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冒険者クラブのヘタレ的純愛  作者: ボルスキ
第三章 サンズウェイ編
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誰もツッコんではならぬ


 扉が開かれたその瞬間、俺達は凄まじい虹色の衝撃を浴びて目が眩んだ。


「ハァ〜イ! ウェルカム・トゥ・マイケ〜ル!! オゥ! これはまた中々クールなトリオのお客様デェ〜スね!」


 魔道具による非現代的な照明が漆喰の壁を明るく照らす店内に、豊かなレインボーアフロを頭部にこしらえた男が居た。

 レイが素早く前に出て扉を閉めた。


「……」


 一拍置いて、レイはちらりと俺とダレンの顔を見た。彼女は戸惑った表情をしていた。

 ダレンがそっと促した。レイは深呼吸をして、再び慎重に扉を開いた。


「いきなり拒絶は悲しいデェ〜スね〜! 改めてようこそ! ミスター・マイケルのミレニアム・ブティックへ〜!」


 真っ黒なサングラスらしきものをかけたマイケルの顔が俺達の眼前にずいっと迫る。日に焼けた頬に深いえくぼができて、にかっと笑った口の中に白い歯が輝いた。


「その眼鏡、前見えてるんですか?」

「インクでベタ塗りしたレンズなので全く見えていませェ〜ん! 今外しますねェ〜!!」


 マイケルは大袈裟な動きでサングラスを外した。爛々と輝く二重の目が露わになり、俺は思わず目を逸らした。目を逸らしてもバレにくいのは糸目の特権だな。


「えっと、ミレニアム・ファッションに興味があって来ました。店内を見て回ってもいいですか?」

「もちろんデェ〜ス! さぁさ、中へ!」


 マイケルは喜色たっぷりの声を上げると俺達の視界の外に飛び退き、両腕を店内に向けて伸ばして歓迎のポーズをした。

 強烈なインパクトを持つマイケルが退いたことで、ようやくはっきりと認識することができた店内の様子に俺は驚いた。俺はてっきり、店内にはマイケルのアフロのような、千年前の普通からはかけ離れたサイケな服ばかりが陳列されているだろうと思っていた。

 しかし一体どういう訳か、なかなかどうして、店内には千年前のファッションの再現としておおよその的を得たものばかりが陳列されていた。デニム(のような)素材のズボンからポリエステル(っぽい)素材のジャケット、ナイロン(に似ている)素材のシャツまで。それに驚いた俺が、改めてマイケルの全身を見ると、意外にも首から下は白シャツにジーンズ(風のズボン)というシンプルな装いだった。首から上のインパクトが強すぎて気が付かなかった。


「凄いですね。滅茶苦茶千年前の服にそっくり——なんじゃないかと思います、多分」

「オゥ、そうデスか〜!? こう見えてマイケル、()()頑張ったんデスよ〜!! ベリー、ウレシイデェ〜ス!」


 危ない、墓穴を掘るところだった。隣でマイケルが何やら嬉しそうにしているが、俺はそれどころではない。必死に跳ねる心臓を押さえて宥めた。

 心臓が落ち着くのを待ち、ふぅ、と軽く息をつくと、俺は改めて店内を見た。いつの間にかレイとダレンは各々陳列棚を見て回っていて、俺はどちらの側に行こうか少しだけ迷った。本当に少しだけ迷った上で、やはりレイの側へ行くことにした。あわよくばレイの服を選びたい。


「レイ、どんな服が気になる?」

「私は……ええと、この辺かな……」


 レイはそう言ってハンガーラックに手を差し入れた。薄手のセーターばかりが並べられているそこから、レイは一着の服を取り出した。


「こういう——」


 ——そう言いかけてから〇・一秒、レイは目にも止まらぬ速さでセーターをラックにかけ直した。

 なんだろう、一瞬、ほんの一瞬だけ、胸元がガラ空きのセーターが見えた気がする。もしかして……


「なんでもない。なんでもないよ。次はあっちの方見に行こうか」


 レイは俺の背後に回ると、ぐいぐいと背を押して歩き始めた。……そういえば、あの孤島にあった前時代的すぎるアレって、どこから来たものだったんだろう。あまり考えない方がいいのかな。


「すみません、試着してもいいですかー?」


 遠くでダレンが声を上げた。「オフコース!」とマイケルが答え、陳列棚のはるか向こうでいそいそと移動する足音がした。

 ……俺はふと疑問に思った。俺は千年前の文化を知っていて、喪男なりに当時一般的だった服の着こなし方を覚えているが、全く当時のことを知らない現代人はどのようにこれらの服を着こなすのだろうか。もしかしたらとんでもなくダサい着こなしをするかもしれない。

 ——気になる。恋敵のトンチキファッションを見て、盛大に笑ってやりたい。俺はレイの服を選ぶフリをしながら、ちらちらと試着室の方を見続けた(レイが冷めた目で俺を見ていることにも気付かず)。そして、遂に……


「着れました! どうでしょうか?」


 試着室のカーテンが開いた。


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