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冒険者クラブのヘタレ的純愛  作者: ボルスキ
第二章 森竜編
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【追加!】唸れ!大迷惑自由研究


 ライアンは村人達に作戦を伝えると、再び上空へと向かった。そしてレイと森竜と合流した。森竜に怪我はなく、ライアンは胸を撫で下ろした。


「そういえば森竜様、素晴らしい策があるとのことでしたが……」

「むう……その策は今は実行できぬ。村人共が残っておるからの」

「……?」


 村人達が残っていると何か不都合があるのか。しかしそんな疑問は後回しだ。ライアンはレイと森竜にも作戦を伝え、了承を得た。しかし、それぞれが役目を果たすべく動き出した瞬間。


「レイ、少しいいか?」


 ライアンはレイを呼び止めた。そして耳打ちをした。レイはやや目を見開いたが、すぐに真剣な表情で頷いた。

 そうしてライアン達は散り散りになった。森竜は村へ、ライアンは低空へと向かう中で、レイだけがワームと相対した。


(そういえば、クラブは無事かな)


 自分達が出かけている間、ねぐらに居た筈の彼。今頃暗い部屋の中で寂しがっているか、村の様子に気づいて大慌てしているか。あるいはぐっすり寝ているかもしれない。

 無事なら無事で良いのだが、なんだろう、このモヤモヤした気持ちは。レイは心の中で首を傾げた。

 数本の触手の追尾から逃げ、砲丸のように飛んでくる牙を避ける。そして突然に振り返ると、レイは目にも止まらぬ蹴りの連発で触手達を叩き落とし、その一本を太腿で掴んだ。


(やっぱり)。


 ——ライアンの見立て通りだ。触手という名の肉の根を生やした細胞の塊。その表面は奇妙に偏光してざらついている。レイはその塊を握り込み、手の中で明かりを灯す魔法を使った。ワームは短い悲鳴をあげた。レイは塊を握り潰した。


(『複眼』——つまり、身体の表面の全てが目。ワームの目は無い訳じゃなかった。むしろ沢山あったんだ)


 そう確信すると、昆虫の目に似た質感の体表が途端に気色悪く見えてきた。だが、その体表は弱点でもあった。

 はるか後方の地上で歓声が上がった。レイは追撃の触手をいなしながら、一瞬だけ背後を振り返った。村の上空には、ライアンの魔法陣に近い大きさの水のレンズが浮かんでいた。そのレンズは丸みがなく、透明に煌めく水面には同心円の凹凸が刻まれていた。


(フレネルレンズって、なんなんだろう)


 それはライアンが口にしていた言葉だ。曰く、彼のエレメンタリースクールの頃の自由研究。曰く、村の遊び場に置かれていて夕方になると死ぬ程眩しくなるオブジェ。曰く、村長に苦情が数件入っている。

 そんなはた迷惑な存在を村人達はみんな知っていた。だから数十人の村人達は、魔法で生み出した無数の小さな水の塊を認識の齟齬なく接着させ、やや複雑な形を完成させることができた。

 そんなレンズの前にライアンは浮遊していた。フレネルレンズとは、ライアンが森竜の語った知識を元に再現した千年以上前のレンズ。かつて灯台や投光器に使われたそれは、光を絞って遠くへ送ることができた。


「準備ができたぞ!」

「わかった!」


 ライアンの声にレイは大きな声で答えた。すると、間髪入れずに——


「光よ届け!!」


 ——そんな声がして、白の光が辺りを埋め尽くした。ライアンの発射した高照度の光がフレネルレンズを抜け、前もってワームの背後に生成していたパラソル状の白砂の壁に衝突、反射し、ワームの周囲三百六十度を光で満たしたのだ。

 ワームは悲鳴も上げずに硬直した。やはりだ。先程、ワームは単色の超越(ホワイト・リフレイン)の魔法陣の光を見て呆けていた。ワームは光を見ると混乱し、隙ができる!

 レイはこの好機を逃さぬよう必死に空を駆けた。光が放たれた瞬間、ライアンは「共鳴」を意図的に起こして違う景色を見ることで失明を回避した。その一方で、レイはアンドロイドであるが故に光に耐性があった。「昼目」の利くレイは満ちている光をものともせず駆け、遂にワームの背後に回り込んだ。そして——


()()()()()()()()!!」

「そうか、それも想定済みだ!!」


 ——光が僅かに弱まった。そして徐々にその光量が落ち始めるより早く、赤い翼が目にも止まらぬ速さで空を飛んだ。その姿はさながら竜、いや、まさしく竜だった。威風堂々たる竜のライアンは蛇のような緑の瞳を輝かせると、周囲の光が薄まって消える寸前——アンセスターワームの口腔に飛び込んだ。


「な、なんだ!? ライアンはどこに行った!?」


 光が消えてから数秒。俯いて閉じていた目を開き、空を見上げた村人達は混乱した。そしてレイの元まで森竜が飛んでくると、彼は空気が激しく揺れる程の声で叫んだ。


「小娘! これはどういうことだ!!」


 森竜は木一本程の丈もある大剣を咥えていた。レイはそれを受け取ると、まるで重さがないように軽やかに振ってみせた。


「アンセスターワームのコアは体内にある」


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