投げた。

 レイはそれを掴むと、完璧なオーバースローで地上に向かって投げつけた。豪速球は白い風を起こしながら地上の少女の手の中へと向かう。しかし……

 はるか下界からぎらりとした眼光が二人を捉えた。そして次の瞬間。レイの元に一人の老爺が突っ込んできた。レイが飛び去ると老爺は彼女の残した魔法陣に着地。


「社交ダンスのご経験は?」


 餓狼のように再びレイへと突っ込んでいった。


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