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デモンズ研究 2

 ミコノを連れてマンションの自宅まで戻る。

 するとピンク髪のグラマラスな白人女性が中から玄関に出てくる。


「おかえりライズ、あれその子は?」


「同級生だ。今、親と喧嘩していて帰りたくないがシャワーは浴びたいという状況になったからうちに連れてきた」


 するとその女性、リラ・フォールダウンは察したように笑みを浮かべる。


「はは~、そういうこと。やるじゃない。おねーさん嬉しいぞ」


「おい、頭をなでるなリラ。もう子供じゃない」


「私やグレイブからすればまだ子供だって。うん、分かった。私出ているね。帰ったら報告しなさいよ」


「そういう関係じゃない」


「うんうん、これからそういう関係になるんだよね」


「もういい、とにかく出て言ってくれ」


「はいはーい。ごゆっくり~」


 リラが出ていくとミコノが説明を求める。


「えっと、お姉さん?」


「まあ血は繋がってないけどそういう存在で間違いない」


「サイズが合うかは分からないがリラの下着と服を置いておく。シャワーから上がったらそれを着てくれ」


「うん、どうも」


 15分後、ライズがベランダで風にあたりながら考え事をしていると、シャワーから上がってリラの服を着たミコノがやってくる。


「ん~、さっぱりした~」


「それは何よりだ」


「……なんで喧嘩になったか聞きたい?」


「興味はあるが話したくないならそれでいい」


「大人な対応するわね」


「まあ、大人との付き合いがそれなりにあるからな。必要な距離感は分かっている」


「そっか、でも私子供だからそんなの分かりたくなーい。だから話すね」


「ふっ、どうぞ」


 ミコノはデモンズ鹵獲作戦についてザックリ話した。


「……なるほどな、確かに君のお父さんは危険なところに足を踏み入れようとしているように思える」


「でしょ、それはお父様も自覚している。けどそれでも我が社の軍事産業、信仰機の今後の販売を考えたらデモンズの存在を無視できないのも分かる」


「どの信仰機製造会社もそうだろう。ネットでインディアでの戦闘映像を見たけどデモンズのスペックは明らかに既存の先を行っている。そういう認識を持ってしまったら公式で販売されている最新の信仰機を見ても欲しいと思えなくなる」


「商売あがったりよ、テロリストならむしろ既存機体の宣伝をして利益貢献しなさいっての。いい迷惑だわ」


「はは、まったくだ。ああ、迷惑だっていうのは彼らも承知の上なんだろう。それでも……」


「それでも?」


「いや、なんでもない。それでこれからどうする? リラの言葉は真に受けなくてもいいけど1泊はしてもかまわないつもりだ」


「ありがと、でもいいわ。帰ることにする」


「いいのか?」


「うん、そこは私の方が折れるっていうかお父様はきっと考え変えないだろうし。危険に足を踏み入れるのは避けられない。なら私が守るしかないかなってシャワー浴びている時に考えがまとまった」


「分かった。一応家まで送るよ」


「並みの男より強いからいらないけどまあいいわ、送らせてあげる」


     ◆


 カンナギグループ本社ビルまでミコノを送り続けると、そこのロビーで偶然ソウイチのほうから降りてきたためミコノは駆け寄る。


「お父様」


「ミコノ、気は晴れたかい?」


「ええ、納得はいかないけどお父様どうせ止まらないし私が守ってあげる。今回はそれで許してあげるわ」


「そうか、ありがとう。……と、そこの彼は?」


「前に話していた留学生のライズよ」


「そうか君が、娘を送り届けてくれてありがとう」


「いえ、では俺はこれで」


「待ってくれ、少しいいかな? パイロットを目指す学生の忌憚なき意見が聞きたい」


「というと?」


「デモンズ、君はあれに乗りたいかい?」


「唐突ですね」


「高性能な機体は好きだろう?」


「否定はしません。けれど信仰機は元々、国や勢力における信仰や象徴を軍事科学的に具現化させたものだ。そのコンセプトを否定する悪魔のデザインに乗るというのはいい気分ではない。少なくとも正規軍隊がそのまま使うべきではないと思います」


「なるほど、振るうべき力の見せ方か。確かにそれは大事にせねばならない。でなくば正当性もあったものではないからな。悪魔は破戒を司るイメージだからね。ならばデモンズは破戒兵器といったところか」


「……」


 破戒兵器、それはドーンデモンズにおけるデモンズの正式な種別名称である。

 それを偶然とはいえ言い当てられたためかライズは一瞬ソウイチを睨んでしまう。


「おっと睨まれてしまった。何か気に障ったかな?」


「あ、いえ、的を射た名称だなと思って」


「君の言葉からヒントを貰ったからね。しっくり来るネームだと思ってもらえたなら何よりだ。ダサいネームを付けて笑われるのは辛いからね」


 自分の言葉からヒントを貰った。

 正しい認識をしているからこそ、ただの留学生を装ってそういう前提で話していてもその回答は本来の普通とは逸れてしまう。

 デモンズのことを良く知らないならデモンズの由来に関する感情など口にすべきではなかったのだ。

 この時ライズは正しい認識を持った上で、間違った認識の話し方をすることの難しさを思い知らされた。


     ◆


 ライズは自宅に戻り、リラを呼び戻しデモンズ鹵獲作戦について伝える。


「……なるほどね~。あの子、ミコノちゃんがインディアであんたと戦ったパイロットだったんだ。そして彼女が所属する会社が網を張って来ていると」


「あとでドーンデモンズ本部に戻ってこの件は伝える。いらない戦いを起こす必要はない」


「好きな子と戦うなんてできないもんね」


「だからそういうのじゃない。ただまあ……敬意を持てるクラスメイトだとは思う。……どの道として情であることは変わりないか」


「学校、復学して良かった?」


「お遊びばかりで身に入る経験はほぼない酷いスクールだよ。けど……野外学習は楽しかった」


「そっか」


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