表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冒険者クラブのヘタレ的純愛  作者: ボルスキ
第二章 森竜編
13/139

【改稿】と、ライアン


「四皇?」


 レイが問いかける。その声を聞いて、森竜は初めてレイの方を見た。ずっと近くにいたのに、まるで今その存在に気がついたかのようだ。


「うぅむ、そうじゃ。この通りわしは素晴らしくたくましい翼を持っており、空を飛べばこの星の裏側まであっという間に辿り着ける。魔物も人間も羽ばたき一つで吹き飛ばせる。が、森の外には出られないのじゃ」

「森の外に出られないのにどうして星の裏側まで辿り着けるの?」

「それはあれじゃ。森と森の間をワープしておる」

「……ワープ?」


 きょうび聞かない森竜の言葉に、今度は守り人と呼ばれた青年が首を傾げている。千年前のSF用語だ。この竜SFとか読むのか。


「ワープとは瞬間移動のことじゃ」

「へー、ソウナンダ」


 あくまで知らないふりを貫き通した。ともかく、察するに森竜は森の外に居る奴らを倒してきてほしいようだ。四皇とは一体何者なのか? 俺が問いかけようとした瞬間……


「クラブ」


 突然会話を遮られた。俺の両肩がレイに掴まれ、再び押し倒される。俺は呆然とした。……どうして俺は今寝かされたんだ?


「そんなに熱心に話さなくても良いよ。病人なんだからゆっくり休んでて。私が森竜と話すから」

「えー……」


 そんなに気を遣わなくてもいいんだけどな。だって()()()()()()()()()()()()()()

 しかしそんなことを言えば墓穴を掘ることになるだろう。俺は大人しく空を眺めることにした。

 ヤシ系の木が乱立し、濃い緑の葉っぱが元気にそよぎ、謎の鳥や虫の声が原始的に響く森。その中でも俺達の居るここは拓けた場所で、空がよく見える。日の感じからしてそろそろ午後四時ぐらいだろうか……と思いながら、俺は「長話聞き流しモード」に移行しようとした。だが。


「それで森竜、具体的に何を倒してほしいの?」

「ん〜? それは……いや、そう急がなくともよいじゃろう。まだわしらは出会ったばかりじゃ。お互いに腹を割る為、宴の席で語らおう」

「……わかった」

「それならばひとまず、彼を客室へ」


 あっという間に会話は終わり、俺は青年に抱えられた。そしてそのまま、この場所の外れにある建物まで連れて行かれた。

 あれ、俺の空眺めタイムもう終わり?



「俺とレイはぁー!! 超絶薄味の料理しか食べないからな!! 塩辛い料理作ったらぶつからっっ!!」

「元気だな、なんだあの病人は? 彼はいつもああなのか?」

「たまにああなる。だけどここまでずっとうるさいのは珍しい」


 俺は青年の自宅らしい建物の二階から全力で叫んだ。地上ではレイと青年が、俺が三十人ぐらい入れそうな大釜でスープを煮込んでいる。どうやらあれが今日の夕食らしい。その九割は森竜用なのだろう。しかし、問題はそこじゃない——二人の距離が近すぎることだ!


「ライアン、ちょっと味見してもいい?」

「どうぞ。言っておくが、これが普通の塩分量だぞ」


 レイが青年の差し出したおたまに口をつける。ああ、本当に近すぎる!!

 心底どうでもいいが、あの青年の名前はライアンというらしい。ライアン・フォレスト。「苗字で呼べぇーーっっ!!」と叫んだのだが、レイの耳には届かなかったようだ。本当に?


「……しょっぱい」

「よく今まで夏を乗り切ってこれたな」


 ふん、彼女はアンドロイドだから(多分)体内の塩分量とか関係ないんだよ。ぽっと出のお前にはわからないだろうけど……と、俺は内心で優越感に浸った。

 そうこうしている間に、スープができたようだ。「食べるぞー」と母親が居ない日の父親よろしくライアンに呼ばれたので、俺は反抗期の子供のように階段を駆け降りた。


「じゃあ、いただこうか。森の恵みに感謝を」

「……感謝を?」


 といった風の挨拶を終え、一斉に食事が始まっても俺は不機嫌オーラ全開だ。というのも……


「塩辛くてもしっかり食べるんだぞ。クラブはいち早く回復する為に、レイは明日からの旅に備える為に」

「うん。……明日から私が食べるのはこの味」

「くっ……」


 そう、なんとレイは調理をしながら森竜と会話をし、本格的に彼の提案を受け入れてしまっていた。森竜は「四皇」について未だその詳細を語っていないが、レイはそんなことはどうでもいいと言わんばかりに承知した。彼女は明日から得体の知れないモノ達を倒す旅に出るらしい。なんと無謀な。

 だが、百歩譲ってそれは良いとする。良くはないが良いものとしてやる。

 なぜならそれ以上に許せないことがあるからだ! 俺は毒ガスの症状で療養必須。レイの旅にはついていけない。そこで代わりにライアンが同行する、という話になったらしいのだ! それこそが何よりも許せない。いつの間に、誰の許可を得て、と言いたくなるのだが、俺は全部二階から聞いていたし抗議は無視された。

 出会って早々だが、俺はライアンが嫌いになった。そしてそれ故に、尚更スープがまずく感じる。俺が顔を顰めていると、背後からぬうっと緑の顔が割り込んできて、「いらぬならわしにくれぬかのぉ」と言った。俺は渋々スープをかきこんだ。


 食事が始まってしばらくの間は、あえてみんな当たり障りのない話をした。改めてここが森竜のねぐらと呼ばれる森であること。俺達のこれまでの旅のこと。あとは、ローレアで暮らしていた頃の話。スープの具材の話。ライアンはこの料理を「森の恵み」と言ったが、流石にこの量なので食材の全てが森で採れたものではないこと。その食事の挨拶が近くの村のならわしであること。ライアンがその村の出身であること。

 あとは、ライアンが森竜に代々仕える家系の末裔であることも聞いた。「フォレスト」という姓は森竜に与えられたものらしく、その歴史がそこそこ長いことも知った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ